かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

太白の旅[その2] - かつての炭鉱をアート空間に再生した施設、そして太白の隠れた名物・タッカルグクス

前回の旅の続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com

お酒をしこたま飲んで、同じ鍾路3街のホテルに帰っていつのまにか寝入っていた私。気が付いたら翌日(1月22日日曜日)の午前5時半。当初予定していた、ここから遠く離れた江辺の東ソウル総合バスターミナルを午前6時に発つ便には到底間に合いそうにありません。周囲を見回すとスマホなどはしっかり充電しているのに、目覚まし時計代わりの折り畳み式ケータイはなぜか日本で使っていたもっと遅い時刻設定のまま。なぜここまでがんばらなかった……

それから急いで支度し、タクシーに乗って東ソウル総合バスターミナルについたのは午前7時ちょい過ぎ。

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東ソウル総合バスターミナルの前には写真のような屋台が並んでおり、この早朝(午前7時)の時点ですでに営業中です。思わずふらっと覗いてみたくなる気持ちをがまんしつつ、結局当初予定より2時間近く遅い7:45発の太白行き市外バスに乗り込む私でした。

 

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本エントリーのタイトルにもあるように、今回の旅の主目的地はバスの行先である江原道の太白市ですが、ひとつ前の旌善(チョンソン)郡古汗(コハン)邑にある「古汗・舎北共用バスターミナル」で下車。東ソウル総合バスターミナルからはおよそ2時間半の旅。ちなみに名称中の「舎北」とは、ここ古汗邑と隣接する旌善郡舎北(サブク)邑のことで、名前の通り二つの自治体で分け合うようにほぼ中間地点に位置しています。

古汗・舎北共用バスターミナル(고한.사북공용버스터미널)

 

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ターミナルの建物の前には、なぜか若干くたびれ気味の鉄腕アトムの像が。韓国でも人気のアニメだと聞いています。

 

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ここ古汗・舎北共用バスターミナルには、地方の(それも郡部の)バスターミナルでは珍しくコインロッカーがありました。ただし残念ながら私のキャリーバッグは入らなかったため泣く泣くスルー。
韓国の地方の駅やバスターミナルではここのようにコインロッカーがあるところがむしろ珍しく、地方の旅をするにあたってはいつもその調査に時間をとられてしまいます。同じように韓国地方の旅を計画される誰かのお役に立てるべく、こうした韓国の地方の駅やバスターミナルのコインロッカー情報はこれからも積極的に発信してまいります。

 

古汗・舎北共用バスターミナルの前に並ぶタクシーに乗り込み向かったのは、同じ古汗邑内にある「三炭アートマイン」(삼탄아트마인)。

f:id:gashin_shoutan:20170131220042j:plainここは1964年に開山した炭鉱「三陟炭座」(삼척탄좌)が2001年秋に閉山となるまで実際に用いられた施設で、その後大改修を経て2013年にオープンしたものです。現「三炭アートマイン」のシンボルマークのモチーフにもなっている竪坑櫓をはじめ、操業当時の施設がほぼそのまま残されつつも、内部はかつての炭鉱時代の記憶とアートが共存する空間として生まれ変わっています。

 

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それでは施設内に入ってみましょう。  

 

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玄関と同じ4階にある、元・第1竪坑運転室。無数の計器が並ぶ機械の数々。こういうのを見てワクワクしないはずがありません。

 

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施設のところどころに往時をしのぶ壁画が描かれています。

 

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「アートマイン」の名の通りここはアート空間でありますので、芸術作品も展示されています。現代アートにアフリカの民族美術に兵馬俑と守備範囲はかなり幅広い印象。 

 

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施設内には、芸術家たちが実際に生活の拠点兼アトリエとして使用するレジデンス空間も設けられています。 

 

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操業当時(80年代)の従業員の入社願書(写真)や給与明細の実物まで展示されていたのはちょっとびっくりしました。

 

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粉塵で汚れた鉱夫たちの衣服をまとめて洗っていた大型洗濯機。その衣服で作られた人形が中から飛び出しているのがいかにもアート空間っぽいです。

 

f:id:gashin_shoutan:20170207222830j:plainかつての洗靴場は、妖しげな光を放ちつつ往時を記憶しています。 

 

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f:id:gashin_shoutan:20170207223825j:plainここ三炭アートマインは、昨年(2016年)にKBS2で放映され大ヒットしたドラマ『太陽の末裔』(태양의 후예)のロケ地となったことでも知られています。その撮影場所のひとつが、いまも天井にシャワーノズルの残るシャワー室。片隅には、ソン・ジュンギさん演じる主人公、劉時鎮(YOO SI JIN:ユ・シジン)大尉のネームの入った軍服とベレー帽が。記念撮影向けでしょうか(もっともこのシャワー室でのシーンにソン・ジュンギさんは登場しなかったようですが……)


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このほかにも施設内のいくつかの建物で撮影が行なわれたとのことで、玄関には案内板も用意されています。日本語がちょっと変なのはご愛嬌(^_^;)  

 

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屋外には写真のワインセラートンネルやレストランのほか、坑道入口など操業当時のいくつかの施設がありますが、ご覧の通り雪が積もっているためにあまり見て回ることはできませんでした(レストランも訪問当日は休業)。いつか雪のない時期に再訪したいですね。
エントランスでは、前述の通りコインロッカーに入れられなかったため持参した私のキャリーバッグを無料で預かっていただいたり、また帰り際にはタクシーを呼んでいただいたりと、至れり尽くせりの対応で好感が持てました。
この「三炭アートマイン」、午前9時より午後6時まで営業(入場は午後5時まで)。名節(旧正月・秋夕)と月曜日は休業。入場料は13,000ウォン(約1,300円)。古汗・舎北共用バスターミナルからだとタクシーで約15分程度、12,000ウォン(約1,200円)弱で到着できました。一見の価値ありです。

三炭アートマイン(삼탄아트마인:江原道 旌善郡 古汗邑 咸白山路 1445-44(古汗里 山216-1))

 

再びタクシーに乗って、今度はKORAIL古汗駅へ。三炭アートマインからは迎車料金込みで8,800ウォン(約880円)でした。残念ながらコインロッカーはありません。

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ここからムグンファ号に乗ること約20分。昨年(2016年)3月の初訪問以来およそ10か月ぶりに、今回の旅の主目的地である江原道太白(テベク)市の代表駅、太白駅に到着。
この駅、ハングル表記では「태백역」となるのですが、発音は「テベギョク」ではなく「テベンニョク」となるのですね。今回初めて知りました。  f:id:gashin_shoutan:20170207232132j:plain

f:id:gashin_shoutan:20170207231853j:plain駅につくやいなや私たち下車した客を迎えてくれたのは、ちょうどこの日が最終日であった「太白山雪祭り」のキャラクターさんたち。なごみます。

 

太白駅前はこんな感じ。わざわざ動画にしたのは、手前の温度計を撮りたかったから。 pic.twitter.com/pE2ZfTiXfI

— ぽこぽこ (@gashin_shoutan) 2017年1月22日

朝鮮半島を南北に貫く太白山脈のど真ん中にあり、低いところでも標高700mを超える太白の冬は厳しく、陽の当たる日中でも気温が氷点下を下回ることはざらです。私が到着したこの日の午後1時の気温はマイナス5℃。寒い。

 

f:id:gashin_shoutan:20170207232604j:plain太白駅には最新の指紋認証式のコインロッカーが。しかも私のキャリーバッグが余裕で入る大型サイズのボックスも。値段も4,000ウォン(約400円)/日とお手頃。
そそくさと荷物を預け、まずは駅前にある太白市外バスターミナルへ。ここから市内バスの4系統に乗り、15分くらいで到着する「桶里」(통리:トンニ)バス停へと向かいます。

 

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f:id:gashin_shoutan:20170207233311j:plain桶里バス停のすぐそばにある「ハン書房(ソバン)カルグクス」。タッ(鶏)カルグクス(닭칼국수)の名店として知られるお店です。店内のオープンスペースでは麺の手打ちも披露。

 

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f:id:gashin_shoutan:20170207233227j:plainf:id:gashin_shoutan:20170207233236j:plainそしてやって来た、タッカルグクス。骨ごとよく煮込まれた鶏のダシが効いたスープ。ホロホロに溶けた鶏肉が麺にからむ。なにこれ、超うんまい。しかもパンチャンの白菜キムチもまたうんまいという。
写真では分かりづらいですが、日本でのうどんやラーメンの大盛よりもボリュームがあって、7,000ウォン(約700円)という良心的価格。
こちらの「ハン書房カルグクス」、営業時間は9:30~21:00。第2・4月曜日は休業なのでご注意。太白を訪れた際にはわざわざバスに乗ってでも行くべき店です。 

 ハン書房カルグクス(한서방칼국수:江原道 太白市 江原南部路 468(黄蓮洞 69-41))

 

それでは、次回に続きます……

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