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春川の旅[201709_02] - 4年連続参加の「春川マッククスタッカルビ祭り」で本場のタッカルビを味わう

前回のエントリーの続きです。

 昨年(2017年)9月の韓国・大田(テジョン)広域市などを巡る旅、明けて2日目(2017年9月2日(土))の朝です。

この日はまず、大田から次の目的地である江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)市ヘバス移動。
当初予定では、この日はまず大田広域市に隣接する忠清北道(チュンチョンブット)沃川(オクチョン)郡のスポットを巡り、それから春川へ移動するつもりでしたが、どうしても行きたいイベントが春川近隣で開催されることを出発間際に知って急きょ予定を変更。沃川の旅は大田再訪とあわせて次回に預けたいと思います。

 

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ホテルのすぐそばにある大田随一のバスターミナル「大田複合ターミナル」。写真は前夜に撮ったものです。

 

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「大田複合ターミナル」の「複合」とは、韓国では明確に区分されている「高速バス」と「市外バス」の兼用ターミナルであることを意味しています。さすが忠清圏最大の都市だけあって、時刻表は無数の便で埋め尽くされています。もちろんコインロッカーも豊富。写真3枚目は出入口のホールにあるものですが、この真向かいにも同じ数のコインロッカーがありました。 

 

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写真2枚目の市外バスに乗って、いざ春川へ。

 

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大田~春川間の市外バスにはノンストップ便もありますが、今回私が乗車したのは、大田広域市に隣接する世宗(セジョン)特別自治市経由の便。
世宗特別自治市とは、盧武鉉(노무현:ノ・ムヒョン、1946-2009)政権時代にソウルからの遷都および中央官庁の移転を目的に建設された新都市で、その名は言うまでもなくハングルを創製した朝鮮の第4代国王、世宗(세종:セジョン、1397-1450)から来ています。いくつかの中央官庁移転は実現しましたが、遷都については憲法違反だとの司法判断がなされたため頓挫、現在へと至ります。2014年には道に属さない特別自治市として発足し、現在の人口は約28万。
市外バスの停留所がある都心部は歴史が浅く観光スポットは少ないですが、中央官庁が入居する全17棟の建物を渡り廊下でつないだ全長約3.5kmもの長大建築物「政府世宗庁舎」(写真)はちょっとしたみどころになっています。

 

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市外バスの旅のお楽しみ、トイレ休憩で立ち寄る高速道路の休憩所(日本のサービスエリアに相当)訪問。今回は忠清北道陰城(ウムソン)郡にある「陰城休憩所」に停車。私が見てきた限りですが、韓国の休憩所は総じてトイレがきれいです。売店の冷凍庫にはコッカム(곶삼:干し柿)が。

 

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およそ3時間のバスの旅を経て、春川市外バスターミナルに到着。春川は今回で5度目の訪問。ソウルと釜山以外では最多の訪問地です。鉄道以外の手段での訪問は今回が初めて。

春川市は江原道の北部に位置する人口約28万の都市で、江原道庁の所在地です。
現在の春川市一帯は、7世紀以前には古代部族国家である貊(맥:メク)国の首都が置かれていましたが、その後新羅に征服され、673年には首若州(スヤクチュ)が設置されます。その後は朔州(サクチュ)、光海州(クァンヘジュ)などを経て高麗時代の940年には春州(チュンジュ)に改称、さらに朝鮮時代初期の1413年には8道制度の実施とあわせて春川郡に改称され、ここで初めて春川の名が登場します。1415年には地方官庁である都護府が設置。
その後朝鮮時代末期の1887年には春川留守(ユス)郡が設置され、3年後の1890年には王族が緊急時に避難するための離宮が現在の江原道庁のある場所に設置されます。1895年の甲午改革により春川留守郡は廃止、新設された23観察府のひとつである春川府春川郡となり、その翌年にはおよそ500年を通じて原州(ウォンジュ)にあった江原監営(江原道の長である観察使が執務するための統治機関)が春川へと移転、江原道の行政の中心地としての地位を確立します。
光復(日本の敗戦による解放)後の1946年には春川郡のうち春川邑が春川府に昇格、1949年には春川市に改称。1995年には春川市と春川郡が合併し、現在へと至っています。

また春川は過去に幾度となく戦乱の舞台となった地域であり、13世紀の契丹と元による相次ぐ侵略、16世紀末の壬辰倭乱豊臣秀吉による2度の朝鮮侵略)、そして朝鮮戦争(1950-1953)において激戦地となっています。春川市は38度線をまたいでおり、光復直後の南北分割統治に際しては市域(当時は春川郡の郡域)が分割されたほど南北分断の現場に近い場所であることから軍部隊が多数設置され、一大軍事拠点としての性格も帯びています。

 

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とはいえ春川といえば、何といってもあの『冬のソナタ』の舞台としてご存じの方が多いことでしょう(写真は2014年3月撮影)。そしてここ最近ブームとなっている料理「チーズタッカルビ」の原型であり、鶏肉や野菜などをスパイシーなソースで炒めた料理「春川タッカルビ」の本場としても知られています。
そして今回私がこの春川にやって来たのも、私の大好物のひとつである春川タッカルビにちなんだあるイベントのためです。

 

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タクシーに乗り、この日の宿である「春川世宗ホテル」へ。立派な門です。ソウル・明洞にある世宗ホテルの系列ということで高そうなイメージがありますが、日本円で5,000円台と安かったのでこちらにしました。それにしてもこの日はなにかと「世宗」に縁があります……

 

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春川世宗ホテルの室内。清潔で広い部屋でした。

 

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ホテル建物は階段がなく、代わりにスロープが設けられていたのが特に印象深いです。

 

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春川世宗ホテルは高台に位置するため、駐車場からは春川の街が見渡せます。

春川世宗ホテル(춘천세종호텔:江原道 春川市 鳳儀山キル 31 (鳳儀洞 15-3))

 

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世宗ホテルから坂を下ったところにある、江原道庁。屋上には道内で開催される平昌(ピョンチャン)冬季五輪のマスコットキャラクター、白虎のスホラン(수호랑)とツキノワグマのバンダビ(반다비)のバルーン人形が。

 

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タクシーでKORAIL春川駅へ移動。やつらが増殖していた……

 

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春川駅前にはイベントスペースとして用いられる広大な空き地があり、そこでちょうど開催中だったのが、今回の春川行きの最大の目的である「春川マッククスタッカルビ祭り」(춘천막국수닭갈비축제)です。
この「春川マッククスタッカルビ祭り」とは、毎年8月下旬から9月上旬にかけて春川駅前の空き地にて開催されるお祭りで、春川を代表する2大名物料理、タッカルビとマッククス(麺にそば粉を練りこんだ冷麺)をメインテーマとするものです。したがって会場にはタッカルビとマッククスをそれぞれ味わえる仮設店舗が出展するほか、タッカルビとマッククスの「100人分試食」などのイベント、またマッククスについては手作り体験コーナーまでも設けられています(写真3枚目のマッククス手作り体験コーナーに限り2016年8月撮影)

 

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私が初めてこのお祭りを訪問したのは2014年。あまりにタッカルビが好きすぎて、とうとうこの回で4年連続での訪問となってしまいました。写真は歴代のメインゲートです。
ちなみこの「春川マッククスタッカルビ祭り」、私が訪れた2017年でちょうど10周年。以前は別々だった祭りを統合して現在へと至ります。そうした経緯もあって、祭りの名称にある「マッククス」と「タッカルビ」の順序は毎年入れ替わります(なので2018年は「春川タッカルビマッククス祭り」となる予定)。

 

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場内に足を踏み入れると、たちまちタッカルビの焼ける香ばしい匂いが鼻腔をくすぐります。前日に大田で食べたパンチチムがようやくお腹の中から消えつつあったので、まずは場内の一角に並ぶタッカルビ仮設店舗へ直行。
例年このお祭りでは、7店前後の春川市内のタッカルビ店が出張店舗を出しており、それらをチェックすること、そして毎年違う店でタッカルビを食べるのが密かな楽しみとなっています。ちなみに今回は全8店。会場奥から順に「サウ珍味タッカルビ」、「明洞コルモクタッカルビ」、「銀杏ナムタッカルビ」、「春川1番地タッカルビ」、「イウォルソン名家タッカルビ」、「ファンソタッカルビ」、「ウミタッカルビ(江南)」、そしてテイクアウト専門の「(社)春川タッカルビ協会」の構成となっていました。

 

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今回はそれらの中から「銀杏(ウネン)ナムタッカルビ」(은행나무닭갈비:銀杏ナムとは「イチョウの木」の意)を選択。お店選びも楽しみのひとつです。
写真はそのメニュー表。価格は場内均一ですがタッカルビのレシピは各店自前のようです。左上2段目には前年(2016年)まではなかった「チーズタッカルビ」(치즈닭갈비)も。日本の前に韓国でもブームがあったようで、その影響でしょうか。ちなみにお祭りのメインスポンサーが韓国の酒類最大手であるハイトジンロなので、場内のタッカルビ店で扱うお酒はすべて「Hite」や「チャミスル」、「イスルトクトク」など同社製品となっています(なので「Kloud」も「Cass」もありません)。

 

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やって来たタッカルビ。店員さんがかいがいしく焼いてくださるのをじっと待ち、「マシッケトゥセヨ」(맛있게 드세요:「召し上がってください」の意)の号令とともにばくり。うんまい。何度食べても飽きのこない味。
タッカルビにはビールが実によく合います。個人的にいちばん合うと思うCassが前述の理由で選べないのは惜しいです(Hiteも決して悪くはないのですが……)
ただ、この時点でまだ前夜の「パンチチム」が若干お腹に残っていたため、いつもなら必ず食べる締めのポックンパ(볶음밥:焼き飯)は断念。「ポックンパを食べるまでがタッカルビ」が持論の私にとっては痛恨のダメージです。とはいえ春川タッカルビは今後も春川を訪れる度に食べてまいりますので、これをバネに次回をより楽しみにしたいと思います。

 

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私にとって仮設店舗でのタッカルビ実食と並ぶこのお祭り最大の楽しみは、毎年恒例の「100人分タッカルビ・マッククス試食」イベント。配布開始前、大量の具材を大きな鉄板で炒めるタッカルビの仕込みを見るのも楽しみです。こんなに食べきれないよ……(冗談です)

 

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そして来場者にふるまわれたタッカルビ。例年は普通サイズの紙コップだったものがこの年から大きめの紙の器に。こちらも以前は辛味の強いものでしたが、この前年(2016年)から適度に辛さを抑えたものとなり一層おいしくなりました。タイトルには「100人分」とありますが実際はもっと多いです。なおタッカルビとマッククスは同時並行でふるまわれるため、マッククスの方には間に合いませんでした(これも3年連続……)

 

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目当ての100人分タッカルビも食べたので、場内を散策することにします。

 

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「江村(カンチョン)レールバイク」(京春線の廃線跡を足漕ぎの乗り物で走るアトラクション)「アニメーション博物館」など春川市内の名所とお祭り会場とを結ぶシャトルバスの時刻表。この回から新設されたようです。

 

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韓国のお祭りでは必ずと言っていいほど見かける、豚の丸焼き装置。こんなに食べきれないよ……(冗談です)

 

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会場内には、メインスポンサーであるハイトジンロのブースも。同社のビール系飲料のラインナップが展示されていました。キリンの「一番搾り」があるのは同社が韓国での販売権を持っているからのようです。

 

 イベントステージでは見事な綱渡りを披露する方も。

 

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「春川マッククスタッカルビ祭り」の会場は大別して、先のハイトジンロなど実行委員会(市)が設置する公式のブーススペースと、これらと隣接する公認(?)の私設店舗スペースに分けられます。写真は後者。飲食店や健康食品、一律1,000ウォンの雑貨などを扱う店が多数出展しています。このような形態は他のお祭りでもよく見られます。

 

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同じ江原道の束草(ソクチョ)の名物であるオジンオイカ)スンデ(오징어순대)を扱う店も。食べたいところですが夕食のことを考えてじっと我慢。

 

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祭り会場である春川駅前の広大な空き地は、実は2005年に廃止された米軍基地「キャンプ・ペイジ」の跡地であり、当時の給水塔だけがその面影を残しています。写真2枚目は2014年9月に撮影したもので、まだタンクに「CAMP PAGE」の文字がうっすらと残っていました。写真3枚目は給水塔の基部。3年前にコスモス畑だった一帯には水遊び場が開業し、かつての給水塔はウォータースライダーとして生まれ変わっていました。

 

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春川へのアクセスは、ソウルからであれば龍山(ヨンサン)駅を出て清凉里(チョンニャンニ)駅を経て春川駅へ行く列車「itx-青春(チョンチュン)」(写真)がおすすめです。龍山駅からは約1時間20分弱、清凉里駅からは約1時間。料金は龍山からでもなんと7,300ウォン(約770円:2018年2月現在)というリーズナブルさ。ただしこうした低価格ということもあり、土日などは途中の加平(カピョン)駅で下車する登山客などで埋まってしまい当日券はほぼ完売状態ですので、スケジュールが決まっている方はこちらのKORAIL日本語サイト(左上「乗車券」をクリック)で予約されることをおすすめします。予約後に表示されるQRコード付きの乗車券をプリントアウトしておけば現地でチケットを発行する必要もありません。
なお「itx-青春」といえば8両編成中の4-5両目にある韓国唯一の2階建て車両(写真2-3枚目)が名物ですが、先の日本語サイトでは車両を指定した予約はできません。韓国のKORAILの駅の端末では2階席を指定した予約ができるものの、先の理由から当日の予約が困難であるため、2階席狙いだと賭けみたいになってしまうことが悩ましいです……。

大好きな春川タッカルビの本場である春川、そして年に一度の祭典である「春川マッククスタッカルビ祭り」。一人でも多くの方が訪問していただくことを願っています。

春川マッククスタッカルビ祭り(会場)(춘천막국수닭갈비축제 (회장):江原道 春川市 槿花洞 187-2 一帯)

 

それでは、次回のエントリーヘ続きます。

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