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春川の旅[201709_04] - 400年前の孝行息子の伝説を記憶する壁画マウル、そして春川タッカルビの名店を一挙紹介

前回のエントリーの続きです。 

昨年(2017年)9月の韓国・江原道(カンウォンド)春川(チュンチュン)市などを巡る旅、明けて3日目(2017年9月3日(日))の朝です。

ホテルをチェックアウトして最初に向かったのは、KORAIL「南春川」(ナムチュンチョン)駅から徒歩約9分(約600m)の距離にある「春川市外バスターミナル」。「itx-青春(チョンチュン)」も停車する春川市内の2大鉄道駅、春川駅・南春川駅のいずれにもないコインロッカーに荷物を預けるためです。

 

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写真は春川市外バスターミナルにあるコインロッカー。キャリーバッグも入る大型サイズもあります。ただしこちらのコインロッカーは1,000ウォン札限定で、しかも周囲に両替機がないため、前もって同ターミナル内のコンビニで買い物をするなどして1,000ウォン札を用意しておく必要があります。

 

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春川市外バスターミナルの待合室の隣にある売店。何故かミリタリーグッズに特化しており、迷彩模様のバッグや軍の戦闘服とみられる衣服などが所狭しと陳列されています。その名も「軍人百貨店」(군인백화점)。日本の感覚だとバスターミナルの売店とは思えない品揃えですが、以前にも紹介したようにここ春川は南北分断の現場に近いこともあって韓国軍の一大拠点となっており、市外バスを利用する軍関係者の需要があるのでしょう。

 

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春川市外バスターミナルの前を走る大通り「春川路」(춘천로)沿いに北東へ向かいます。写真は春川市中心部を貫流する「孔之川」(コンジチョン)にかかる「孔之橋」から見た風景。

 

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春川市外バスターミナルから春川路沿いに北東へ向かって約19分(約1.38km)ほど歩き、出てくる「孝子上(ヒョジャサン)ギル」(写真1枚目)を右に折れて2分ほど歩くと、写真2枚目のような場所に到着します。
ここから始まる孝子洞(ヒョジャドン)の一帯は、通称「孝子マウル浪漫(ナンマン)コルモク」と呼ばれる壁画マウル(マウルは村、集落の意)と呼ばれ、道路や路地沿いの家の外壁や塀が壁画で彩られています。

 

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孝子マウル浪漫コルモクにある壁画の数々。個人的に大好きな壁画マウルです。

 

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こちらも孝子マウル浪漫コルモクにある壁画の数々。

 

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孝子マウル浪漫コルモク、スマーフ様と綱引きをする子どもたちの壁画。坂道の手すりを綱引きの綱に見立てた秀逸な作品です。女の子のセリフ「도와주세요~」とは「手伝って~」の意。

 

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この前日に訪れた「昭陽江処女像」の壁画もありました。それも私の好きな、衣岩湖の夕陽を背にした絵です。写真2枚目は前回も紹介した「昭陽江処女像」の実写。再現度高いです。

 

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地名にもなっている「孝子」とは「親孝行の子」の意で、韓国ではここ春川市孝子洞やソウル・鍾路区(チョンノグ)の孝子洞などあちこちに「孝子」の名の付いた地名があります。そして当地の孝子洞には、その名にちなんだ一人の孝行息子の伝説が語り継がれるとともに、その息子が母をおぶった姿の「孝子像」が建てられています。

 

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1554年生まれの男性、潘希彦(반희언:パン・ヒオン)。壬辰倭乱豊臣秀吉による2度の朝鮮侵略)で戦死した父の侍墓(シミョ:父母の墓のそばに小屋を建てて暮らすこと)から3年ぶりに実家へ帰ってきたら、年老いた母の病状が悪化していました。看病しても快方に向かわず途方に暮れていたある日、希彦の前に山の神が現れ、「大龍山(テリョンサン)へ行けば3人の死体がある。そのうち真ん中の死体の首を持ち帰り、それを煮込んで母に与えれば病気は治るであろう」と告げます。
そこで希彦が大龍山へ行くと、確かに3人の死体がありました。恐怖を感じながらも山の神に言われたままに行動したところ、母の病気はたちまち快癒。そして死体の首を煮込んだはずの釜の中を覗くと、そこにあったのは首ではなく高麗人参だった、というものです。

この物語には続きがあります。
その後、ある冬のこと。94歳になった母がどうしても季節外れの苺を食べたいというので、希彦は再び大龍山へ。山中をさまよった未にようやく苺を手に入れたものの、その帰り道には大吹雪に遭遇。疲労困憊し精魂尽き果てた希彦の目の前に、今度は虎が現れます。万事休すかと思いきや、その虎は希彦を背中に乗せるや矢のように走り、家まで送り届けると姿を消したというものです。
母はその後95歳で亡くなり、希彦は父のときと同じように3年間の侍墓についたといいます。
そして1608年、当時の王であった宣祖(선조:ソンジョ、1552-1608。第14代朝鮮国王)はこうした希彦の孝行を称え、「孝子門」を建立しました。この孝子門があった一帯が、その後「孝子洞」と呼ばれるようになったと伝えられています。

 

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孝子門は残っていませんが、孝子マウル浪漫コルモクの一角には希彦が母をおぶった姿の「孝子像」(先ほど紹介した写真)が建てられおり、像のそばには物語のあらすじを刻んだ石碑も。

 

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この「孝子マウル浪漫コルモク」へは、前述したようにKORAIL「南春川」駅からだと徒歩で約20分(約1.32km)ほどで到達できます。タクシーでもワンメーターの2,800ウォン(約280円)程度(2018年2月現在)。 

孝子マウル浪漫コルモク(효자마을낭만골목:江原道 春川市 孝子洞 541-6。左記住所およびリンク先は入口付近)

 

孝子マウル浪漫コルモクからはタクシーで南春川駅へ移動、次の目的地へと向かうのでした。

 

構成の都合上、今回のエントリーにおける2017年9月の春川市の旅レポはここで終わりとなりますが(次回エントリーへ続きます)、せっかくの春川市の旅レポですので、ここで私がこよなく愛する春川タッカルビ、そして過去に訪問した春川市内のタッカルビ店について紹介したいと思います。

 

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前回のエントリーでも紹介したように、春川タッカルビとは1960年代初頭、春川のとある飲食店が豚カルビ代わりの酒のおつまみとして、ヤンニョムに漬けた鶏肉の炭火焼きを出したものが始まりとされ、これこそが春川タッカルビの元祖と言われています。その後、1970年代には現在の主流である大きな鉄板で野菜など一緒に炒めるスタイルのものが登場、現在へと至ります。
タッカルビの命というべきヤンニョムソースは店によって異なり、意外と店ごとに個性があります。異材もまた店によって若干異なりますが、ほぼ共通しているのは主役の鶏肉(主にモモ肉)のほかキャベツと長ネギ、トック(떡:うるち米の餅)、そしてサツマイモ。店によってはこれにタマネギ、ケンニッ(깻입:エゴマの葉)などが入ったり入らなかったりします。

 

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一般にタッカルビ店のメニュー表には「1人分」の値段が書かれていますが、基本的にどの店も2人分以上でないと注文を受けてもらえません。値段は安い(2人分でも日本円で2,000円程度)割に量がそれなりにあるので、自信がない場合には残した分の「ポジャン」(포장:包装。ここでは「テイクアウト」の意)の可否を前もって尋ねてみるとよいでしょう。

 

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鉄板で炒めるタイプのタッカルビ店ではほぼ例外なく、お店の方がたまにテーブルを訪れては、火が通るまで具材をかき回してくださいます。「マシッケトゥセヨ」(맛있게 드세요:「召し上がってください」の意)の言葉が食べ始めの合図。そのまま食べても、付け合わせのサンチュなどでくるんでもおいしく召し上がれます。

 

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具材を粗方食べた後には締めとして、残ったヤンニョムソースに刻み海苔やごま油などを加えたご飯を混ぜて炒め、ポックンパ(볶음밥:焼き飯)にして食べることが一般的です。ウドンなとのサリ(사리:麺の総称)を混ぜて食べることもあり、こちらは締めだけでなく最初から混ぜて食べることもあります。また最近はチーズのトッピングを用意し、日本でもブーム真っただ中のチーズタッカルビを味わえる店も増えてきたようです。

春川市だけでおよそ400店以上あるというタッカルビ店は市内の随所に点在しており、中でも中心街の朝陽洞(チョヤンドン)にある「春川明洞タッカルビコルモク」は観光地としても広く知られています。またこれ以外にも同じく中心街の楽園洞(ナグォンドン)、市街地東部の後坪洞(フピョンドン)、市外バスターミナルの南側にある温衣洞(オニドン)、そして市の北東の郊外にある新北邑(シンブグッ)泉田里(チョンジョルリ)の通称「ウィッセムバッ」(윗샘밭:「上泉田」を固有語にしたもの)などの各地域が、タッカルビ店の集まる「タッカルビコルモク」(닭갈비 골목:コルモクとは「路地、横丁」の意)として知られています。

 

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なお、過去に本ブログにて何度か紹介したことのある「太白(テベク)タッカルビ」は、同じ江原道でも遠く離れた南部に位置するかつての産炭地、太白市(当時は三陟(サムチョク)郡)において1960年代に発生、独自に発達したスープベースの料理であり、春川タッカルビとは直接的な関係はありません(こちらも大好きな料理ですが)。

それでは、私が過去に訪問した春川市内のタッカルビ店とその特徴、市内の3大ターミナル「春川駅」「南春川駅」「春川市外バスターミナル」(以下「市外BT」と表記)からのアクセスを紹介してまいります。

 

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「1.5(イルジョモー)タッカルビ」。
2014年9月訪問。1989年創業、あるブログ記事によると、店名の「1.5」とは「1.5倍の満足度を差し上げるという意味」だとか。90年代、カレー粉を混ぜたヤンニョムソースでタッカルビ界に革命を起こした店として知られています。現在も人気店のひとつであり、3年半前の訪問当日も入店までしばらく待たされました。辛さ控えめで、いままで食べてきたタッカルビの中ではたぶん最も日本人向けの味だと思います。
タッカルビは1人分(300g)11,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午後11時(日曜は午後10時まで)、週末は予約不可。
●春川駅:タクシーで約11分(4,700ウォン前後)。行き先は「イルジョモータッカルビ」でまず通じると思います。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<9>番バス(約10~30分おき運行)に乗車、約26分で到着する「後坪3洞住民センター」(후평3동주민센터)バス停で下車、道路を渡って徒歩約2分(約120m)。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<7>番バス(約10~30分おき運行)に乗車、約25分で到着する「後坪3洞住民センター」(후평3동주민센터)バス停で下車、道路を渡って徒歩約2分(約120m)

1.5タッカルビ(1.5닭갈비:江原道 春川市 後坪路 77 (後坪洞 801-13))

 

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「クウミタッカルビ」。
2015年8月訪問。あるブログ記事によると「春川明洞タッカルビコルモク」でも最古の名店「ウミタッカルビ」の経営者の息子さんのお店だとか。クラシックタイプの春川タッカルビらしい、やや辛味の強い味。味で勝負するためエゴマなど香りの強い野菜はあえて使わないのがこちらのお店のポリシーだとのこと。
タッカルビは1人分(250g)11,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午前0時。
●春川駅:道路向かい側の「春川駅」(춘천역)バス停から<12>番バス(約30~40分おき運行)に乗車、約14分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<66>番バス(約15~20分おき運行)に乗車、約21分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<64-2>番パス(約10~30分おき運行)に乗車し、約21分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。 

クウミタッカルビ(구우미닭갈비:江原道 春川市 朔州路116 (後坪洞 847-3))

 

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「ウソンタッカルビ」。
2016年8月訪問。南春川駅そば。後坪洞に本店を構える同名の店の支店で、あるブログ記事によると本家(後坪洞)の息子夫婦が運営する店だとのこと。過去に食べたことのない、ほのかにソーセージのような香りのするヤンニョムが特徴的でした。タッカルビの薬味にワサビが付いてきたのも初めての経験。
タッカルビは1人分(250g)10,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午後11時、名節(旧正月・秋夕)休業。
●春川駅:京春線電車で南春川駅へ移動(約6分)、徒歩約8分(約520m)
●南春川駅:徒歩約8分(約520m)
●市外BT:徒歩約14分(約930m)

ウソンタッカルビ(우성닭갈비:江原道 春川市 ウムットゥルキル 33 (退渓洞 1137-5))

 

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「元祖スップルタップルコギチッ」。
2015~17年の3年連続訪問。1961年創業、前回も紹介した、1960年代当時の春川タッカルビの原型とされるスップル(炭火)での網焼きタイプのお店です。いつも行列が形成されており、土曜の夜であれば50分ほど並ぶ必要があります(経験談)。独特のヤンニョムで味つけられた鶏肉が猛烈にうんまいです。
ピョオムヌン(骨なし)タッカルビは1人分(250g)10,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前10時30分~午後9時、名節(旧正月と秋夕)の前日と当日は休業。
●春川駅:徒歩約17分(約1.1km)、または駅前の道路向かい側の「春川駅」(춘천역)バス停から<150>番バス(約15~20分おき運行)に乗車し、約9分で到着する「中央市場/中央初校」(중앙시장/중앙초교)バス停で下車、徒歩約1分(約90m)。タクシーならワンメーターの2,800ウォン。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<66><150>番バス(ともに約15~20分おき運行)に乗車、<66>番は約14分で到着する「明洞入口」(명동입구)バス停で下車、道路を渡って約2分(約120m)。<150>番は約15分で到着する「中央市場」(중앙시장)バス停で下車、道路を渡って約1分(約90m)。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<7><50><81>番バス(<7>は約15~30分おき、その他は約15~20分おき運行)に乗車し、約14~15分で到着する「明洞入口」(명동입구)バス停で下車、道路を渡って約2分(約120m)。

元祖スップルタップルコギチッ(원조숯불닭불고기:江原道 春川市 楽園ギル 28-4 (中央路2街 70))

 

それでは、次回のエントリーヘ続きます。

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