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大邱の旅[201706_01] - 東城路(トンソンノ)近辺のスポット巡り、そしてまたあのひとに会いに

今回からは、本年(2017年)6月9日(金)から同月11日(日)にかけての大邱(テグ)広域市の旅をお届けします。

韓国有数の大都市である大邱広域市の人口はおよそ250万人。韓国では4番目ですが、3位の仁川をソウルと同じ首都圏として一体だと考えるならば韓国第3の都市と呼ぶべき存在です。市域の人口規模に加え、首都ソウルと第2の都市・釜山の間、それもやや第2の都市寄りに位置する点など、個人的には日本の名古屋と似ている印象があります。
大邱には名所・旧跡など観光地が無数にあり、また近年は商業施設も発達していますが、私にとって大邱といえば何と言ってもやはり「食都」。後述する「大邱十味」に代表される、他地域に類を見ない独特の食文化が花開いているからです。このあたりも名古屋に似ていますね。

大邱広域市では食都・大邱を彩る郷土料理の中でも特に代表的とされる10種のメニューを選定し、「大邱十味」(대구십미)と名付けて街の広報に広く用いています。
それではこれら「大邱十味」のうち、前回・2016年9~10月の旅で味わうことのできたメニューとその店を簡単に紹介したいと思います。

 

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「タロクッパ」(따로국밥)。
大邱十味の中でも筆頭格に挙げられる料理。一般的なクッパとは異なり、牛骨スープとご飯が「タロ」(따로:別々の意)で出されるためにこの名が付いたとされています。スープの中に「ソンジ」(牛の血を固めたもの)が入っているのが特徴。写真は都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」(チュンアンノ)駅近く、タロクッパの元祖とされる1946年創業の「クギルタロクッパ」にて。24時間営業。

クギルタロクッパ(국일따로국밥:大邱広域市 中区 国債報償路 571 (前洞 7-1))

 

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「ナッチャンマンドゥ」(납작망두)。
直訳すると「ぺたんこ餃子」の意で、タンミョン(春雨を太くしたような透き通った麺)などの具を包んだ平べったいクンマンドゥ(焼き餃子)。具以上に焼いた皮の香ばしさを味わえる一品です。写真は都市鉄道(モノレール)3号線「新南」(シンナム)駅近く、ナッチャンマンドゥの元祖とされる「ミソンダンナッチャンマンドゥ」にて。営業時間は午前10時~午後9時(週末は午後8時)、名節(旧正月・秋夕)休み。

ミソンダンナッチャンマンドゥ(미성당납작망두:大邱広域市 中区 南山路75-1 (南山洞 104-13))

 

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「マクチャングイ」(막창구이)。
牛の第四胃であるマクチャン(막창:日本でいうギアラ。直腸のマクチャン(막장)とは別)を輪切りにして焼いたもので、ビールやソジュ(焼酎)との相性が抜群の一品。テンジャン(韓国味噌)ベースのつけダレがまた絶品なのです。写真は都市鉄道(地下鉄)1号線「アンジラン」駅近くに広がる「アンジランコプチャンコルモク」(コルモクとは路地、通りの意)にある「アンジコプチャン」にて。営業時間は午前10時~午前4時、毎月第1・第3日曜休業。

アンジコプチャン(안지곱창:大邱広域市 南区 大明路36キル 63 (大明洞 872-9))

 

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「ヤキウドン」(야끼우동)。
日本の「焼きうどん」とは全く異なり、ウドン麺を海鮮などと一緒に唐辛子風味のソースで妙めた料理。辛いのですがやみつきになる、食べだしたら止まらない味。大邱では主に中国料理店で扱われています。写真は都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅近く、ヤキウドンの元祖とされる「中和飯店」(チュンファバンジョム)にて。営業時間は午前11時30分~午後9時、毎月第2・第4月曜休業。

中和飯店(중화반점:大邱広域市 中区 中央大路 404-11(南一洞 92)

 

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「ムンティギ」(뭉티기)。
ソジュに合う生肉料理として開発された大邱オリジナルの調理法で、いわゆるユッケとは異なり牛生肉を親指大の薄切りにして、ごま油・ニンニク・唐辛子粉のヤンニョム(調味料)に漬けたものです。風味に加えプリプリした食感がたまりません。写真は都市鉄道(地下鉄)1号線「聖堂(ソンダン)モッ」駅近く、「愉快なムンティギ」にて。営業時間は午後5時30分~午前2時、日曜定休。

愉快なムンティギ(유쾌한 뭉티기:大邱広域市 達西区 野外音楽堂路 3 (聖堂洞 830-1))

 

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「東仁洞チムカルビ」(동인동 찜갈비)。
1970年代初頭に中区東仁洞(トンインドン)に現れた料理で、一般的なカンジャン(醤油)ベースのカルビチムとは異なり、蒸した牛カルビを唐辛子粉とニンニクで味付けしたもの。年季の入った洋銀製の鍋に入って出てくるのが特徴。猛烈なニンニク風味とほどよい辛さは食べる者をとりこにします。写真は「東仁洞チムカルビコルモク」にある「鳳山(ポンサン)チムカルビ」にて。営業時間は午前10時~午後10時。
鳳山チムカルビ(봉산찜갈비:大邱広域市 中区 東徳路36キル9-18(東仁洞1街332-3))

 

以上の通り、前回の旅で味わうことのできた大邱十味は6種類。今回の旅で大邱十味を制覇するためには、2泊3日、およそ43時間の滞在時間の中で残る4種を口にできるかにかかっています。
前置きが長くなりましたが、それでは旅レポヘ。

 

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今回の大邱訪問に利用したのは、昨年(2016年)9月から就航したt'way航空の成田-大邱便。その同じ月に行って以来、およそ9ヵ月ぶりの訪問となります。
大邱国際空港は仁川・金浦・金海(釜山)の各国際空港とは異なり、軍民共用の空港です(NAVER地図Daum地図の航空写真でも森林に擬装されています)。そのため滑走路の撮影は禁止されており、着陸後には客室乗務員より毎回その旨のアナウンスがなされます。わずかながら緊張感が高まるひとときです。

 

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大邱国際空港に到着。日本発着便など国際線が増加の一途にある同空港ですが、リムジンバスはありません。その代わり空港ターミナルから徒歩約3分、ターミナル正面の道路を渡ってすぐの「大邱国際空港ゴンノ」(대구국제공항건너)バス停(写真)からは、大邱最大の繁華街・東城路(トンソンノ)方面へ向かう<급행(急行)1>番バスや東大邱大邱の両鉄道駅へ向かう<401>番バスなど、市の中心部へ向かうバスが頻繁に走っています。「ゴンノ」(건너)とは「向かい」の意で、道路を挟んだ向かい側にあることを示しています。

 

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一方、中心部からのバスが到着する空港寄りのバス停は「大邱国際空港アプ」(대구국제공항앞)。「アプ」(앞)とは「前」の意。このように大邱市内のバス停は、近隣の施設名の後に「アプ」と「ゴンノ」を付けたり、地名の場合だと後ろに数字を付けたりするなどして明確に区分されており、進行方向を問わず同一名称のバス停がほぼ存在しない点が特徴です。
それと写真右上にあるように大邱市内のバス停にはたいてい二次元コードQRコード)が表示されており、スマホでこれを読み取ると、次の便がそのバス停に到着するまでの時間が路線別にリアルタイム表示されるサイトにアクセスできます。ちなみに写真の「大邱国際空港アプ」はこんな感じ。いちいちアプリをダウンロードする必要がないのでとても便利です。今回の旅ではかなり重宝しました。

今回の宿は大邱駅のそばですので、ゴンノから401番バスに乗車します。

 

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大邱駅。現代百貨店が入居する立派な駅ビルですが、KTXは隣の東大邱駅に停車するためすべて通過します。
ホテルの部屋に荷物を置き、まずは最初の目的地まで散策を兼ねて歩くことに。

  

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最初にやって来たのは、大邱駅から南へ伸びる東城路を途中で左に入った場所にある、在来市場「校洞市場」(キョドンシジャン)前の道路で展開されている「校洞トッケビ夜市場」。「トッケビ」(도깨비)とは日本でいう「小鬼」に相当するもので、それっぼいキャラクターのイラストも。

 

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大邱の夜市場といえば西門市場(ソムンシジャン)のそれが有名ですが、こちらは大邱でも最初の夜市場であり、西門市場の先輩にあたります。とはいえ屋台は10台前後とずっと小さく、地域密着型のこぢんまりとした夜市場といった印象です。
「校洞トッケビ夜市場」の開催時間は毎日午後6時~午前0時。この日(6月9日)は金曜日でしたが、毎週土曜日の午後6時~午後9時にはフリーマーケットも開催され、いっそう賑わうようです。

校洞トッケビ夜市場(교동도깨비야시장:大邱広域市 中区 校洞キル 40 (校洞67-12) 一帯)

 

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続いて向かったのは、大邱随一のコミック専門店である「コミックプラザ」。
ソウル・弘大入口(ホンディック)の「BOOKSAETONG文庫」や釜山・西面(ソミョン)の「コミックセサン・ブックカルチャー」などと並び称されるこちらのお店では、日本のコミック・ライトノベルの公式韓国版や韓国作家によるそれら書籍を大量に扱うとともに、店内には交流スペースが設けられています。

 

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ちょうどこの日(6月9日)は韓国でも大人気のあのアニメこちらのキャラクターの誕生日であり、壁面はそのイメージカラーである紫色一色に染められていました。

 

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店内にはいたるところにフィギュアが。このあたりは日本のコミック専門店とは大きく異なるポイントです。ちなみに写真3枚目は今回購入した本。とうとう日本語版の最新刊に追いついてしまいました。

こちらのお店「コミックプラザ」の営業時間は午前11時(平日は午前10時)~午後9時。購入ごとにポイントがたまるポイントカードも無料で発行してもらえます。なお、以上の店内写真はすべて許可を得た上で撮影・公開しています。

コミックプラザ(코믹프라자:大邱広域市 中区 慶尚監営キル 184 (文化洞 6-2)) [HP]

 

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次に向かったのは大邱でも数少ない両替所「大信換銭」(テシンファンジョン)。ノボテルアンバサダー大邱の東側の隣にあるこちらのお店は好レートで評判がよく、前回(2016年9月)の大邱訪問でも利用したところです。
こちらのお店はサジャンニム(店主の意)が一人で運営しているらしく、営業時間中でも外出中には鍵がかかっていたりするのですが(前回訪問時がそうだった)、その旨と連絡先の携帯番号を書いた張り紙が今回はありません。よく見ると営業時間が短縮されたようで、この日(午後7時近く)はすでに閉店後。また今度来ることにしましょう。

大信換銭(대심환전:大邱広域市 中区 国債報償路125キル 6 (公平洞 9))

 

さらに南へ下り、「2.28記念中央公園」の北端、国債報償路(クッチェボサンノ)沿いにあるこの日最大の目的地へ。

 

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「平和の少女像」。
今年(2017年)春、大邱では2番目となる像がこの場所に設置されたと聞き、会いに来ました。
釜山・草梁(チョリャン)とソウルの「戦争と女性人権博物館」に続き、今年3度目の出会いです。足元には誰かが供えた花束がありました。

 

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少女が老いた姿である地面の影は、元「慰安婦」のハルモニたちの苦痛に満ちた人生を意味します。その影の心臓の位置にある白い蝶は、亡くなったハルモニたちの「転生」を意味するものです。

 

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釜山の像と同じく、その両サイドの地面には碑が埋め込まれています。向かって左側は「살구꽃 봉오리」(アンズの花のつぼみ)と題された詩が。右側は「平和の少女像」の意匠の持つ意味を解説したもので、釜山にあったものと同内容と思われます。

 

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像の隣には、付箋紙によるメッセージが無数に貼り付けられた木の造形物が。

 

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少女像は今日も静かに椅子にたたずみ、対面した相手の心をも射抜くようなその眼差しで、過去の戦時性奴隷制度と戦時性暴力被害の忘却を期する人々、そしてそれを看過する人々を見つめ続けています。

平和の少女像(평화의 소녀상:大邱広域市 中区 東城路2キル 80 (文化洞 20-1) 2.28記念中央公園)

 

在釜山日本総領事館の裏(前ではない)にある「平和の少女像」、そしてソウルの「戦争と女性人権博物館」については、以下の各エントリーにてそれぞれ紹介しております。こちらもあわせてお読みいただけますと幸いです。

 

それでは、次回のエントリーへ続きます。

 

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