かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

釜山の旅[その7] - 避難民の辛苦を物語る「40階段」と「文化館」、そしてチュックミ焼き&ユブジョンゴル

前回のエントリーの続きです。

 

gashin-shoutan.hatenablog.com

「ヒンヨウル文化マウル」バス停から乗車した82番バスで、地下鉄(都市鉄道)1号線の「凡一」(ポミル)駅に到着。そこから徒歩、この日(2月12日)の前日の夜に訪問したばかりのKorail京釜線跨線橋、通称「クルムタリ」(구름다리:雲の橋)方面へ。

 

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それというのも、この日の昼食目当てだった釜山名物テジクッパの人気店「ハルメクッパ」がクルムタリを越えた向こう側にあるためでしたが、店先には「定休日」との張り紙が。残念ながらこの日(日曜日)は定休日だそうで。下調べが足りませんでした。
一刻も時間が惜しいので、リベンジを誓いつつも踵を返します。

 

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続いて、隣の「中央」(チュンアン)駅へ。
同駅の13番出口を出て最初の角を左に曲がると、突き当たりに奇妙ならせん階段が。
その形状からか「ソラ(소라:サザエ)階段」と名付けられたこちらの階段は、現在地から10mほど高いところを走る道路、そして次の目的地への近道でもあります。

 

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上にたどり着くまでおよそ4回転半。目が回りそうです。酔った人向けでしょうか、途中からは普通の階段も併設されています。

 

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そして「ソラ階段」を登りきった場所にあるこちらの建物の5階に入っているのが、次の目的地「40階段文化館」です。
実はこちら、昨年(2016年)1月の釜山訪問の際にも立ち寄ったのですが、そのときは館内改装に伴う半年もの長期休館中でした。1年あまりを経た今回の再訪で、ようやく入館がかなったわけです。

 

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この「40階段文化館」は、朝鮮時代末期の釜山港開港から日帝強占期、光復(日本の敗戦による解放)と大韓民国の建国、そして朝鮮戦争を経て現代へと至るまでの釜山の歴史、中でも特に朝鮮戦争期に全国から殺到した避難民たちの生活に焦点を当てた展示館であり、すぐ近くにある選難民の辛苦を象徴する場所「40階段」にちなんで名付けられたものです。
こちらもまた、受付の女性が日本語を少し話せる方で、いくつかの展示品の案内をしてくださいました。

 

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朝鮮戦争期の青空学校(小学校)の写真と、その様子を精巧に再現したジオラマ

 

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「求職」の文字を首にぶら下げている、避難民と思しき男性。この前日(2月11日)に「臨時首都記念館」で見た再現人形(こちらのエントリーにて紹介)のモデルと思われます。

 

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朝鮮戦争期の代表的な食事のサンプル。奥の列の一番左側は「クルクリチュッ」(꿀꿀이죽:豚(の餌)の粥の意)と呼ばれる、米軍の残飯を煮込んだ料理で、避難民たちの過酷な貧困状況を端的に示したものであるといえます。

 

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これら以外にも数々の展示品がありますが、できれば実際に足を運んでいただきたい場所ですので、詳しい紹介はこの辺にとどめます。
「40階段文化館」へのアクセスは、地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅13番出口より徒歩約5分。若干遠回りとなりますが、同駅11番出口を出て「40階段文化観光テーマ通り」および「40階段」(いずれも後述)経由でも行くことができます。
開館時間は平日(火~金)9:00~18:00、土日10:00~17:00。毎週月曜日、公休日は休館。

40階段文化館(40계단문화관:釜山広域市 中区 東光ギル 49 (東光洞5街 44-3))

 

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40階段文化館の建物を出て右(南)方向へ1分ほど歩くと、下の道へ降りる幅の広い階段が左手に現れます。
この階段こそが、まさに「40階段」です。

 

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こちらの階段は、1950年6月25日の勃発から休戦まで3年あまり続いた朝鮮戦争当時、全国各地から戦火を逃れここ釜山へやってきた無数の避難民たちが上り下りした階段であり、前述したようにここ釜山における避難民たちの辛苦を象徴する代表的なスポットとなっています。

 

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こちらは先ほどの「40階段文化館」に展示されていた、朝鮮戦争当時の「40階段」の写真と、その一部をミニチュアで再現したもの。現在の40階段とは若干異なる位置にあったようです。

 

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階段の途中には、アコーディオンを弾く男性の像が。
ここに来ていつも驚かされるのは、踊り場でもない階段の途中に面して理髪店などの店舗の入口があること。日本ではまず見たことがありません。

 

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40階段から1号線「中央」駅方面へと向かう街路には、「40階段文化観光テーマ通り」という名前がつけられています。
こちらの街路は、朝鮮戦争期の避難民たちの哀歓と郷愁が漂う「40階段」とその周辺を1950~60年代当時の雰囲気に再現し、思い出を回想できるようにすることを目的として、2004年に整備されたものです。
街路のところどころに、朝鮮戦争当時から休戦後の人々の暮らしを象徴する像が建てられています。

 

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40階段を降りたところの前(中央駅側)にある、ポン菓子作りの男性と出来上がりを待ちわびる子どもたちの像。

 

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幼子に乳を与える母らしき女性の像。

 

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水を運ぶ少女。重そうです。主に避難民が暮らしたタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)では水道が整備されておらず、ごく普通の光景でした。

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仕事の疲れか、箱のようなものに座り、背負子にもたれかかる男性たち。

この前々日(2月10日)に訪問した草梁(チョリャン)駅そばの「平和の少女像」(こちらのエントリーにて紹介)をはじめ、こうした等身大のリアルな像を用いて過去の悲劇や苦難を記憶する取り組みは、韓国が数十歩進んでいるように感じます。学ぶべきものは無数にあります。

 

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「40階段文化観光テーマ通り」の起点であることを示す造形物。ここから徒歩1分もかからない場所に、地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅11番出口があります。
40階段文化観光テーマ通り)(40계단문화관광테마거리:釜山広域市 中区 40階段ギル 一帯)

 

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さすがにおなかがすいてきたので、そろそろ腹ごしらえの時間です.
今回は「40階段文化観光テーマ通り」から徒歩6分程度の距離にある「トゥンボチッ」へ。
こちらはチュックミ(주꾸미:イイダコ)料理がメインのお店で、今回の旅の直前に投稿されたある方のブログを見て、訪問の候補に入れていたものです。

 

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こちらの店先では、網に挟み込んだチュックミを炭火で丁寧に焼いています。あたりには香ばしい匂いが充満。よだれがほとばしり出ます。

 

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入店。注文したのはもちろん、先ほど店先で焼かれていた「チュックミグイ」(쭈꾸미구이:チュックミ焼き)、12,000ウォン(約1,200円)。

 

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そして出てきたチュックミグイ。チュックミそれ自体のうまみに炭火特有の香ばしさ、そしてパンチのある辛さの特製ヤンニョムが渾然一体となっています。うんまい。ビールにめちゃくちゃ合います。辛さで額に汗が流れますが止められません。次の食事を考慮して1人分だけ頼んだものの、あまりのおいしさにもう1人分を追加。
2枚目の写真でチュックミグイのお皿の左に写っているクリームシチューみたいなものは、チュックミグイを頼むとついてくるコンビジ(콩비지:おからスープ)で、これがまたまたうんまいのです。初めて食べましたがこんなにおいしいとは正直思っていませんでした。

 

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付け合わせの小さな白菜の葉にチュックミさんをちょこんと乗っけて。この食べ方もうんまいです。
こちらのお店にはその人気でチュックミグイと肩を並べるという、自家製トゥブ(두부:豆腐)がメインの「トゥブ定食」(두부정식)も。こちらはなんと3,000ウォン(約300円)という激安メニュー。いつか食べてみたいものです。

「トゥンボチッ」の営業時間は11:00~22:30、毎月第4日曜日休業。地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅3番出口からだと徒歩約3分。大通りの「中央大路」(중앙대로:チュンアンデロ)に沿って「南浦」(ナムポ)駅方面へ進み、2番目の角を右折、続いてすぐの角を左に曲がって50mくらい進むと右手に現れます。

トゥンボチッ(뚱보집:釜山広域市 中区 中央大路41番ギル 3 (中央洞1街 21-3))

 

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飛行機の時間が迫りますが、どうしても行きたい場所がまだあるので、歩みを進めます。
中区最大の繁華街である「光復洞ファッション通り」(광복동 패션거리)を、続いて一昨日にも訪れた「国際市場」(국제시장)を突っ切ります。途中には映画『国際市場で逢いましょう』の主人公、ドクスの店のモデルとなった「コップニネ」(꽃분이네:「コップンの店」の意)も。開いている姿は初めて見ました。

 

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そしてやって来たのは、こちらも一昨日に訪問した「富平カントン市場」(부평깡통시장)。ここでは今回、2つの目的が。
まずひとつは、市場内のお店「ハルメユブジョンゴル」にて、この日2度目となる昼食のため。

 

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こちらの看板メニューの「ユブジョンゴル」は、タンミョン(당면:韓国春雨)を包んだユブ(유부:油揚げ)を、西日本風のおでんスープで煮込んだもの。上に乗った釜山名物のオムク(어묵:魚肉の練り物)を食べ進めるとユブが現れます。これまたうんまかったです。久々に韓国で「懐かしい」味に出会いました。価格も5,000ウォン(約500円)とお手ごろ。
こちらのお店「ハルメユブジョンゴル」の営業時間は10:00~20:00、年中無休です。
ハルメユブジョンゴル(할매유부전골:釜山広域市 中区 富平3ギル 29 (富平洞1街 15-20))

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そしてもうひとつは、市場のうち東西方向のアーケード通りの両サイドに並ぶ、釜山名物のオムク専門店でのお土産購入のため。

 

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互いにしのぎを削る20軒あまりものオムク店の中から、今回は「桓公(ファンゴン)オムク」を選択。こちらのお店を紹介した某サイトの「調味料を入れずにオムクを煮込んでも真っ白なスープが出るほど濃い味」という一文に惹かれたためです。

 

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さまざまな風味、形のオムクが20個以上も入って、1袋10,000ウォン(約1,000円)と超お買い得。今回の釜山土産となりました。

 

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こちらの写真は帰国後、日本のおでんスープを投入し、自宅で実際に煮込んでみたものです。ただでさえ量が多いうえ、オムクは茹でると膨張することを忘れていたので見た目えらいことになっていますが、これでもまだ全部ではありません。
評判通り、旨みの中にコクの感じられる味で、うんまかったです。味もそれぞれ少しずつ異なるので食べ飽きることもありませんでした。
桓公(ファンゴン)オムク(환공어묵:釜山広域市 中区 中区路43番ギル 25 (富平洞2街 14-1) 富平カントン市場3B-20号)

 

オムクを購入したところで、タイムアップ。
時間がないので富平カントン市場からはタクシーで沙上(ササン)へ移動、荷物を回収して軽電鉄で金海国際空港へ。

 

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金海国際空港の楽しみといえば、何といっても手荷物検査場の先にあるソルビンでしょう。今回食べたのは写真の「フギムジャ(黒ゴマ)ソルビン」。摺った黒ゴマの風味が鼻腔をくすぐります。半円形に盛られたあんこを除いては甘さ控えめで、別添の練乳を適宜継ぎ足して食べます。
そして、一昨日に釜山へ来たときと同じエアプサンで帰国の途に着くのでした。

 

2017年2月の釜山の旅は、今回で終了となります。お読みいただきありがとうございました。
次回からは、2017年4月の仁川・ソウルの旅を紹介いたします。

釜山の旅[その6] - 海沿いに貼り付いた風光明媚な「白い早瀬の村」ヒンヨウル文化マウル

前回のエントリーの続きです。

明けて、最終日となる2月12日(日)の朝。この日もいい天気です。
チェックアウトを済ませた後、まずは荷物を預けるためにコインロッカーへ。ホテルから近い地下鉄(都市鉄道) 2号線「沙上」(ササン)駅にもコインロッカーはありますが、台数が限られているうえ、私のキャリーバッグが入る大サイズはないためスルー。

 

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向かったのはこちらのブログで知った、ホテルから徒歩5分程度の釜山西部バスターミナル(부산서부버스터미널)1階のコインロッカー。こちらの方が台数が多く、しかも安いのです。小サイズだとなんと1日1,000ウォン(約100円)! 私のキャリーバッグが入る大サイズでも1日3,000ウォン(約300円)という、 日本は言うまでもなく韓国でもほとんど見ないリーズナブルな価格設定。
宿泊が沙上のホテルではない方でも、大抵の方は金海空港へ向かう際にほぼ必ず(地下鉄と釜山金海軽電鉄との乗り換えのため)ここ沙上を通ることと思いますので、最終日の荷物置き場には絶好の場所です。
釜山西部バスターミナル (부산서부버스터미널:釜山広域市 沙上区 沙上路 201 (掛法洞 533-6))

 

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釜山西部バスターミナルのすぐ脇には、バスの利用客向けに朝早くから営業している飲食店が。
その中で今回は、先のコインロッカーと同じブログ記事で知ったオデン屋さんに入ります。

 

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韓国オデンの特徴は、全長3~40cmはあろうかという長い串にオデン種が刺さっていること。もはやちょっとした凶器です。前日に訪れた「古来思」(コレサ)海雲台店(こちらのエントリーにて紹介)にある巨大なオブジェもこんな感じでしたね。
スープは日本(西日本風)のそれとさほど変わらない懐かしい味。釜山名物のオムク(어묵:魚肉の練り物)やカレトック(가래떡:うるち米の餅)などを5本くらい食べても値段は2,500ウォン(約250円)。つまり1本500ウォン(約50円)!! しかもなかなかおいしかったです。

 

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この日もまた前日(11日)と同じく8番バスに乗車し、これまた前日と同じ「西区庁」バス停にて下車。ここから歩いて5分程度のところにあるのが、主に鮮魚や海藻などの海産物を扱う「忠武洞セビョク市場」(충무동 새벽시장)です。
「セビョク」とは「明け方、早朝」の意。その名の通り午前3時にオープンし、同10時には閉まるというかなり朝型の在来市場で、私が到着した午前7時台はすでに後半に入っている計算となります。

 

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ここを訪問するのは2016年1月に続き2回目。鮮魚もそうですが、とりわけ海藻の種類が豊富なこともあって、見ていて楽しいです。

忠武洞セビョク市場(충무동 새벽시장:釜山広域市 西区 忠武大路256番ギル 一帯)

 

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忠武洞セビョク市場を出て、チャガルチ市場へ向かう途中の海岸通りにある食堂街。市場で働く人々の胃袋を支えています。

 

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釜山最大の水産市場、チャガルチ市場(자갈치시장)。ソウルの鷺梁津(ノリャンジン)水産市場をはじめ韓国各地の水産市場と同じく、一般の人でも海産物を購入でき、それを館内の食堂に持ち込むことで刺身やヘムルタンなどに調理してもらえます(席代、調理料別途負担) 。
余談ですが、私はここを訪れるといつも、チャガルチ市場のすぐそばにある某店で浦項(ポハン)・九龍浦(クリョンポ)名物の「クァメギ」 (과메기:サンマを寒風に晒して作った生干し。ニシンのものは最高級品とされる)の冷凍品をお土産に購入します。そのまま食べてもおいしいのですが、韓国式にネギや酢コチュジャンとあわせてケンニッ(エゴマの葉)などで包んで食べると超うんまいのです。

 

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チャガルチ市場を過ぎてさらに歩くと、「影島大橋」(ヨンドデキョ)の威容が見えてきます。
この橋は釜山の旧市街である南浦(ナムポ)洞・中央(チュンアン)洞と対岸の影島(ヨンド)とを結ぶため、日帝強占期の1934年に開通。大型船舶が航行する際に路面の一部が上方向へ跳ね上がる独特の構造は長らく使用されていなかったものの、2013年のリニューアルの際に復活し、いまでは1日1回(14:00~14:15)開閉が実施されています。
架橋以降は釜山のランドマーク的存在となったこの橋、1950年6月25日に勃発したことから「6.25」(ユギオ)とも呼ばれ3年あまり続いた朝鮮戦争期とその休戦後には、避難民たちが散り散りになった家族と再会するための場所としても利用されるようになりました。その当時の辛苦をしのぶため、影島大橋のたもとの海岸には避難民を象徴する家族の像が建てられています。

影島大橋(영도대교:釜山広域市 中区 中央洞7街~影島区 大橋洞1街)

 

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そのたもとの海岸沿いには日帝強占期当時に建てられ、光復後には占いの館としても利用された日本家屋がいくつか建っていたそうですが、いまでは最後の1軒が残るのみとなりました。
こうした日本家屋もまた、植民地支配の収奪の一環として建てられたものであり、これらへの郷愁に浸るよりも先にどうしてもそのことが頭をよぎってしまいます。
あくまで個人的な見解ですが、これら日本家屋は光復後に韓国の人々が大切に利用し暮らしてきたことにこそ意味があると思いますし、それだからこそ郷愁をも感じ得るものです。文化財的な価値があるものを含め、取り壊されるのはもったいないという気持ちも正直ないとはいえませんが、あくまでそれは韓国の人が決めるべきことです。

 

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影島大橋の上から眺めた釜山港(南港)の眺め。この風景を見るといつも、大ヒット曲「釜山港へ帰れ」のメロディが頭の中を流れます。

 

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影島大橋を歩いて渡ると、写真の像が建っています。朝鮮戦争期にヒットした歌謡曲「굳세어라 금순아」(頑張れクムスン)を歌ったここ影島生まれの歌手、玄仁(현인:ヒョニン、1919-2002)さんを記念した像のようで、近づくとそれと思しきメロディが流れます。

前回(2016年1月)の訪問時には影島大橋を渡ってすぐ引き返してきましたが、今回は影島にも行きたい場所があるのでそのまま直進。少し歩いた「影島警察署」バス停から85番バスに乗車して向かったのは、影島の西海岸にある「ヒンヨウル(ヒニョウル)文化マウル」(흰여울문화마을)。

 

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この「ヒンヨウル文化マウル」とは、朝鮮戦争期に身ひとつで故郷から逃れてきた避難民たちを含め、低所得層の人々が暮らしたいわゆるタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)のひとつです。
マウル(마을:村、集落)の名前にあるヒンヨウルとは、直訳すると「ヒン」(흰:白い)「ヨウル」(여울:早瀬)の意味で、マウル一帯を含む影島の最高峰、蓬莱(ポンネ)山から流れる水の様子からこの名前がつけられたとのことです。
こちらもまた鄭銀淑さんの著書『釜山の人情食堂』で存在を知り、またある方の現地でのツイートを拝見して俄然行きたいとの気持ちが高まったことから、今回の訪問となった次第です。

 

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写真1枚目、大通りにある「흰여울길」(ヒンヨウルギル)の標識から脇道に入るとまもなく、2枚目のマウル入口を示す看板が出てまいります。

 

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このヒンヨウル文化マウルの特徴は、海岸の斜面にへばりつくように走る1本の細い歩道(ヒンヨウルギル)を中心に、マウルが形成されていること。「ヒンヨウル」の名を意識してか、住宅の壁の色も、歩道の防護壁の色も概ね白で統一されています。そのため誰が呼んだか「釜山のサントリーニ」との異名もあるとか。タルトンネ再生の成功事例である同じ釜山の「甘川(カムチョン)文化マウル」(こちらのエントリーにて紹介)を意識しつつも、地理的特性を活かした全く異なる街づくりがなされています。

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マウルを貫くヒンヨウルギルのあちこちに、写真のような海沿いの街らしいオブジェが。一部は公衆トイレとあわせてちょうど工事中で、甘川文化マウルに負けじと観光客誘致に期待するマウルの意気込みが感じられます。

 

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こうしたマウルにはつきものの壁画が、ここでも家の壁を彩ります。なごみますね。個人的には大好きです。

 

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マウルの中には、故・盧武鉉(노무현:ノ・ムヒョン、1946-2009)元大統領の若き頃をモデルにしたというソン・ガンホさん主演の映画『弁護人』(변호인)のロケに使用された1件の住宅があります。
今年(2017年) 4月9日に亡くなったキム・ヨンエさん演じる、主人公が足しげく通うテジクッパ屋のアジメ(「アジュンマ」の釜山方言。ここでは女主人の意)の自宅という設定で登場したのがまさにこちらの住宅であり、現在はマウルの案内所として使用されているそうです。

 

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壁には、映画のメインキャストの写真、そして劇中のアジメのセリフが。

“니 변호사 맞재?  변호사님아 니 내 쫌 도와도.”
(あなた弁護士でしょ? 弁護士なら私を助けてよ。)

警察により不当に拘留され、裁判を受けることとなった息子の救出を主人公の弁護士に迫る、アジメのセリフです。
この懇願を受けて、それまで金儲け第一であった主人公は変節し、アジメの息子やその仲間たちを救うため、そして韓国の民主化のために戦うこととなります。
『弁護人』、おすすめの映画です。ぜひ観てみてください。

 

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ロケ地の家、高さ1.4mくらいの勝手口の上にあった、愛らしい「頭上注意」。なごみます。

 

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ヒンヨウルギルから海と反対方向に入る道のひとつひとつがいちいち絵になるのも、このマウルの特色かもしれません。

 

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マウルを貫くヒンヨウルギルの終端には、海岸の消波ブロック沿いの道へと降りてゆく色とりどりの階段、通称「ピアノ階段」があります。見ての通りなかなか急な階段です。実際に登ってみたら、途中に展望台を挟んで、ヒンヨウルギルまで200段もありました。足ガクガク。

 

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ピアノ階段へ下りる途中の「二松島(イソンド)展望台」。空気の澄んだ晴れの日には遠く対馬も見えるとか。あいにくこの日は見えませんでした。

 

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今回は朝(午前9時台)に訪問しましたが、南西に向かって海に面しているだけあって、日没時はここから眺める夕日がそれはもう美しいこと極まりないそうです。次はぜひともその時間帯を狙って訪問したいものです。

「ヒンヨウル文化マウル」へのアクセスは、まず地下鉄(都市鉄道) 1号線「南浦」(ナムポ)駅で下車、6番出口を出て影島大橋の方向へ移動すると最初に現れる「影島大橋(南浦駅)」(영도대교(남포역) )バス停から679718285508番のいずれかの一般バスに乗車すると、14分前後で到着します。私のように影島大橋を歩いて渡りたいという方は、 次の「影島警察署」(영도경찰서)バス停から前述のバスに乗ってもよいでしょう。
住宅地であるうえ、観光客の来訪を期して街づくりがなされている場所ですので訪問自体は24時間いつでも可能ですが、当然ながらここで生活されている方も多数いらっしゃいますので、お静かに観覧いただくようお願いいたします。
ヒンヨウル(ヒニョウル)文化マウル(흰여울문화마을:釜山市 影島区 瀛仙洞4街 186-101 一帯)

 

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そんなわけで、次の目的地である凡一(ポミル)洞へと向かうため、「ヒンヨウル文化マウル」バス停から82番バスに乗り込む私でした。
それでは、次回のエントリーに続きます。

釜山の旅[その5] - 年に1度の小正月行事と神々しい舞踊、あの陸橋脇の酒場で食べるティッコギ

前回のエントリーの続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com


前回にも触れましたが、この日(2017年2月11日)は旧暦の「テボルム(대보름:小正月。旧暦1月15日。旧暦で1年最初の満月の日)にあたり、この日韓国ではこれにちなんだ民俗行事が全国津々浦々で開催されます。
これらの行事の中で特に人気が高いのが、松などの薪を積み上げた「タルチッ」(달집)の中に願い事や厄除けなどの紙などを入れ、これを盛大に燃やすことで新年を祈願する「タルチッテウギ」달집태우기:タルチッ焼き)です。
そしてその中でも特に大規模なもののひとつが、釜山・海雲台(ヘウンデ)区の海雲台海水浴場にて毎年小正月の当日にのみ開催される「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제)のタルチッテウギです。高さ5mにも及ぶ巨大なタルチッが火柱を上げる姿は相当な迫力があるとのこと。偶然にもそんな日にここ釜山に居合わせた以上、これを見逃さない手はありません。
夕暮れが迫る中、アンチャンマウル(ホレンイマウル)を出て海雲台へと向かいます。

マウルバスで再び「ポムネゴル」駅へ戻って地下鉄(都市鉄道) 1号線に乗車、「西面」(ソミョン)駅で海雲台方面へ向かう同2号線に乗り換えて、終点のひとつ手前「中洞」(チュンドン)駅で下車。
ここから砂浜までは遠いので、早歩きで向かいます。

 

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黄昏どきの街、遠くに見える海。こういう風景、なんだかたまらないですよね。

 

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途中にあった、Korail韓国鉄道公社)のかつての東海南部線(동해남부선:トンヘナムブソン)の線路跡。
釜山市内の「釜田」(プジョン)駅から蔚山(ウルサン)市の「太和江」(テファガン)駅方面へと向かう東海南部線(現:東海線)の新線切替に伴い廃止となった区間の線路跡を、そのまま観光地として保存したもの。いつかゆっくり歩いてみたいものです。

 

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そしてやっと海岸、事前に調べたタルチッのあるべき場所に到着。しかしタルチッテウギのものと思しき炎と黒煙は、はるか遠くに。どうやら調べた場所が間違っていたようです。
砂浜沿いの道をまたしても早歩き。

 

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ようやく到着したタルチッの場所は、実は先ほど下車した「中洞」駅のひとつ手前の「海雲台」駅が最寄りで、しかも以前に来たことのある水族館「シーライフ釜山アクアリウム」そばの海岸だということが分かりました。つまりほぼ1駅分歩いたわけです。
そんなわけでようやく、タルチッの近くまでたどりつきました。

 

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燃え盛る紅蓮の炎。1ケタ台の気温を忘れさせるほどの熱気が伝わってきます。当然ながら一定の距離以上は近づけません。風向きによっては火の粉が舞い落ちてくるというやや怖い状況下での観覧となりました。

 

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空を見上げると、小さな、しかしタルチッテウギの火の粉にしては大きすぎる光点がいくつも舞っています。これは火の粉でもUFOでもなく「風燈」(풍등:プンドゥン)と呼ばれるバルーンで、熱気球と同じ原理で浮かび上がっているものです。

 

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タルチッテウギの隣には、民俗行事らしく韓国の民謡が歌われる特設ステージが。その前では韓服姿の女性たちによる舞踊が繰り広げられています
それら民謡の中でも特に興味をひかれたのが「カンガンスルレ」(강강술래)。古くから韓国の南西海岸沿いの一帯において、主に中秋やこの日のような小正月など満月の夜に行なわれてきた歌と踊りのノリ(놀이:遊び、遊戯)であり、韓国の国家無形文化財第8号、そしてユネスコの人類無形文化遺産にも登載されています。
歌い手の女性による名調子の中、30人あまりもの韓服姿の女性たちが互いに手を取り大きな円を描きつつ踊る姿はまさに壮観。次第に速くなってゆくテンポに心揺さぶられます。ずっと眺めて、ずっと聴いていたい。

そうしている間にいよいよ辺りは闇に包まれ、ただタルチッテウギの炎だけが天を焦がします。
ステージでの歌と舞踊も名残惜しいですが、食事の予定もあるので、後ろ髪を引かれる思いで海雲台海水浴場を後にします。
今回は見ることがかないませんでしたが、この「海雲台タルマジ温泉祭り」では前述の「タルチッテウギ」のほか、お祭り隊が海雲台の街をパレードする「キルノリ」(길놀이)、そして海雲台沖で漁を終えた漁船がカモメの群れの中を五六島(오륙도:オリュット)沖を通り海雲台へ帰ってくる様子を再現した、釜山ならではというべき「五六帰帆(オリュッキボム)再現」(오륙귀범재현)などのイベントが開催されているとのことです。
次のテボルム(小正月)は2018年3月2日(金)、その次は2019年2月19日(火)。この日に釜山を訪問される方は、年にたった1日だけのこのお祭りに参加してみるのも楽しいでしょう。

「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제:釜山広域市 海雲台区 海雲台海水浴場一帯。リンク先は「タルチッテウギ」の大体の場所)

 

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海雲台の街中には、昨年(2016年)秋から続く「海雲台ラコ光祭り」(해운대라꼬빛축제)の一環であちこちにLEDの電飾が。

 

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これら「海雲台ラコ光祭り」の電飾の中でも特に大きなものがこちら。これ1本でクリスマスも正月もソルラル(旧正月)も祝える便利なオブジェです。入ることのできる内側からの眺めがすごい。

 

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海雲台市場」(해운대시장:ヘウンデシジャン) 。海産物を扱うお店のほか、ヘムルタン(해물탕:海鮮鍋)やコムジャンオグイ(곰장어구이, 꼼장어구이:ヌタウナギ焼き)など港町釜山らしい海鮮料理の店が軒を連ねます。その終端近くにあった「イルムナン機張(キジャン)サンコムジャンオ」(이름난 기장 산 곰장어)というお店では、イルムナン(「有名な」の意)の名に恥じないほどの行列が形成されていました。いつか訪れてみたいです。

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海雲台駅前から海水浴場へ向かって伸びる大通り沿いでひときわ目立つ巨大オムク(어묵:魚肉の練り物。主にオデン種として利用)のオブジェの建物は、1963年創業の老舗「古来思」(고래사:コレサ)海雲台店です。海雲台のランドマークと言うべき存在かも知れません。古来思の店舗の中でもこの店限定という、魚肉でできた細麺を鰹ダシで煮込んだ名物「オウドン」(어우동)は食べてみたい一品です。

 

海雲台」駅から地下鉄(都市鉄道) 2号線に乗車し、再び「西面」駅で乗り換え、今度は「凡一」(ポミル)駅で下車します。

 

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同駅7番出口を出て徒歩3~4分の距離にあるKorail京釜線跨線橋、通称「クルムタリ」(구름다리:雲の橋)。ここ釜山を舞台に描き大ヒットした2001年の映画『친구』(邦題『友へ チング』)の撮影地のひとつとなった場所で、あるポイントから跨線橋の階段を見ると、映画の中心人物4名を含む名シーンを描いた絵が浮かび上がってきます。

 

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そしてこの日の夕食は、このクルムタリの凡一駅側のたもとにあるティッコギ(뒷고기)のお店、その名もずばり「クルムタリ」へ。
このティッコギ、本来は釜山市と隣接する慶尚南道キョンサンナムド)金海(キメ)市発祥の料理ですが、ここ釜山にも伝播し、いまでは釜山の名物料理のひとつに数えられるまでとなっています。
一般に「ティッコギ」とは特定の部位ではない豚の切り落とし肉のことであり、枝肉から精肉を切り出す際に余った、骨の周りなどの端肉の総称を指します。直訳すると「ティッ」(뒷:後ろ、裏)「コギ」(고기:肉)という意味で、豚肉の部位の中でもあまりにもおいしいことから解体業者が流通させず自分たち(裏方)だけで食べたため、あるいはサムギョプサルなどのような名のある部位でこそないもののあまりにおいしいので貧しい人のためにかき集めて売ったため、などその由来には諸説あるようです。

 

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おいしいだけでなく、以上の理由からリーズナブルなのもティッコギの特長。こちらのお店では1人分が4,000ウォン(約400円)。そんなわけで5人分を注文。お店の主人であるアジメ(アジュンマの釜山方言)に驚かれますが、これはいつものことなので、食べられますよとアピール。
ところで写真は同店のメニュー表なのですが、上から2番目の「김치찌개」(キムチチゲ)のやや強引?な修正に注目。韓国は他の国と同様に飲食物の原材料が値上がりの一途にあるため、料理の価格の値上げに際し写真のようにとりあえず油性マジックなどで修正したメニュー表をあちこちで見かけます。こういうの、好きなんです。揶揄的な意味でなく。日本だとたちまち心ない人からクレームが付けられそうなこうした表現が許容されているところに、社会の成熟性を感じずにはいられません。

 

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お待ちかねのティッコギ登場。過去に食べたお店の肉がいかにも切り落としらしいコロコロした形状であったのに対し、こちらは薄くスライスされています。

 

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驚いたことに、なんとアジメが1枚1枚、かいがいしくお肉を焼いてくださります。
そしていよいよ実食。うんまい。歯ごたえはあるけれど硬いというほどではなく、ほどよい感じ。サンチュなどでくるんで食べていましたが、想像以上に量があったので途中からは肉オンリーに切り替えて、ようやく完食。おなかいっぱい。
あと、写真にはないですが、ここのテンジャンチゲは超うんまかったです。いままで食べてきた中でベストと言ってもよいほど。
こちらの「クルムタリ」、営業時間は13:00~23:00。たまに通過する列車の音をBGMに、韓国の酒場の雰囲気に浸りつつ、ティッコギも味わえるお店です。

クルムタリ(구름다리:釜山広域市 釜山鎮区 凡一路125番ギル 29-61(凡川洞62-149))

 

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お店を出た後、クルムタリを渡って、界隈を少し歩いてみました。
渡った先にある道路橋の歩道には、映画『친구』のメインキャストであるチャン・ドンゴンさんとユ・オソンさんの手形&足形の展示物も置かれています。
どの写真にも看板が写っている「サンソンオルムマッコリ」(산성얼음막걸리)は、酒場らしい店構えにおいしい料理、しかも破格の安さということで、鄭銀淑さんの著書『韓国ほろよい横丁 こだわりグルメ旅』などでも紹介されているお店です。次回の釜山行きの際には必ずや訪問したいと思います。

そして沙上のホテルへ戻り、この日の旅は終了。最終日となる明日のために英気を養うのでした。


【おまけ】
ホテルへ帰った後、歩いて15分ちょっとの距離にあるマート(日本でいう大型スーパー)「ホームプラス西釜山店」へ。こちらは24時まで営業しており、隣接する「emart沙上店」(23時閉店)よりも使い勝手がよいので。
目的は、日本へ持って帰るべき「金井山城マッコリ」(금정산성막걸리)購入のため。ここ釜山の地マッコリであり、民俗酒第1号としても知られるこちらのマッコリ、濃厚な味で大好きなのです。

 

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ただでさえ横倒しにすると未開封でも漏れ出してしまう生マッコリ。航空機内での破裂を恐れて持ち帰りを躊躇されている方も少なくないと思いますが、 私はいつも備え付けの梱包用テープ(韓国のマートにはほぼ必ずあります)で写真のようにボトルのキャップをぐるぐる巻きにし、さらにレジ袋などで最低2重以上にくるみ密閉したうえで持ち帰るようにしています。これでもわずかに漏れ出しはしますが、いまのところボトルが破裂したことも、バッグの中の荷物を濡らしたこともありません。

ホームプラスの営業時間や店休日は店によって異なりますが、こちらの西釜山店は9:00~24:00。店休日は毎月第2・第4日曜日ですが、この日はホームプラスのみならずemartやロッテマートなど釜山市内のほぼすべてのマートが一斉休業しますのでご注意のほど。
ホームプラス西釜山店(홈플러스 서부산점:釜山広域市 沙上区 広場路 7(掛法洞529-1))

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