かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
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釜山の旅[その4] - 避難民の暮らしが残るアンチャンマウル(ホレンイマウル)でうんまいオリプルコギを

前回のエントリーの続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com

「臨時首都記念館」を出て、再び地下鉄(都市鉄道)1号線「土城」(トソン)駅へ。次に向かったのは同じ1号線の「草梁」(チョリャン)駅の地上、在釜山日本総領事館の裏にある「平和の少女像」。ただしこちらは以前のエントリーで詳しく紹介したので、今回は省略することといたします。

 

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草梁駅からまた1号線に乗り、今度は「ポムネゴル」駅で下車。3番出口を出て横断歩道を渡ったすぐの場所にある「ポムネゴル駅」バス停(写真)から、<동구(東区)1>マウルバスに乗車します。

 

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この日の朝「甘川(カムチョン)文化マウル」へ行った際に乗ったものもそうでしたが、ここ釜山の隅々を毛細血管のように巡るマウルバスは、主に写真のようなマイクロバスが使用されています。車体は写真のようなグリーン、または白と水色のツートンカラー。こんなちっちゃなバスでもちゃんとT-moneyに対応しています。

 

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そんなマウルバスに揺られてポムネゴル駅から約15分程度で到着する終点「アンチャンマウル」、またはひとつ手前の「東区総合社会福祉館」バス停の周辺は一般に「アンチャンマウル」(안창마을)と呼ばれる地域であり、今回の目的地です。
東区凡一(ポミル)洞に属するこの一帯もまた、朝鮮戦争の避難民が山の斜面を切り開いて定着した、トタンやスレートの屋根の小さな住宅が無造作に密集するタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)であり、韓国の人々にとっては郷愁を誘う風景となっています。
近年ではタルトンネ再生の成功事例である同じ釜山の「甘川文化マウル」を意識してか、「ホレンイマウル」(호랭이마을)の別名による観光地化の取り組みが始まっています。「ホレンイ」(호랭이)とは「ホランイ」(호랑이:虎)の方言。ただしこちらは甘川ほど観光地化が進行しておらず、一部の住宅に壁画などが描かれた程度にとどまっており、タルトンネらしい家並みがそっくりそのまま残されています。
前日に訪問した「コチャンチッ」と同じく、こちらも鄭銀淑さんの著書『釜山の人情食堂』で初めて知った場所であり、昨年(2016年)1月に続き今回が2度目の訪問となります。

この日は早朝に乗車した市内バスの車内でコンビニのおにぎりを食べて以来、何も食べていませんでした。時刻はすでに14時過ぎ。マウル巡りに先立ちまずは腹ごしらえから。
アンチャンマウルには、オリプルコギ(오리불고기:鴨の味付け焼肉)の店が集中しています。鴨肉は、韓国では滋養強壮の効果があるとされ日本以上にポピュラーな食材であり、この周辺の登山客を対象としたオリプルコギの店がいつのまにか定着したとのこと。

 

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その中で今回は、こちらもまた『釜山の人情食堂』で紹介されていた「チョンミチッ」に入店。昼過ぎであるからか先客は誰もいません。
ここアンチャンマウルのオリプルコギは、韓国では一般的な何人分という単位ではなく、ハンマリ (한마리:1羽)単位で販売されます。しかも釜山の中心街で食べるよりもかなり安いそうで、こちらのお店では「セン(生)オリプルコギ」(생오리불고기)のハンマリが2万ウォン(約2,000円)とお手頃。さっそく注文します。

 

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そしてやって来たセンオリプルコギ。焼けたお肉とヤンニョムの香ばしい匂いが漂います。じゅるり。

 

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十分に焼けたところで、いよいよ実食。付け合わせのサンチュやケンニッ(エゴマの葉)などに包んで食べます。超うんまい。大好きな味。クセがないのにコクのある鴨肉とヤンニョムが渾然一体となり、えも言われぬ味を出しています。日本の鴨肉にありがちな硬さもありません。あっという間に完食してしまいました。
チョンミチッの営業時間は10:00~22:00。<동구1>マウルバスの終点「アンチャンマウル」バス停から歩いて1分程度の場所にあります。

チョンミチッ(정미집:釜山広域市 東区 アンチャン路77番ガギル 5 (凡一洞 山 65-141))

 

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次に向かったのは「東区総合社会福祉館」バス停そばの建物、まさに東区総合社会福祉館。訪問の前月(2017年1月)、この建物内にアンチャンマウル唯一の沐浴湯(목욕탕:モギョッタン。銭湯のこと)が2年ぶりに復活したと聞き、腹ごなしを兼ねてひとっ風呂浴びることに。

 

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一般に韓国の沐浴湯には鍵の付いたロッカーがあり、タオルも無料で貸してもらえるので、旅先でも気軽に入ることができます。こちらの「青春沐浴湯」(チョンチュンモギョッタン)では、過去に入った沐浴湯とは異なり脱衣場にタオルはありませんが、受付の方にお願いすれば貸してもらえます。浴場には石鹸とボディタオル(体を洗うやつ)も備えられていますが、シャンプーとリンスは持ち込む必要があります(受付でも販売)。
設備はお湯の風呂のほかサウナと水風呂、そして韓国独特の垢すりタオルが回転するマシーン(背中用)、どれも新品です。最新の施設らしいLEDの照明の下で、銭湯の大きな湯船に浸かるという珍しい体験ができました。
青春沐浴湯の営業時間は06:00~19:00。月・木曜日休業。大人(8歳以上)は入浴料4,000ウォン(約400円) 。

東区総合社会福祉館「青春沐浴湯」(동구종합사회복지관<청춘목욕탕>:釜山広域市 東区 アンチャン路57番ギル 5 (凡一洞 1542-11)) [HP]

 

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「東区総合社会福祉館」バス停から坂道を少し登ると、ホレンイの名を持つ町らしく建物前面が虎の模様で彩られ、正面には虎の像が颯爽と立つ観光案内所「ホレンイマウル会館」が右手に現れます。

 

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ホレンイマウル会館では、 写真のガイドマップを無料で入手できます。残念ながら日本語版はありませんが、明快なイラストで構成されていますので韓国語が読めない方でも役に立つでしょう。前回訪問時と同様、今回もこのマップに描かれた順路に沿って、マウルを巡ることとします(以下、本エントリーではこのマップを「上図」と呼びます)

ホレンイマウル会館(호랭이마을회관:釜山広域市 東区 アンチャン路 66 (凡一洞 1542))

 

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再び東区総合社会福祉館へ。ここの敷地内に順路のスタート地点となる階段(上図②)があるためです。

 

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順路の前半は、ホレンイマウルの裏山を巡る登山道。初めて来たときは、道を間違えたのではないかと思ったほどです。案内板や、マウルの名にちなんだ虎柄のベンチなどが設置されています。初めてでも迷わないようとの配慮からか、公園(上図④)など目印となる場所をいくつか通ります。

 

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途中にある湧き水の井戸(上図③)。韓国では一般に「薬水」(약수:ヤクス)と呼ばれ、飲み水のほかご飯を炊く水などにも用いられます。前回訪問時は直接汲むことのできた井戸の扉は施錠され、新設された蛇口から汲むように変わっていましたが、凍結しているのかひねっても薬水は出ませんでした。

 

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上図③と⑥の間あたりの山道。これ、釜山の東区です。あの近代的なKTX釜山駅、オフィスビルの立ち並ぶポムネゴルや草梁などと同じ区内ですよ?

 

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しばらく歩くと、集落へ下る道(上図⑥)が現れます。
ここからは順路を気にせず、集落のあちこちを巡ることにします。

 

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アンチャンマウルと隣接する東義(トンウィ)大学校伽倻(カヤ)キャンパス内の寄宿舎であり、この周辺で唯一の高層ビル「暁民(ヒョミン)生活館」(上図⑧)のそばから撮ったマウルの全景。高台になっており、絶好の撮影スポットです。
青い屋根が連なるマウルの風景を見ていると、ここで暮らしたことがあるわけでもないのに、胸がきゅっとします。釜山でいちばん好きな場所かもしれません。

 

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ところどころの壁面に肖像写真や集合写真が貼られています。肖像写真は、かつてその家に暮らしていた方でしょうか。

 

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「ホレンイ」を名乗る町らしく、郵便受けにも虎の装飾板が。

 

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マウルの中にある「ソングァン教会」(上図⑦)の門と塔。

 

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マウルの中にあるお寺。韓国では、こうした提灯が飾られているお寺をよく見かけます。

 

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サムルノリを演奏しつつ、マウル内を練り歩く一団と遭遇。この日(2月11日)はデボルム(대보름:小正月)だったので、それを祝うためでしょうか。

 

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先ほど紹介したホレンイマウル会館(上図⑩)へと下る坂道。これでマウルを一周したことになります。正面に見えるのはマウルバスの車庫。そろそろ日が傾いてきました。

アンチャンマウル(ホレンイマウル)へのアクセスは、地下鉄(都市鉄道)1号線「ポムネゴル」駅3番出口のそばにある「ポムネゴル駅」バス停から<동구(東区)1>マウルバスが約7分間隔で出ているのでおすすめです。約15分程度で到着する終点「アンチャンマウル」、またはひとつ手前の「東区総合社会福祉館」バス停にて下車。同1号線 「凡一」(ポミル) 駅からだと<동구1-1>マウルバス(約15分間隔)が出ており、こちらはおよそ17分程度で到着するようです。

アンチャンマウル(ホレンイマウル)(안창마을 (호랭이마을):釜山広域市 東区 凡一洞 一帯)

 

 それでは、次回のエントリーへ続きます。

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