かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

釜山の旅[その5] - 年に1度の小正月行事と神々しい舞踊、あの陸橋脇の酒場で食べるティッコギ

前回のエントリーの続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com


前回にも触れましたが、この日(2017年2月11日)は旧暦の「テボルム(대보름:小正月。旧暦1月15日。旧暦で1年最初の満月の日)にあたり、この日韓国ではこれにちなんだ民俗行事が全国津々浦々で開催されます。
これらの行事の中で特に人気が高いのが、松などの薪を積み上げた「タルチッ」(달집)の中に願い事や厄除けなどの紙などを入れ、これを盛大に燃やすことで新年を祈願する「タルチッテウギ」달집태우기:タルチッ焼き)です。
そしてその中でも特に大規模なもののひとつが、釜山・海雲台(ヘウンデ)区の海雲台海水浴場にて毎年小正月の当日にのみ開催される「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제)のタルチッテウギです。高さ5mにも及ぶ巨大なタルチッが火柱を上げる姿は相当な迫力があるとのこと。偶然にもそんな日にここ釜山に居合わせた以上、これを見逃さない手はありません。
夕暮れが迫る中、アンチャンマウル(ホレンイマウル)を出て海雲台へと向かいます。

マウルバスで再び「ポムネゴル」駅へ戻って地下鉄(都市鉄道) 1号線に乗車、「西面」(ソミョン)駅で海雲台方面へ向かう同2号線に乗り換えて、終点のひとつ手前「中洞」(チュンドン)駅で下車。
ここから砂浜までは遠いので、早歩きで向かいます。

 

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黄昏どきの街、遠くに見える海。こういう風景、なんだかたまらないですよね。

 

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途中にあった、Korail韓国鉄道公社)のかつての東海南部線(동해남부선:トンヘナムブソン)の線路跡。
釜山市内の「釜田」(プジョン)駅から蔚山(ウルサン)市の「太和江」(テファガン)駅方面へと向かう東海南部線(現:東海線)の新線切替に伴い廃止となった区間の線路跡を、そのまま観光地として保存したもの。いつかゆっくり歩いてみたいものです。

 

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そしてやっと海岸、事前に調べたタルチッのあるべき場所に到着。しかしタルチッテウギのものと思しき炎と黒煙は、はるか遠くに。どうやら調べた場所が間違っていたようです。
砂浜沿いの道をまたしても早歩き。

 

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ようやく到着したタルチッの場所は、実は先ほど下車した「中洞」駅のひとつ手前の「海雲台」駅が最寄りで、しかも以前に来たことのある水族館「シーライフ釜山アクアリウム」そばの海岸だということが分かりました。つまりほぼ1駅分歩いたわけです。
そんなわけでようやく、タルチッの近くまでたどりつきました。

 

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燃え盛る紅蓮の炎。1ケタ台の気温を忘れさせるほどの熱気が伝わってきます。当然ながら一定の距離以上は近づけません。風向きによっては火の粉が舞い落ちてくるというやや怖い状況下での観覧となりました。

 

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空を見上げると、小さな、しかしタルチッテウギの火の粉にしては大きすぎる光点がいくつも舞っています。これは火の粉でもUFOでもなく「風燈」(풍등:プンドゥン)と呼ばれるバルーンで、熱気球と同じ原理で浮かび上がっているものです。

 

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タルチッテウギの隣には、民俗行事らしく韓国の民謡が歌われる特設ステージが。その前では韓服姿の女性たちによる舞踊が繰り広げられています
それら民謡の中でも特に興味をひかれたのが「カンガンスルレ」(강강술래)。古くから韓国の南西海岸沿いの一帯において、主に中秋やこの日のような小正月など満月の夜に行なわれてきた歌と踊りのノリ(놀이:遊び、遊戯)であり、韓国の国家無形文化財第8号、そしてユネスコの人類無形文化遺産にも登載されています。
歌い手の女性による名調子の中、30人あまりもの韓服姿の女性たちが互いに手を取り大きな円を描きつつ踊る姿はまさに壮観。次第に速くなってゆくテンポに心揺さぶられます。ずっと眺めて、ずっと聴いていたい。

そうしている間にいよいよ辺りは闇に包まれ、ただタルチッテウギの炎だけが天を焦がします。
ステージでの歌と舞踊も名残惜しいですが、食事の予定もあるので、後ろ髪を引かれる思いで海雲台海水浴場を後にします。
今回は見ることがかないませんでしたが、この「海雲台タルマジ温泉祭り」では前述の「タルチッテウギ」のほか、お祭り隊が海雲台の街をパレードする「キルノリ」(길놀이)、そして海雲台沖で漁を終えた漁船がカモメの群れの中を五六島(오륙도:オリュット)沖を通り海雲台へ帰ってくる様子を再現した、釜山ならではというべき「五六帰帆(オリュッキボム)再現」(오륙귀범재현)などのイベントが開催されているとのことです。
次のテボルム(小正月)は2018年3月2日(金)、その次は2019年2月19日(火)。この日に釜山を訪問される方は、年にたった1日だけのこのお祭りに参加してみるのも楽しいでしょう。

「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제:釜山広域市 海雲台区 海雲台海水浴場一帯。リンク先は「タルチッテウギ」の大体の場所)

 

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海雲台の街中には、昨年(2016年)秋から続く「海雲台ラコ光祭り」(해운대라꼬빛축제)の一環であちこちにLEDの電飾が。

 

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これら「海雲台ラコ光祭り」の電飾の中でも特に大きなものがこちら。これ1本でクリスマスも正月もソルラル(旧正月)も祝える便利なオブジェです。入ることのできる内側からの眺めがすごい。

 

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海雲台市場」(해운대시장:ヘウンデシジャン) 。海産物を扱うお店のほか、ヘムルタン(해물탕:海鮮鍋)やコムジャンオグイ(곰장어구이, 꼼장어구이:ヌタウナギ焼き)など港町釜山らしい海鮮料理の店が軒を連ねます。その終端近くにあった「イルムナン機張(キジャン)サンコムジャンオ」(이름난 기장 산 곰장어)というお店では、イルムナン(「有名な」の意)の名に恥じないほどの行列が形成されていました。いつか訪れてみたいです。

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海雲台駅前から海水浴場へ向かって伸びる大通り沿いでひときわ目立つ巨大オムク(어묵:魚肉の練り物。主にオデン種として利用)のオブジェの建物は、1963年創業の老舗「古来思」(고래사:コレサ)海雲台店です。海雲台のランドマークと言うべき存在かも知れません。古来思の店舗の中でもこの店限定という、魚肉でできた細麺を鰹ダシで煮込んだ名物「オウドン」(어우동)は食べてみたい一品です。

 

海雲台」駅から地下鉄(都市鉄道) 2号線に乗車し、再び「西面」駅で乗り換え、今度は「凡一」(ポミル)駅で下車します。

 

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同駅7番出口を出て徒歩3~4分の距離にあるKorail京釜線跨線橋、通称「クルムタリ」(구름다리:雲の橋)。ここ釜山を舞台に描き大ヒットした2001年の映画『친구』(邦題『友へ チング』)の撮影地のひとつとなった場所で、あるポイントから跨線橋の階段を見ると、映画の中心人物4名を含む名シーンを描いた絵が浮かび上がってきます。

 

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そしてこの日の夕食は、このクルムタリの凡一駅側のたもとにあるティッコギ(뒷고기)のお店、その名もずばり「クルムタリ」へ。
このティッコギ、本来は釜山市と隣接する慶尚南道キョンサンナムド)金海(キメ)市発祥の料理ですが、ここ釜山にも伝播し、いまでは釜山の名物料理のひとつに数えられるまでとなっています。
一般に「ティッコギ」とは特定の部位ではない豚の切り落とし肉のことであり、枝肉から精肉を切り出す際に余った、骨の周りなどの端肉の総称を指します。直訳すると「ティッ」(뒷:後ろ、裏)「コギ」(고기:肉)という意味で、豚肉の部位の中でもあまりにもおいしいことから解体業者が流通させず自分たち(裏方)だけで食べたため、あるいはサムギョプサルなどのような名のある部位でこそないもののあまりにおいしいので貧しい人のためにかき集めて売ったため、などその由来には諸説あるようです。

 

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おいしいだけでなく、以上の理由からリーズナブルなのもティッコギの特長。こちらのお店では1人分が4,000ウォン(約400円)。そんなわけで5人分を注文。お店の主人であるアジメ(アジュンマの釜山方言)に驚かれますが、これはいつものことなので、食べられますよとアピール。
ところで写真は同店のメニュー表なのですが、上から2番目の「김치찌개」(キムチチゲ)のやや強引?な修正に注目。韓国は他の国と同様に飲食物の原材料が値上がりの一途にあるため、料理の価格の値上げに際し写真のようにとりあえず油性マジックなどで修正したメニュー表をあちこちで見かけます。こういうの、好きなんです。揶揄的な意味でなく。日本だとたちまち心ない人からクレームが付けられそうなこうした表現が許容されているところに、社会の成熟性を感じずにはいられません。

 

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お待ちかねのティッコギ登場。過去に食べたお店の肉がいかにも切り落としらしいコロコロした形状であったのに対し、こちらは薄くスライスされています。

 

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驚いたことに、なんとアジメが1枚1枚、かいがいしくお肉を焼いてくださります。
そしていよいよ実食。うんまい。歯ごたえはあるけれど硬いというほどではなく、ほどよい感じ。サンチュなどでくるんで食べていましたが、想像以上に量があったので途中からは肉オンリーに切り替えて、ようやく完食。おなかいっぱい。
あと、写真にはないですが、ここのテンジャンチゲは超うんまかったです。いままで食べてきた中でベストと言ってもよいほど。
こちらの「クルムタリ」、営業時間は13:00~23:00。たまに通過する列車の音をBGMに、韓国の酒場の雰囲気に浸りつつ、ティッコギも味わえるお店です。

クルムタリ(구름다리:釜山広域市 釜山鎮区 凡一路125番ギル 29-61(凡川洞62-149))

 

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お店を出た後、クルムタリを渡って、界隈を少し歩いてみました。
渡った先にある道路橋の歩道には、映画『친구』のメインキャストであるチャン・ドンゴンさんとユ・オソンさんの手形&足形の展示物も置かれています。
どの写真にも看板が写っている「サンソンオルムマッコリ」(산성얼음막걸리)は、酒場らしい店構えにおいしい料理、しかも破格の安さということで、鄭銀淑さんの著書『韓国ほろよい横丁 こだわりグルメ旅』などでも紹介されているお店です。次回の釜山行きの際には必ずや訪問したいと思います。

そして沙上のホテルへ戻り、この日の旅は終了。最終日となる明日のために英気を養うのでした。


【おまけ】
ホテルへ帰った後、歩いて15分ちょっとの距離にあるマート(日本でいう大型スーパー)「ホームプラス西釜山店」へ。こちらは24時まで営業しており、隣接する「emart沙上店」(23時閉店)よりも使い勝手がよいので。
目的は、日本へ持って帰るべき「金井山城マッコリ」(금정산성막걸리)購入のため。ここ釜山の地マッコリであり、民俗酒第1号としても知られるこちらのマッコリ、濃厚な味で大好きなのです。

 

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ただでさえ横倒しにすると未開封でも漏れ出してしまう生マッコリ。航空機内での破裂を恐れて持ち帰りを躊躇されている方も少なくないと思いますが、 私はいつも備え付けの梱包用テープ(韓国のマートにはほぼ必ずあります)で写真のようにボトルのキャップをぐるぐる巻きにし、さらにレジ袋などで最低2重以上にくるみ密閉したうえで持ち帰るようにしています。これでもわずかに漏れ出しはしますが、いまのところボトルが破裂したことも、バッグの中の荷物を濡らしたこともありません。

ホームプラスの営業時間や店休日は店によって異なりますが、こちらの西釜山店は9:00~24:00。店休日は毎月第2・第4日曜日ですが、この日はホームプラスのみならずemartやロッテマートなど釜山市内のほぼすべてのマートが一斉休業しますのでご注意のほど。
ホームプラス西釜山店(홈플러스 서부산점:釜山広域市 沙上区 広場路 7(掛法洞529-1))

釜山の旅[その4] - 避難民の暮らしが残るアンチャンマウル(ホレンイマウル)でうんまいオリプルコギを

前回のエントリーの続きです。

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「臨時首都記念館」を出て、再び地下鉄(都市鉄道)1号線「土城」(トソン)駅へ。次に向かったのは同じ1号線の「草梁」(チョリャン)駅の地上、在釜山日本総領事館の裏にある「平和の少女像」。ただしこちらは以前のエントリーで詳しく紹介したので、今回は省略することといたします。

 

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草梁駅からまた1号線に乗り、今度は「ポムネゴル」駅で下車。3番出口を出て横断歩道を渡ったすぐの場所にある「ポムネゴル駅」バス停(写真)から、<동구(東区)1>マウルバスに乗車します。

 

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この日の朝「甘川(カムチョン)文化マウル」へ行った際に乗ったものもそうでしたが、ここ釜山の隅々を毛細血管のように巡るマウルバスは、主に写真のようなマイクロバスが使用されています。車体は写真のようなグリーン、または白と水色のツートンカラー。こんなちっちゃなバスでもちゃんとT-moneyに対応しています。

 

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そんなマウルバスに揺られてポムネゴル駅から約15分程度で到着する終点「アンチャンマウル」、またはひとつ手前の「東区総合社会福祉館」バス停の周辺は一般に「アンチャンマウル」(안창마을)と呼ばれる地域であり、今回の目的地です。
東区凡一(ポミル)洞に属するこの一帯もまた、朝鮮戦争の避難民が山の斜面を切り開いて定着した、トタンやスレートの屋根の小さな住宅が無造作に密集するタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)であり、韓国の人々にとっては郷愁を誘う風景となっています。
近年ではタルトンネ再生の成功事例である同じ釜山の「甘川文化マウル」を意識してか、「ホレンイマウル」(호랭이마을)の別名による観光地化の取り組みが始まっています。「ホレンイ」(호랭이)とは「ホランイ」(호랑이:虎)の方言。ただしこちらは甘川ほど観光地化が進行しておらず、一部の住宅に壁画などが描かれた程度にとどまっており、タルトンネらしい家並みがそっくりそのまま残されています。
前日に訪問した「コチャンチッ」と同じく、こちらも鄭銀淑さんの著書『釜山の人情食堂』で初めて知った場所であり、昨年(2016年)1月に続き今回が2度目の訪問となります。

この日は早朝に乗車した市内バスの車内でコンビニのおにぎりを食べて以来、何も食べていませんでした。時刻はすでに14時過ぎ。マウル巡りに先立ちまずは腹ごしらえから。
アンチャンマウルには、オリプルコギ(오리불고기:鴨の味付け焼肉)の店が集中しています。鴨肉は、韓国では滋養強壮の効果があるとされ日本以上にポピュラーな食材であり、この周辺の登山客を対象としたオリプルコギの店がいつのまにか定着したとのこと。

 

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その中で今回は、こちらもまた『釜山の人情食堂』で紹介されていた「チョンミチッ」に入店。昼過ぎであるからか先客は誰もいません。
ここアンチャンマウルのオリプルコギは、韓国では一般的な何人分という単位ではなく、ハンマリ (한마리:1羽)単位で販売されます。しかも釜山の中心街で食べるよりもかなり安いそうで、こちらのお店では「セン(生)オリプルコギ」(생오리불고기)のハンマリが2万ウォン(約2,000円)とお手頃。さっそく注文します。

 

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そしてやって来たセンオリプルコギ。焼けたお肉とヤンニョムの香ばしい匂いが漂います。じゅるり。

 

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十分に焼けたところで、いよいよ実食。付け合わせのサンチュやケンニッ(エゴマの葉)などに包んで食べます。超うんまい。大好きな味。クセがないのにコクのある鴨肉とヤンニョムが渾然一体となり、えも言われぬ味を出しています。日本の鴨肉にありがちな硬さもありません。あっという間に完食してしまいました。
チョンミチッの営業時間は10:00~22:00。<동구1>マウルバスの終点「アンチャンマウル」バス停から歩いて1分程度の場所にあります。

チョンミチッ(정미집:釜山広域市 東区 アンチャン路77番ガギル 5 (凡一洞 山 65-141))

 

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次に向かったのは「東区総合社会福祉館」バス停そばの建物、まさに東区総合社会福祉館。訪問の前月(2017年1月)、この建物内にアンチャンマウル唯一の沐浴湯(목욕탕:モギョッタン。銭湯のこと)が2年ぶりに復活したと聞き、腹ごなしを兼ねてひとっ風呂浴びることに。

 

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一般に韓国の沐浴湯には鍵の付いたロッカーがあり、タオルも無料で貸してもらえるので、旅先でも気軽に入ることができます。こちらの「青春沐浴湯」(チョンチュンモギョッタン)では、過去に入った沐浴湯とは異なり脱衣場にタオルはありませんが、受付の方にお願いすれば貸してもらえます。浴場には石鹸とボディタオル(体を洗うやつ)も備えられていますが、シャンプーとリンスは持ち込む必要があります(受付でも販売)。
設備はお湯の風呂のほかサウナと水風呂、そして韓国独特の垢すりタオルが回転するマシーン(背中用)、どれも新品です。最新の施設らしいLEDの照明の下で、銭湯の大きな湯船に浸かるという珍しい体験ができました。
青春沐浴湯の営業時間は06:00~19:00。月・木曜日休業。大人(8歳以上)は入浴料4,000ウォン(約400円) 。

東区総合社会福祉館「青春沐浴湯」(동구종합사회복지관<청춘목욕탕>:釜山広域市 東区 アンチャン路57番ギル 5 (凡一洞 1542-11)) [HP]

 

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「東区総合社会福祉館」バス停から坂道を少し登ると、ホレンイの名を持つ町らしく建物前面が虎の模様で彩られ、正面には虎の像が颯爽と立つ観光案内所「ホレンイマウル会館」が右手に現れます。

 

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ホレンイマウル会館では、 写真のガイドマップを無料で入手できます。残念ながら日本語版はありませんが、明快なイラストで構成されていますので韓国語が読めない方でも役に立つでしょう。前回訪問時と同様、今回もこのマップに描かれた順路に沿って、マウルを巡ることとします(以下、本エントリーではこのマップを「上図」と呼びます)

ホレンイマウル会館(호랭이마을회관:釜山広域市 東区 アンチャン路 66 (凡一洞 1542))

 

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再び東区総合社会福祉館へ。ここの敷地内に順路のスタート地点となる階段(上図②)があるためです。

 

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順路の前半は、ホレンイマウルの裏山を巡る登山道。初めて来たときは、道を間違えたのではないかと思ったほどです。案内板や、マウルの名にちなんだ虎柄のベンチなどが設置されています。初めてでも迷わないようとの配慮からか、公園(上図④)など目印となる場所をいくつか通ります。

 

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途中にある湧き水の井戸(上図③)。韓国では一般に「薬水」(약수:ヤクス)と呼ばれ、飲み水のほかご飯を炊く水などにも用いられます。前回訪問時は直接汲むことのできた井戸の扉は施錠され、新設された蛇口から汲むように変わっていましたが、凍結しているのかひねっても薬水は出ませんでした。

 

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上図③と⑥の間あたりの山道。これ、釜山の東区です。あの近代的なKTX釜山駅、オフィスビルの立ち並ぶポムネゴルや草梁などと同じ区内ですよ?

 

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しばらく歩くと、集落へ下る道(上図⑥)が現れます。
ここからは順路を気にせず、集落のあちこちを巡ることにします。

 

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アンチャンマウルと隣接する東義(トンウィ)大学校伽倻(カヤ)キャンパス内の寄宿舎であり、この周辺で唯一の高層ビル「暁民(ヒョミン)生活館」(上図⑧)のそばから撮ったマウルの全景。高台になっており、絶好の撮影スポットです。
青い屋根が連なるマウルの風景を見ていると、ここで暮らしたことがあるわけでもないのに、胸がきゅっとします。釜山でいちばん好きな場所かもしれません。

 

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ところどころの壁面に肖像写真や集合写真が貼られています。肖像写真は、かつてその家に暮らしていた方でしょうか。

 

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「ホレンイ」を名乗る町らしく、郵便受けにも虎の装飾板が。

 

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マウルの中にある「ソングァン教会」(上図⑦)の門と塔。

 

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マウルの中にあるお寺。韓国では、こうした提灯が飾られているお寺をよく見かけます。

 

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サムルノリを演奏しつつ、マウル内を練り歩く一団と遭遇。この日(2月11日)はデボルム(대보름:小正月)だったので、それを祝うためでしょうか。

 

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先ほど紹介したホレンイマウル会館(上図⑩)へと下る坂道。これでマウルを一周したことになります。正面に見えるのはマウルバスの車庫。そろそろ日が傾いてきました。

アンチャンマウル(ホレンイマウル)へのアクセスは、地下鉄(都市鉄道)1号線「ポムネゴル」駅3番出口のそばにある「ポムネゴル駅」バス停から<동구(東区)1>マウルバスが約7分間隔で出ているのでおすすめです。約15分程度で到着する終点「アンチャンマウル」、またはひとつ手前の「東区総合社会福祉館」バス停にて下車。同1号線 「凡一」(ポミル) 駅からだと<동구1-1>マウルバス(約15分間隔)が出ており、こちらはおよそ17分程度で到着するようです。

アンチャンマウル(ホレンイマウル)(안창마을 (호랭이마을):釜山広域市 東区 凡一洞 一帯)

 

 それでは、次回のエントリーへ続きます。

釜山の旅[その3] - 「甘川文化マウル」と、臨時首都・釜山の1023日間を記憶する博物館

前々回のエントリーの続きです。

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明けて、2月11日(土)の朝。
ホテルから近いKorail「沙上」(ササン)駅前の「沙上駅」バス停より8番バスに乗車に。ここ沙上と、地下鉄(都市鉄道)1号線「チャガルチ」駅からも近い「西区庁」バス停(さらには同1号線「南浦」(ナムポ)駅や影島(ヨンド)など)とを結ぶ路線ということで、今回の旅ではたいへん重宝しました。

 

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こちらは今回の旅の写真ではありませんが、釜山の市内バスです。まるで日本の路線バスのようですね。ここ釜山や光州の市内バスは、正面のLED表示に系統番号や韓英日中4言語での行先表示がローテーション表示されており、観光立国を志向する韓国でも最先端をゆくものです。私を含め外国人旅行者にとってはほんと大助かりです。日本でも追随することを切に願うばかりですが抗議デモでも起こされそうですね。観光立国の道はるか遠し。

話がそれましたが、30分程度で「西区庁」バス停に到着。今度は同じ「西区庁」という名でもわずかに離れたバス停から、<서구(西区)2>マウルバスに乗り換えます。
釜山のマウルバスは、主に十数人乗り前後のマイクロバスで区ごとに運行されておリ、各区の隅々に点在するマウル(마을:村、集落などの意)へと路線網を広げています。都市鉄道を大動脈、市内バスを動脈にたとえるならば、マウルバスは釜山の毛細血管というべき存在でしょうか。

細く曲がりくねった坂道を上り、終点「甘川初等学校.甘川文化マウル」にて下車。その名前からもお分かりの通り このバス停こそが「釜山のマチュピチュ」などの異名で知られる「甘川 (カムチョン)文化マウル」の玄関口です。

 

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下車してすぐの展望台から眺めた「甘川文化マウル」。視界のすべてが色とりどりの住宅群という他に類を見ない景色にただただ圧倒されます。

 

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この「甘川文化マウル」、元々は1910年代に「太極道」(태극도:テグット)という宗教団体が現在の甘川2洞 にあるパンダル峠(반달고개)の斜面に築いた信者向けの住宅群を発端とするものであり、現在へと続く 「すべての住宅の景色が遮られない」階段式配置はこの時点ですでに確立されていたようです。その後1950年に朝鮮戦争が勃発、最後まで朝鮮人民軍に占領されなかったため全国から避難民が釜山へ押し寄せる中、ここ甘川もそうした避難民たちの受け皿となりました。

休戦後の貧しく厳しい生活をそのままに残したタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)のひとつであった甘川2洞の住宅群。その再生の一環として各戸をさまざまな色で塗り分け壁画を描き、それらの順回路を整備するなどの観光地化の試みが功を奏した結果、いまでは年間140万人もの観光客が押し寄せる釜山の一大観光地にまで成長したわけです。

 

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バス停からほど近い案内センターでは、日本語版を含むマウルのガイドマップを2,000ウォン(約200円)で販売しています。有料のガイドマップは韓国でも珍しいですが、その分出来がしっかりしていますし(閉じたり開いたりしても破れない!)、マウルの主要スポットを巡るスタンプラリーも楽しめるようになっています。こうした試みこそが今日の成功の秘訣かもしれません。公式サイトによると案内センターには荷物も預けられるようですね。

 

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この日は寒い朝でした。屋根の上でひなたぼっこする猫さん、なごみます。

 

f:id:gashin_shoutan:20170418235305j:plain順回路のあちこちに展望台が設けられ、色とりどりの住宅やはるか遠くの甘川港、松島(ソンド)と影島とをつなぐ南港大橋までも望むことができます。

 

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いくつかの空き家は、絵画やオブジェなどが展示されたギャラリーになっています。足を踏み入れると、その狭さに驚かされるとともに、避難民たちの生活の辛苦がしのばれます。

 

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大多数の住宅には住民の方が暮らしています。観覧の際にはどうかお静かに。

 

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住宅の間を縫うように張り巡らされた歩道は、そのほぼすべてが別の道と接続していることから「ミロ(迷路)マウル」の異名を持っています。

 

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順回路の終わり近くにある「甘内(カムネ)オウルト」(감내어울터)。かつての沐浴湯(銭湯)を再利用した建物で、入口ににあるかつての番台には女性の人形が。ギャラリーに改装された浴室の壁にはシャワーが残されています。そして中央には当時の湯船もそのままに、気持ちよさそうに湯に浸かる男性の人形まで。まあお湯はないけどな!

甘川文化マウルへのアクセスは、「西区庁」バス停からだと<사하구(沙下区)1-1><서구(西区)2-2>の各路線もありますが、先に紹介した<사하구2>が最も高頻度(平日・週末とも約11分間隔)であるうえ、下車すべき「甘川初等学校.甘川文化マウル」バス停が終点なので乗り過ごす心配もなく、おすすめです。地下鉄(都市鉄道)1号線「土城」(トソン)駅を経由しますので、地下鉄からの乗り換えならばこちらがより便利です。
甘川文化マウル(감천문화마을:釜山広域市沙下区甘川洞ー帯) [HP]

 

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甘川文化マウルを後にし「土城駅」バス停で下車。大通り沿いに歩いて北へ向かうと、路面より高い敷地に突如、この路面電車が現れます。
この路面電車はかつて市内を走っていた釜山市電の車両で、米シンシナティにて1927年に製造されたもの。2012年に「釜山電車」の名で国指定登録文化財第494号にも指定されています。

 

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電車の内部。驚くべきことに木製の固定クロスシートです。しかも左右逆向き。

 

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電車の外観。当時の電停が漢字で表記されています。結構長い区間を走っていたことが分かります。

 

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観覧時間が「13:00~14:00」とあります。電車は東亜大学校の敷地内にあり、この時間帯でなくとも観覧は可能ですが、この時間帯であれば内部を開放するという意味かもしれません。

釜山電車(부산전차:釜山広域市 西区 九徳路 225 (富民洞2街 1)。指定登録文化財第494号)

 

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路面電車の手前を左に曲がり、突き当たりを右へ少し進むと「臨時首都記念館」の門が現れます。
この「臨時首都記念館」は、1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争(6.25)直後の首都ソウル陥落後、中央政府がここ釜山へ移転したことによリ、前後2回、計1023日にわたり臨時首都として機能した歴史を記憶するための施設であり、2つの建物により構成されています。

 

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玄関を入ってすぐにあるのは「大統領官邸」。ここ釜山が臨時首都であった当時の大統領、李承晩(이승만:イ・スンマン、1875-1965)の官邸として使用された建物です。日帝強占期の1926年築、独特の和洋折衷様式となっています。元々は慶尚南道キョンサンナムド)知事官舎として使用されていた建物で、首都機能がソウルに戻ってからは再び知事官舎に戻り、慶尚南道庁が昌原(チャンウォン)へ移転した1983年まで使用されました。翌84年、臨時首都記念館として開館。

 

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大統領官邸には、靴を脱いで入館します。建物の玄関を入ってすぐ受付があり、年配の男性が日本語で丁寧な案内をしてくださいました。

 

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玄関を入ってすぐ右側には、広い応接室が。暖炉も設置されています。

 

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応接室と隣接し、受付のちょうど裏側に位置する書斎。李承晩大統領の蝋人形が鎮座しています。

 

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食堂と厨房。

 

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竣工当時からある有田焼の便器。床のタイルもまた1926年の竣工当時からのものだそうです。施錠されていたため写真はありませんが、2階には李承晩大統領も好んで使用したという洋便器があるとのこと。

 

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元々は官邸の警備室だった部屋では、朝鮮戦争の際に19歳で志願入隊し、諜報活動に携わったイ・ジョンスク(이정숙)さんの証言を聞くことができます(韓国語のみ)。

 

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浴室。床のタイルは近年張り替えられたようですが、湯船を含む浴室の作り自体は当時のままだとのこと。扉は外に通じており、受付の方の話だと緊急時に入浴者が外部へ避難するために設けられたものだそうです。

 

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2階には、朝鮮戦争当時に使用されていたいくつかの物品が展示されています。
写真はそれらのうち、李承晩大統領の防寒着と、妻のフランチェスカ氏のコート。

 

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裏側から見た大統領官邸。こちらの建物、大邸宅の部類に入る規模とはいえそこまで巨大な物件ではないにもかかわらず、奇妙なことに階段が2つもありました。また、先に紹介したトイレも出入口が2つ。受付の方によると、これらは緊急時に主人が脱出しやすいよう二重系になっているとのこと。日本でいう忍者屋敷のようなものだとユーモアを交えつつ話してくださいました。

 

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大統領官邸の裏には、「臨時首都記念館」を構成するもうひとつの建物であり、1987年築の釜山高等検察庁検事長官舎を再利用した「展示館」があります。2002年開館。こちらは土足のまま入れます。

 

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ソウル陥落が目前に迫り、避難民が殺到する釜山行の列車を再現した展示物。台車は実物のようです。

 

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避難民が生活した小屋を再現したもの。身ひとつで命からがら郷里を離れた避難民にとって、このような粗末な小屋であっても当座の生活拠点となり、命をつなぐ大切なものでした。

 

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釜山名物、ミルミョン(밀면)の店を再現したもの。38度線以北から釜山へやって来た避難民たちは生活のため郷里の冷麺を作って売り出しますが、ジャガイモでんぷん由来の硬い面に不慣れな釜山の人たちの好みに合わせるため、小麦粉を加えた柔らかい麺に代えて売り出したのがミルミョンの始まりとされています。こうした経緯から、ミルミョンはここ釜山での避難民の辛苦を象徴する料理のひとつとなっているようです。

 

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こちらがミルミョンの実物。一昨年(2015年)11月、同じ釜山の南区牛岩洞にある「内湖冷麺」(내호냉면:ネホネンミョン)にて撮影したもの。鄭銀淑さんの著書『釜山の人情食堂』によると、こちらのお店の先々代もまた朝鮮戦争の際に咸鏡南道(ハムギョンナムド:現在は朝鮮民主主義人民共和国)の興南(フンナム)から避難し、釜山に定着された方とのことです。ミルミョン、うんまかったです。

 

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「求職」の札を首から下げた男性の人形。避難民でしょうか。憔悴しきった表情を含め、強い印象を与える展示物です。

 

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館内に再現された、朝鮮戦争当時の茶房(다방 :喫茶店)のテーブルに埋め込まれている「『そのとき、その歌』情報検索KIOSK」。スクリーンにタッチして、当時の流行歌を聴くことができます。

ここ「臨時首都記念館」は、地下鉄1号線「土城」駅2番出口より徒歩約6分。前述の通り「甘川文化マウル」行きのバスも同駅を通りますので、あわせて訪問するのもよいでしょう(「土城」バス停からだと徒歩約10分) 。開館時間は9:00~18:00、月曜と元日は休館。入場無料です。
臨時首都記念館(임시수도기념관:釜山広域市 西区 臨時首都記念路 45(富民洞3街 22)) [HP]

それでは、次回のエントリーへ続きます。

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