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主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

ソウルの旅[201712_05] - 鍾路3街の夜はまたあの幸福な酒場で、そして伝統のプゴクッにソウル式チュタン

下記エントリーの続きです。

昨年(2017年)12月の全羅南道(チョルラナムド)新安(シナン)郡などを巡る旅の2日目(2017年12月2日(土))です。

木浦(モッポ)駅から乗車したKTXで、終点の龍山(ヨンサン)駅に到着。木浦での接続がよかったので、直前の訪問地である全羅南道新安(シナン)郡の紅島(ホンド)を出てから5時間37分でここまで来ることができました。この日の朝まで滞在した同郡の黒山島(フクサンド)からだと5時間07分の計算。そう考えると紅島も黒山島も決して遠い場所ではありません。

 

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そしてこの日の宿は、また大好きなこの街、鍾路3街(チョンノサムガ)で。

 

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ホテルに荷物を置いて、鍾路3街の街に繰り出します。写真はその街中にあった酒場、その名も「黒山島」という屋号のお店。看板には黒山島が名産地として知られるホンオ(ガンギエイ)専門とあります。この日の朝まで滞在していた島の名を屋号にする店との不意の出会い。感慨深いです。

 

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そしてこの夜訪問したのは、首都圏電鉄(地下鉄)5号線「鍾路3街」駅6番出口のすぐそばにある「ヘンボッカンチッ」。地方の名だたるマッコリを良心的な値段で味わえるソウルでも稀有(たぶん)の存在のお店です。しかも料理がまた絶品だという。『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』など鄭銀淑(チョン・ウンスク)さんの著書でその存在を知って以来、この年(2017年)だけで実に3度目となる訪問です。

 

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今回もまずは大好きな「ソンミョンソプマッコリ」から。
以前にも度々紹介したことのあるこちらのマッコリは、全羅北道(チョルラブット)井邑(チョンウプ)市の泰仁(テイン)醸造所で生産しているもので、農林水産食品部(日本の「農林水産省」に相当)の伝統食品名人第48号であり、全羅北道無形文化財第6-3号に指定されたソン・ミョンソプ(송명섭)名人自ら醸したお酒です。
一般的なマッコリとは異なり、甘みが全くないソンミョンソプマッコリ。私も初めて飲んだときはびっくりしました。「大人のマッコリ」というフレーズが口をついて出そうになりますが、そもそもマッコリが大人の飲み物でした……

 

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ヘンボッカンチッでは、パンチャン(サービスのおかず)にホンハッタン(홍합탕:ムール貝のスープ)が付いてきます。これがまたうんまいのですよ。

 

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料理はこれまた大好きなセコマク(새꼬막:サルボウガイ。メニュー表では「コマク(꼬막)」と表記)。

 

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続いて、マッコリとの相性抜群のジョン(日本でいうチヂミ)の盛り合わせである「モドゥムジョン(모듬전)」。またまたうんまいです。お酒は釜山・金井区(クムジョング)の名物であり、韓国で認定された民俗酒の第1号である「金井山城(クムジョンサンソン)マッコリ」。他に類を見ない濃厚な味が大好きで、釜山訪問の度に買って帰るほどだったりするこのマッコリ、わずか2週間という賞味期限(一般的な生マッコリは約1ヵ月)からも分かるようにデリケートな商品で、冬に保冷剤とあわせて持ち帰っても発酵が進み酸味が増してしまいます。こちらのお店は、発酵が進む前の出来たてに近い味が楽しめる点もまた高ポイントです。

うんまいお酒にうんまい料理。「幸福な店」という意味の屋号に違わず幸せの度合いが高まります。

こちらのお店「ヘンボッカンチッ」は、首都圏電鉄(ソウル地下鉄)5号線「鍾路3街」駅6番出口から徒歩わずか1分(約70m)。月~木は午前0時まで、金土は午前4時まで。日曜日店休。これからもひいきにしたいお店です。

ヘンボッカンチッ(행복한집:ソウル特別市 鍾路区 敦化門路11キル 20 (通義洞 44))

 

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そしてこの日の締めはヘンボッカンチッからも近い「クテグチッ」の水冷麺(ムルレンミョン)。ソウル市内に点在する創業数十年クラスの名店ではありませんが、閉店の早いこれら名店とは異なり安心の24時間営業、しかもそこそこおいしいという。私にとって鍾路3街でのホンスル(「一人飲み」の意)の締めとしてすっかり定着してしまいました。

クテグチッ(그때그집:ソウル特別市 鍾路区 水標路 123 (楽園洞 227))

 

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毎晩がお祭りのような鍾路3街の夜は更けてゆきます。

 

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明けて旅の3日目、2017年12月3日(日)。
この日の朝食は、ソウル特別市庁(市役所)の裏手にある「武橋洞(ムギョドン)プゴクッチッ」へ。
1968年創業、プゴクッ(북어국:スケトウダラの干物のスープ)の名店として知られるこちらのお店は、ランチタイムになると長蛇の列が形成されるという超人気店で、私が訪れた午前9時半の時点でも30人ほどの行列が。日本のガイドブックや旅行サイトなどでも紹介されており、日本人観光客も大挙して訪れるお店です。それだけ待ってでも食べたい味がこちらのお店にはあります。

 

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やって来たプゴクッ。こちらのお店はプゴクッ一本勝負なので注文せずとも人数分のプゴクッがすぐさま出てきます。
まずはスープから。スケトウダラのダシがしっかり効いていてほうとする味。うんまい。そのままでもおいしいですが、付いてくるアミの塩辛を適度に入れるといい塩梅となります。
しかもこちらのお店、なんとプゴクッのおかわりがOKなのです(2016年時点ですがたぶん現在も変わっていないはず)。

 

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写真はこれまた一緒に付いてくる小鉢なのですが、これをご飯に乗せて一緒に食べると猛烈にうんまいのです。もっと量があったならこれ一品だけでもどんぶリ3杯はいけそう。

 

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こちらのお店「武橋洞プゴクッチッ」の営業時間は午前7時~午後8時(週末は午後4時まで)、日曜定休。首都圏電鉄(ソウルメトロ)1号線「市庁(シチョン)」駅5番出口から徒歩約6分(約370m)で到達できます。同「鐘閣(チョンガク)」駅5番出口からでも徒歩約7分(約460m)。看板メニュー(というより唯一のメニュー)のプゴクッ(メニュー表では「プゴヘジャンクッ」と表記)は訪問当時は7,000ウォンでしたが、2018年11月時点では7,500ウォン(約750円:同時点)。強くおすすめできるお店です。

武橋洞プゴクッチッ(무교동북어국집:ソウル特別市 中区 乙支路1キル 38 (茶洞 173)) 

 

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ソウル特別市庁舎
左側の石造りの建物は日帝強占期の1926年に「京城府庁」として建てられた旧市庁舎で、現在はソウル図書館として使用されており、国家指定登録文化財第52号にも指定されています。
その後方には2012年に竣工した、前衛的デザインの新市庁舎が建っています。この新市庁舎を見る度に、誰かが「日本の建物を津波が襲う姿を模した反日建物だ」などと10秒で思いついたようなレベルのデマを吹聴していたのを思い出します。韓国人への憎悪拡散のためならどんな出まかせでも共感され拡散される日本のネット空間を象徴するエピソードです。こうしたデマを看過することはヘイトへの加担でしかありません。 

 

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続いて訪問したのはソウル冠岳区(カナック)、首都圏電鉄(地下鉄)2号線「ソウル大入口(ソウルデイック)」駅近くにある道路「冠岳路14キル」、通称「シャロスキル」。大通り(冠岳路)から一本入ったこちらの道は、その名の通りソウル大学校冠岳キャンパスの最寄り駅である同駅を利用するソウル大生が立ち寄ることで発展した繁華街です。

 

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「シャロスキル」の名がファッションの街として発展し女性を中心に人気の高い「カロスキル」(가로수길:「街路樹通り」の意)にちなんだものであることは、ソウルを何度か訪問された方であれば容易に想像できることでしょう。では「シャ」とは何かというと、ソウル大学校の紋章(写真1枚目)の中央上部に描かれたマークをモチーフとした、冠岳キャンパスの正門(写真2枚目)に由来しています。
このマークは「国立(국립)」「ソウル(서울)」「大学校(대학교)」のそれぞれ最初に出てくるハングルの字母「ㄱㅅㄷ」を組み合わせたもので、これをデフォルメした正門の形が「샤(シャ)」と発音する字に似ていることから、俗にそう呼ばれているものです。

 

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以前にこちらのエントリーにて、一見して日本の焼き鳥屋としか思えないたたずまいの釜山の居酒屋を紹介しましたが、韓国の繁華街や歓楽街では日本語表記の屋号、中でもひらがなを含むそれの飲食店を実によく見かけます。シャロスキルも例外ではなく、あちらこちらにそうした屋号のお店が。写真は順に「だいじょうぶ」「ひとり」「きよい」「ラーメン男」。なんだか一人ぼっちの寂しさにもめげず潔くラーメンをすする男性の姿を想像してしまいました。
それにしてもこのように日本語表記をある種リスペクトともいえるレベルで多用している社会が、この国の一部の人々に言わせれば「日本が嫌いで嫌いでしょうがない」のだというのですから驚きです。自分自身の悪感情を相手に投影したがるのも大概にしてほしいものです。
 

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こちらのシャロスキル、繁華街とは書きましたがカロスキルに比べるとまだまだ発展途中といった感じで、飲食店が並んではいるものの道の両サイドを埋め尽くすほどではありません。とはいえ近日オープン予定の垂れ幕を掲げた工事中の店がいくつかあり、着実に発展しつつある気配が感じられます。訪問から約1年を経た現時点ではきっと一層の変貌を遂げていることでしょう。そろそろ日本のガイドブックでも大々的に紹介されるかもしれません(すでにあったらすみません)

シャロスキル(샤로수길:ソウル特別市 冠岳区 冠岳路14キル (奉天洞) 一帯)

 

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余談ですが、市庁から片道30分以上もかかるシャロスキルまでわざわざやってきた最大の理由は、実は写真1枚目のお遊びのため。当初は大通り沿いにあったはずの「シャロスキル」入口を示す案内板での撮影を予定していたのですがどうしても見当たらず、これに代わる「シャロ」と明記された物件を探した結果、「シャロストーン」なるどこかで聞いたような名前のステーキ屋さんが写真の背景となってしまいました。
個人的に好きなこちらの作品のキャラクターの名がついた韓国のスポット訪問は、こちらのエントリーにて紹介した仁川広域市の「チヤコゲサムゴリ」以来。たまにこうしたお遊びをしますので、お付き合いいただけますと幸いです。

 

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この日は朝食が午前9時台と少し遅めのスタートとなったうえ、冠岳キャンパス正門の写真を撮った帰りには間違えてソウル大のキャンパス内に入るバスに乗ってしまい、そのうえ広大なキャンパスの奥で運行終了したため下車せざるを得なかったという。加えて次に訪れた某展示施設は日曜なのに予想外の休館日(韓国の展示施設は月曜休館が一般的)だったりと、ちょっとしたトラブルが立て続けに。そんなことをしていたら、あっという間に日が傾いてしまいました。
そうしたトラブル続きの中でも昼食だけはしっかりと。この日訪問したのは乙支路入口(ウルチロイック)駅近くのお店「湧金屋(ヨングモク)」。1932年創業、チュタン(추탕:ドジョウ汁)の老舗です。

 

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チュタンは一般にはチュオタン(추어탕)と呼ばれる料理で、韓国語でチュオ(추어:鰍魚)あるいはミックラジ(미꾸라지)と呼ばれるドジョウをすりつぶしてスープに溶いたものです。韓国では全国的に食されている料理ですが、地域によってその異材は大きく異なります。
主だったものとして、チュオタンの本場として最も知名度の高い全羅北道(チョルラブット)南原(ナムォン)市のそれに代表される「全羅道式」、大邱(テグ)広域市を含む慶尚北道キョンサンブット)地方を中心に食されている「慶尚道式」、そして今回の「ソウル式」があげられ、これらを総称して3大チュオタンと呼ぶこともあります。このほか前述した3種にはないコチュジャンやジャガイモが入るうえ、厨房ではなく卓上で煮立てて供される江原道(カンウォンド)原州(ウォンジュ)市の「原州式」など、さまざまなバリエーションが存在しています。
写真は本年(2018年)3月に訪問した大邱広域市の「尚州食堂(サンジュ・シクタン)」にて食べた、テンジャン(韓国味噌)ベースの辛くないスープに白菜などの葉野菜がどっさり入った慶尚式チュオタン。優しい味でうんまかったです。いずれ改めて紹介したいと思います。

前述したようにチュタンはドジョウをすりつぶしたものが一般的ですが、こちらのお店はドジョウが丸のまま入った「トンチュタン(통추탕)」を選ぶこともできます。私にとっては珍しいので、今回は後者を選択。

 

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そしてやって来たチュタン。テンジャンを使わないソウル式のチュオタンですが、ベースの牛骨に加えドジョウそのものから出たダシがしっかり効いています。うんまい。好みで卓上の山椒(韓国語ではサンチョ(산초))を入れて味を整えます。

 

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こちらのお店では写真の麺が一緒に出てくるので、スープ単体、麺投入、ご飯投入と3度の違った味を楽しむことができます。

 

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店内に掲示されていた先代の店主さん(たぶん)の写真や新聞の紹介記事。先代さんはなんだか映画俳優っぽいですね。

 

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こちらのお店「湧金屋」の営業時間は午前11時~午後8時(週末・公休日は午後8時まで)。首都圏電鉄(ソウルメトロ)2号線「乙支路入口(ウルチロイック)」駅1番出口から徒歩約5分(約390m)です。同1号線「鐘閣(チョンガク)」駅5番出口からだと徒歩約5分(約370m)同「市庁(シチョン)」駅5番出口からでも徒歩約7分(約460m)で到達できます。こう書くとお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、実は先ほど紹介した「武橋洞プゴクッチッ」からたったの100mほどしか離れていません。名物のチュタンは10,000ウォン(約1,000円:2018年11月時点)。ソウル式チュオタンの真髄を味わっていただきたいお店です。

湧金屋(용금옥:ソウル特別市 中区 茶洞キル 24-2 (茶洞 165-1))

 

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地下鉄の駅にあった、映画『1987』の広告。この年(2017年)の12月27日に韓国国内で封切られたもので、この日(12月3日)時点ではまだ公開前でした。その名の通り、1987年に韓国全土で展開された民主化運動「6月民主抗争」をテーマとした作品で。日本では本年(2018年)9月から『1987、ある闘いの真実』というタイトルで公開中です。

 

 この映画については、公開当日に観たその直後の思いを、上のツイートで表現しています。多くの方にご覧いただくことを願っています。
「6月民主抗争」については、本ブログの下記各エントリーで紹介しています。あわせてご一読いただけますと幸いです。

 

それでは、次回のエントリーへ続きます。

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