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主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

新安の旅[201712_04] - 奇岩絶壁と人々の生活が共存する丸ごと天然記念物の島「紅島」を山と海から堪能する

 前回のエントリーの続きです。

昨年(2017年)12月の全羅南道(チョルラナムド)新安(シナン)郡などを巡る旅の2日目(2017年12月2日(土))です。 

 

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前泊した黒山島(フクサンド)から高速船(韓国では「快速船」と表記)に乗船して約30分、次の目的地の島が近づいてきました。

 

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そうして到着したのが、黒山島と並ぶ今回の旅もうひとつの目的地、紅島(홍도:ホンド)
紅島は西海海上に浮かぶ、面積6.47平方km、海岸線の長さ約19.7kmの小島で、黒山島と同じく全羅南道新安郡黒山面(フクサンミョン)に属しています。人口は500人弱。写真3枚目の案内図(上が北西)にもあるように真ん中よりやや南寄りがくびれた形をしているため、カイコの繭にたとえられることもあります。木浦港からの直線距離は約109.6km、黒山島からでも約26.2km離れており、黒山島以上の絶海の孤島です。黒山島同様に島全域が「多島海海上国立公園」に属しているほか、後述する奇岩絶壁の数々に加え固有種を含む豊かな生物層を持つことから、1965年には島そのものが天然記念物第170号「紅島天然保護区域」に指定されています。

 

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紅島の名は、砂岩とともにこの島の地質を構成する珪岩が紅褐色を帯びているうえ、日没時になると夕陽で島全体が赤く染まって見えることに由来するとされています。
紅島に人が居住し始めたのは約500年前とされています。その後は中国との交易における中間寄港地となり、向かい風の北西風を避け追い風の東南風を待った場所として「待風島(テプンド)」と呼ばれていました。一方で朝鮮時代中期(16世紀)の『新増東国輿地勝覧』や同後期(19世紀)『燃藜室記述』などでは「紅衣島(ホンイド)」と、また18世紀の『粛宗実録』では「紅魚島(ホンオド)」と表記されています。その後、日帝強占期には「梅嘉島」(メガド。日本語読みは不明)と呼ばれ、光復(日本の敗戦による開放)後には「紅島」となり今日へと至ります。

 

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紅島には大別して2つのマウル(村、集落の意)があります。ひとつは島がくびれた場所に位置する、旅客船ターミナルもある島最大の集落「紅島1区(イルグ)」で、またの名を「テバンミッ(대밭밑)」あるいは「竹項(죽항:チュッカン)」といいます。もうひとつは島の北西にある小さな集落「紅島2区(イーグ)」で、またの名を「ソッキミ(석기미)」あるいは「ソックム(석금)」といいます。
上の画像は、今回訪問した紅島1区の地図です。

 

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紅島沿岸旅客船ターミナル。高速船や遊覧船が発着する埠頭を含む1階部分を自由通路としたピロティ形式の大きな建物です。
まず困ったことに、このターミナルにはコインロッカーがありません。平地が少なく坂道の多いこの島でキャリーバッグを引きずっての観光はちょっと難があります。以前の高興(コフン)郡の旅のような派出所への荷物預けをしようにも、そもそも派出所らしきものが見当たりません。

 

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ターミナル1階の遊覧船チケット売場の方に荷物を預かってもらえないかどうか尋ねたところ、やはりNGとの答えが。ちょうどそのとき、売り場の方の友人と思しき一人の女性が登場。聞くと女性は近くのフェッチッ(刺身店)通りにあるお店のサジャンニム(直訳すると「社長様」。ここでは「店主」の意)だそうで、昼食を条件に荷物を預かってくださるとのこと。まさに渡りに船です。元々刺身は食べるつもりだったので、お願いすることにしました。

 

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身軽になったところで、まずは紅島1区の街に繰り出します。街とは言っても人口500人弱の小さな集落ではありますが、年間20万人以上が訪問し週末には総人口を上回る人々が宿泊するという観光客相手の第3次産業で生計が成り立つこの街は、人口の割には規模が大きく活気もあります。観光産業に大きく依存するのは、この島が岩盤質であるうえ平地面積もごくわずかなため、農産物がほとんど収穫できないという背景もあります。

 

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紅島1区の路地裏。

 

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旅客船ターミナルから島(紅島1区)側に向かって右側の斜面には、丘の上の展望台に向かって伸びる木製デッキの階段が。登ってみることにしました。このデッキの階段は紅島の最高峰であるキッテ峰(깃대봉:368m)山頂へ向かう登山道で、また紅島2区へと向かう唯一の陸路の一部でもあります。

 

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デッキの途中、海抜100mくらいの位置にある展望台から眺めた紅島1区。右(西側。写真1枚目)は紅島海水浴場。中央(2枚目)にある大きな運動場は黒山初等学校紅島分校(初等学校は日本の小学校に相当)の校庭。左(東側。3枚目)には旅客船ターミナルが見えます。
この島もまた、どこを切り取っても絵になります。

 

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デッキのある斜面一帯は紅島固有種の植物「紅島ウォンチュリ」(홍도원추리。学名:Hemerocallis hongdoensis)の群生地であり、7月から8月にかけては黄色い花が一帯を埋め尽くし、その姿はもう美しいことこの上ないそうです。ウォンチュリ(원추리)とは日本でいうワスレグサ(属の植物)のこと。調べてみましたが和名はまだないようです。

 

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先ほど展望台から見えた紅島1区の西岸、紅島海水浴場にも行ってみました。
ここは紅島唯一の海水浴場であり、砂浜ではなくモンドル(몽돌:「小石」の意)が敷き詰められた浜となっているため「モンドル海水浴場」「モンドル海辺」の異名で呼ばれることもあります。

 

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紅島海水浴場周辺には刺身店と思しきいくつかの飲食店舗が。すべて閉まっていましたが、これはただ単にシーズンオフだからのようです。

 

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海水浴場の中央に位置する桟橋から眺めた紅島1区方面。この桟橋からは紅島2区へ向かう渡船が発着しているとのこと。陸路もありますが自動車の通行はできず(そもそも紅島には乗用車がない)、しかも前述したようにキッテ峰越えの険しい山道がおよそ3.5kmも続くため、この渡船が2区へ行く事実上唯一の交通手段となっています。

 

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再び紅島1区の街へ。
その中で気になったのが写真の店舗。看板には「紅島マッコリ・ホンハッパジョン」とあります。ホンハッパジョンとはホンハッ(ムール貝)とパ(ネギ)入りのジョン(日本でいうチヂミ)のこと。
注目すべきは窓に並べられたドリンク類の缶やボトルのうち左端。手書きで「홍도막걸리(紅島マッコリ)」と書かれた謎のボトルが。他がすべて市販のラベルそのままなのに対し、これだけが唯一手書きという。しかもなんだか味わいのある字体です。「家醸酒(가양주:カヤンジュ)」などと呼ばれる自家製のマッコリなのでしょうか。興味津々です。店自体は営業中のようですが、この日はたまたま閉まっていたのが悔やまれます。
ちなみに窓の右下に大書きされた「멀미약」とは「モルミ薬(ヤク)」といい、乗り物酔いの薬のことです。旅客船ターミナルそばの売店でもあちこちで見かけました。本土からだと2時間10分の船旅でしかたどり着けない離島ならではの風景です。

 

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紅島1区の街並み。建物の屋根が赤褐色で、また水タンクが青色で統一されています。「Daum地図」の2012年時点の航空写真ではグレーのスレート屋根や緑色の防水ウレタン塗装の屋根が多くみられるのに対し、近年になって街づくりの一環から「紅島」のイメージカラーを含む色に統一したようです。

 

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そうしているうちに、もうひとつの楽しみである遊覧船の出発時刻が迫ってまいりました。
この遊覧船、紅島を構成する無数の奇岩絶壁の中でも選りすぐりというべき10の風景「紅島十景」をはじめとする「紅島33秘景」を船上から巡るという、まさしく紅島観光のクライマックス的存在です。

 

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「紅島十景」をはじめとする「紅島33秘景」(一部除く)を紅島全図にプロットしたもの。以下、本エントリーではこの地図を「上図」と呼びます。

 

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遊覧船は午後0時30分に旅客船ターミナルを出航。
韓国での遊覧船の旅は初めて。なんだかワクワクします。

 

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道僧岩(도승바위:トスンバウィ。バウィとは「岩」の意。上図①)。
紅島33秘景の中で最初に訪れたこちらの屹立する岩は、合掌した僧侶の姿をそのまま岩に打ち込んだようだとしてその名が付けられたそうです。
この道僧岩には、ひとつの悲しい伝説が込められています。
遠い昔、ある一人の心優しい漁師がいました。身寄りのない漁師にとって唯一の家族は1頭の飼い犬であり、それはもう我が子のごとく愛情を注いでいました。そんなある日、その漁師は漁の途中で嵐に遭い、帰らぬ人となります。主人の遭難を知らないその犬は何も口にせずに毎日浜に出て、主人を呼ぶかのように地平線へ向かって声がかすれるまで吠え続け、ついに力尽きてしまいます。折りしもその場所を通りがかった道僧が、主人を待ちわびたあげく哀れに死んでいった犬の魂を祈るために石で仏像を造り、それがこの道僧岩になったというものです。いまでも嵐の日には、主人を呼ぶ犬の鳴き声が聞こえるとか。

 

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南門(남문:ナンムン。上図①)。
紅島の南側に位置し、大きな穴の開いたその姿がまさしく紅島の「南門」のようだとしたその名が付いたこちらの岩は、韓国のテレビ局で一日の始まりと終わりに流れる国歌「愛国歌(エグッカ)」でかつて冒頭部の背景写真に用いられていたことから、紅島の数ある奇岩の中でも抜群の知名度を誇り、紅島十景でも筆頭の第1景に挙げられています。その穴は小型船舶が通過できるほど大きなもので、ここを通った人は無病息災に加え願いが成就し幸運を得られるといい、また漁船がここを通り過ぎれば豊漁が約束されるという言い伝えがあるとのことです。 

 

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道僧岩と南門が一望できるこのポイントは絶好の撮影スポットであり、遊覧船もしばらく留まります。この前日、黒山島のタクシー一周観光でご一緒した夫婦らしき男女も乗船しており、お互いに記念写真を撮りまくっていました。
余談ですが、こちらの男女や私を含め、前夜に「黒山ビーチホテル」に宿泊した3グループ10名全員が同じ高速船で紅島を訪れ、同じ遊覧船に乗船していたという。みんな考えることは同じです。

 

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たまたま撮影したこちらの洞窟は紅島33秘景ではないですが、他の方のブログで指摘されているのを見て、天井から木が逆さに生えていることを知りました。そのために「妖術洞窟」(요술동굴:ヨスルトングル。上図②)と呼ばれているそうです。

 

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こちらの海蝕洞窟も紅島33秘景ではありませんが、「鳳凰鳥洞窟」(봉황새동굴:ポンファンセトングル。上図③)と呼ばれています。

 

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シルグムニ窟(실금리굴:シルグムニグル。上図④)。
紅島十景のうち第2景に挙げられるこちらの海蝕洞窟は、かつてのこの島に流刑されたあるソンビ※が、雨風を避けられるのみならず目前には大海が広がり、そのうえ周囲には美しい草花が咲き誇るという広い洞窟を見つけ、一生涯ここで伽耶琴(カヤグム)を弾いて余生を楽しんだという言い伝えがあります。内部は200人以上が休憩できるほど広いそうで、実際に伽耶琴を奏でたならば美しい旋律が鳴り響いたことでしょう。名称の「シルグムニ」の意味はどうしても分かりませんでした(グムは「琴」を指すと思うのですが)
※ソンビ(선비):朝鮮時代に両班(ヤンバン)の血を引いた人で、学識が高く礼儀正しくて義理と原則を重んじる清廉かつ高潔な人物の総称

  

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刃岩(칼바위:カルバウィ。上図⑤)。
紅島33秘景のひとつ、写真中央やや左のまるで刃物のように尖ったこちらの岩は、あらゆる災厄と悪鬼から紅島を守るために島の守り神が立てたという言い伝えがあるそうです。別の角度から見ると「サントゥ」(상투:かつて朝鮮の既婚男性が結い上げた髷)に似ているとして「サントゥ岩」という名前で呼ばれることもあります。

 

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虹岩(무지개바위:ムジゲバウィ。上図⑥)。
紅島33秘景のひとつ。西海(黄海)の水平線を夕焼けが染めるときに五色の光がこの岩を照らすと、まるで天女が虹に乗ってきたようだとしてこの名がついたとされています。特に雨が降った翌日はより一層美しいとのこと。五色の光には新婚旅行を無事なものとする力があるとされ、さらに岩が五色の光に染まったときに祈ると百年偕老に加え子を授かるという伝説から、新婚旅行のカップルたちに人気の場所だそうです。

 

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こちらは紅島33秘景ではなく、また当日は気が付きませんでしたが、その形から北韓地図岩(북한지도바위:プッカンチドバウィ)と呼ばれているとのこと。北韓とは朝鮮民主主義人民共和国のこと。言われてみれば確かに似ています。

 

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燕岩(제비바위:チェビバウィ。上図⑥)。
紅島33秘景のひとつで、春になるとツバメが最初にこの岩に集まることから名付けられたといいます。写真の角度からだとそうでもないですが、少し違う角度から見ると岩そのものもツバメによく似ています。灯台がなかった時代には漁師たちにとって航路の標識代わりとなったとのこと。

 

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柱岩(기둥바위:キドゥンバウィ。上図⑦)。
紅島33秘景のひとつで、ギリシャ神殿の柱を彷彿とさせるこちらの岩は、紅島全体を支える柱だという言い伝えがあるそうです。柱状の岩の間の海蝕洞窟にはこの島の主の大蛇が住んでおり、むやみに入ってはならないとされています。

 

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蒸し餅岩(시루떡바위:シルトックバウィ。上図⑧)と、その沖合の酒煎子(ヤカン)岩(주전자바위 :チュションジャバウィ。上図⑨)。
ともに紅島33秘景のひとつで、蒸し餅岩はその形がシルトック(小豆と餅が層をなして重なり合う蒸し餅)を上に乗せたようだとして、また酒煎子岩はその形がヤカンそっくりだとして名付けられたものです。遠い昔に竜王が臣下たちのために山海の珍味を集め宴を開いたところ、そのとき用意したお酒入りの酒煎子と蒸し餅が石化してこれらの岩になった、という伝説があるそうです。

 

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先ほど訪問した紅島海水浴場の沖を通過します。

 

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大門岩(대문바위:テムンバウィ。上図⑩)。
紅島33秘景のひとつ。大門とは韓屋(ハノク)などの路地に面した門を指します。2つの岩の裂け目であるこの場所は、かつて清(中国)との貿易船が嵐に遭遇したときの避難場所だったそうで、不思議なことに船がここに入った後には嘘のように風がおさまり、次の日は無事に航行できたという言い伝えがあるそうです。

 

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こちらは先の大門岩の写真の左側を拡大したもの。中央、2つの岩が寄り添うように建つその形から「キス岩」(키스바위:キスバウィ)と呼ばれているそうです。

 

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万物相(만물상:マンムルサン。上図⑪)。
紅島十景のうち第5景に挙げられるこちらの岩壁は複雑な形をしており、見る人によって、さらには光の具合によって全く異なる形に見えることからこの名が付いたとされています。かつてこの岩一体は凶悪な海賊たちの根城であり、ある道士が彼らを改心させようと幾万もの風物を作ったところ、それを見た海賊たちは善良な人になったという伝説から、この万物相にはすべての悪を善良な心に変える不思議な力があるとされています。

 

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石花窟(석화굴:ソッカグル。上図⑫)。
紅島十景のうち第3景に挙げられるこちらの天然洞窟は、夕陽に照らされると洞窟内が五色絢欄に輝き、東洋最高の日没が見られるとされる場所です。日没時に遠くの漁船からこの洞窟を眺めると、その内部で太陽の光が反射する様子がまるで桃源郷の入口のようだという話から、コッ(꽃:花)洞窟という別名も持っています。

  

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紅島2区(ソッキミマウル)の全景。
紅島1区よりはずっと小さな街です。とはいえそこには人々の暮らしがあります。いつかこちらも訪問してみたいですね。

 

f:id:gashin_shoutan:20180913221441j:plain紅島2区近くの丘の上には、日帝強占期の1931年に建てられ今日も現役の「紅島灯台」(홍도등대:ホンドトゥンデ。上図⑬)があります。

 

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遊覧船は紅島2区からさらに北へ進みます。

 

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独立門岩(독립문바위:トンニンムンバウィ。上図⑭)
紅島十景のうち第8景に挙げられるこちらの岩は、その形がソウルにある独立門とそっくりであることから、1919年の「3.1運動」以降は専ら「独立門岩」と呼ばれているとのことです。紅島の北西部に位置し、また先ほど紹介した南門と対になる存在でもあることから「北門」(북문:プンムン)とも呼ばれています。

 

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こちらはソウル・西大門区(ソデムング)にある本物の「独立門」(史跡第32号)。角張った感じなど確かに似ています。なお独立門については本ブログのこちらのエントリーにて詳しく紹介しています。

 

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紅島の北端部を回り、東海岸側へ。

 

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悲しい岩礁(슬픈여:スルプニョ。上図⑮)。
紅島十景のうち第6景に挙げられるこちらの岩礁にもまた、悲しい言い伝えが残されています。
遠い昔、ある心優しい夫婦が7人の子どもと一緒に幸せに暮らしていました。ある年の名節旧正月と秋夕の総称)、祭祀の供物と子どもたちの新しい服を買うため本土へ出て行きます。昔のことですので、本土への往復だけでも何日がかりもの旅です。両親の帰りが待ち遠しい7人の子どもは山に登っては水平線を眺め、船が来るのを待っていました。そんなある日、ついに両親の乗った帆船が姿を現します。喜びに沸き立っていたところ、あろうことか突風により船は大波にさらわれ転覆してしまいます。これを見た7人は両親の名を叫びながら荒れる海に歩み入り、そのまま固まってしまったのがこれらの岩礁だというものです。いまでも岩礁が荒波をかぶると7人の哀れな魂が両親の名を呼んでいるようだとして、悲しい岩礁または「七人きょうだい岩」(일곱남매바위:イルゴンナンメバウィ)と呼ばれています。 

 

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遊覧船がこの「悲しい岩礁」近くに停船していたところ、突如1隻の漁船(先の写真の1枚目の奥に写っていた船)が衝突しそうな勢いで接近してきました。危ないなと思ったらその船は遊覧船に横付けし、甲板で活魚をさばいてその刺身とソジュを乗船客に売り始めます。聞くとこの海域名産のウロク(우럭:クロソイ)の刺身だとのこと。3万ウォン(約3,100円:当時)と結構高めですが、どうやら遊覧船の名物のようで、これがまた飛ぶように売れるのです。

 

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高めの値段とはいえ、こんな機会そうそうないので買ってみました(船上だったのでソジュは遠慮)。下ろしたてのウロク、身がぷりぷりしてうんまかったです。酢コチュジャンとカンジャン(韓国醤油)、ワサビの薬味セットもしっかり付いてきます。

 

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ホンオ(洪魚)窟(홍어굴:ホンオグル。上図⑯)。
紅島33秘景のひとつであるこちらの海蝕洞窟は、5トン級の小型船舶であれば10隻あまりも入れるほど広いそうで、かつて近海特産のホンオ(홍어:ガンギエイ)漁の船が強い北西の風に遭ったとき中に入って待避したことからこの名がついたそうです。

 

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ノジョク山(노적선:ノジョクサン。上図⑰)。
無人灯台が建つこちらの小島もまた紅島33秘景のひとつであり、遊覧船が巡る最後のスポットです。

 

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紅島遊覧船は1日2便(午前7時30分発・午後0時30分発)、所要時間は約2時間。午後の便であれば、木浦(モッポ)沿岸旅客船ターミナルを朝一番に発つ高速船(今回私が黒山島から乗った便)で訪問し、紅島発の木浦行き最終便(後述します)で帰る日帰りの旅でも十分利用できます。料金は大人25,000ウォン(約2,500円)。乗船に際してはパスポートなどの身分証明書の提示が必要です。紅島訪問に際しては強くご利用をおすすめするアクティビティです。

 

f:id:gashin_shoutan:20180913222143j:plain午後3時40分に紅島を発つ木浦行き高速船の最終便まではまだ時間があります。荷物回収とあわせて、サジャンニムと約束していた昼食をとることにします。

 

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旅客船が停泊する旅客船ターミナル下の埠頭と別の埠頭とを結ぶ通路には複数のフェッチッ(刺身店)が並び、観光客のお腹を満たすべく近海の海の幸を用意しています。

 

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こちらが荷物をお願いしたフェッチッ。他のお店と同じく店頭に並ぶ生け簀の中に、クンソ(군소:アメフラシ)さんの姿があることを見逃していませんでした。
前回の釜山の旅の際に影島(ヨンド)の蓬莱市場(ポンネシジャン)で干物が売られていたのを見て以来、ずっと気になっていたクンソ。それからわずか2週間ほどで巡って来た、しかも活き物を口にできるチャンスです。貝の刺身盛り合わせと一緒に注文。

 

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サジャンニムにより手際よく捌かれるクンソ。

 

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そしてやって来たクンソ。刺し盛りのアワビやナマコとは異なり、こちらは生ではなく茹でるのでかなり縮みます。人生初アメフラシ、身に予想外のうまみがあってうんまかったです。調べたところ、クンソはその身のつぶつぶの模様が黄金色に近いほどおいしいとか。くっきりとした黄金色の模様のある今回のクンソさんは大当たりだったのかもしれません。もちろん刺し盛りもおいしかったです。

この後、高速船に乗ろうと旅客船ターミナルへ向かっていたところ、不意に私を呼び止める声が。振り返ってみると、その主は私と同様にこの前日の黒山ビーチホテルに宿泊した7人の壮年男女のグループ。中には遊覧船上で少し会話した男性の姿も。遊覧船を楽しんだ後、別の刺身店で盛り上がっていたようです。勧められるままにソジュやチョゲタン(貝鍋)のおすそわけを頂戴しました。こういうノリは大好きです。ある方の「日本の人だからソジュよりビールがいいでしょ」という言葉がとても印象に残っています。バレバレですね……

 

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そして午後3時40分発の高速船に乗り、紅島を後にします。
天然記念物の島、紅島。奇岩絶壁と人々の暮らしが共存する島。さらば紅島、また来る日まで。

 

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南海高速(ナメコソク)の高速船「南海スター」。この前日に黒山島への往路に乗船した東洋高速(トンヤンコソク)フェリーの船とは異なり、こちらの窓は無色透明でした。
高速船の船内では、前日の黒山島一周観光で、またこの日の遊覧船でもご一緒した夫婦らしきお二人とまたまた再会。お二人はこの夜は木浦に泊るそうで、木浦でのお食事に誘われますが、私はこの日のうちにソウルへ戻る予定があったので惜しくも断念。お二人にはいろいろとお世話になりました。本当にありがとうございました。

 

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高速船は定刻通りに木浦沿岸旅客船ターミナルに到着。タクシーで木浦駅へ移動し、午後6時40分発のKTXに乗車、ソウルへと戻ります。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

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