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順天の旅[201908_01] - 麗水空港経由の順天訪問、中央市場内の気さくなご主人のマッコリ酒場

諸事情により長らく更新を停止していましたが、本日から再開いたします。
今回からは、本年(2019年)8月29日から9月1日にかけて訪問した全羅南道(チョルラナムド)順天(スンチョン)市の旅をお届けいたします。前回のエントリーである全羅南道木浦(モッポ)市の旅の続きはこの順天の旅シリーズの次か、またはこれと並行して更新いたします。

 

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今回の旅は、本年1月のセールで購入したジンエアーの成田-仁川線を利用。例年この時期に開催されている江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)市の「春川マッククスタッカルビ祭り」参加のために押さえていたチケットですが、このお祭りが本年から6月開催に変更されたため、以前から再訪を画策していた順天の旅に切り替えたものです。

 

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仁川国際空港から順天への移動といえば、真っ先に思い出されるのはKTX全羅線(チョルラソン)。しかし今回はKTXではなく、順天市と南側で隣接する全羅南道麗水(ヨス)市内の「麗水空港」への空路を利用することに。そのため、まずは空港鉄道の一般列車で金浦国際空港へ移動します。金浦は昨年(2018年)6月の済州島(チェジュド)の旅以来の利用です。床がピカピカ。

 

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今回搭乗したのはアシアナ航空の国内線。金浦-麗水の正規料金は82,500ウォン(約7,500円:2019年8月現在。以下同じ)ですが、今回は割引運賃の46,500ウォン(約4,200円)にて購入。ソウル-順天間のKTX(普通車44,300ウォン:約4,000円)とほぼ同じだったうえ、調べたところ麗水空港からの移動を考慮してもより早く順天市内に到達できると分かったのでKTXの接続が悪いせいでもある)、今回はこちらを選択しました。まあ麗水空港を利用してみたかったというのも理由のひとつですが。

 

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金浦-麗水線の所要時間は約55分。写真はありませんが、KTX全羅線と湖南線(ホナムソン)の分岐点でもある益山(イクサン)駅を眼下に見るポイントで、KTXと同様に南東方向へ旋回したのが印象的でした。
また機内サービスのドリンクには、コーヒーやオレンジジュースなど選択肢の中にまさかのトマトジュースが。思わずオーダーしてみました(写真)。口にしてみると、日本のそれよりかなり甘いです。もはやフルーツジュースの範疇。韓国のトマトジュース恐るべし。個人的には好きな味です。

 

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そして到着した麗水空港。もちろん利用は初めてです。

 

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麗水空港は1972年開港の国内線専用空港です。現在の旅客ターミナルは2005年完工、翌年にはそれまで1,500mであった滑走路が2,100mに延長されています。現在は一日4便の金浦線のほか、一日3便の済州線も就航しています。釜山の金海(キメ)国際空港や大邱(テグ)国際空港などの軍民共用空港はとは異なり、麗水空港は純然たる民生用空港ですので、滑走路や駐機場なども写真撮影可です。こうした民生用空港は仁川国際空港や金浦国際空港のほか、地方空港だと同じ全羅南道の務安(ムアン)国際空港などが挙げられます。

 

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麗水空港からは市内バス(路線バス)で順天市内へ移動します。麗水空港は場所こそ麗水市内とはいえ、中心地(ここでは市の代表駅周辺を指す)への所要時間は順天がずっと近く、そのこともあってか「麗水空港(順天)」などと表記されることがあるようです。そういえばアシアナ航空のeチケットにも「麗水/順天」とありました。以前は順天・麗水ともに市街地からの直行バスもあったそうですが、利用者低迷のため廃止されたとのこと。
写真のバス停は空港ターミナルを出てすぐ右側にあり、手前が麗水市内方面、奥が順天市内方面のりばです。

 

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このバス停には麗水市内バス(写真1枚目:白とターコイズブルーのツートン)と順天市内バス(2枚目:マゼンタ1色にツルなどの白抜きの絵)の両方が到着します。ただ互いに相手方の市内に乗り入れているため、たとえば順天市内バスがやって来ても順天市内行きとは限りません(逆も同じ)。
しかも同じ市内だからか本数は圧倒的に麗水市内行きが多く、待てど暮らせど順天市内行きが来ません。これら麗水市内行きのバスを見送っていると、昨年秋の初訪問の際にとても印象のよかった麗水市内を再訪したい衝動にかられますが、それは願掛けの意味も込めて後日に取っておくことといたします。
そして40分あまり経過した7本目にしてようやく、順天市内行きの麗水市内バス(ややこしいな)<330>番が到着。

 

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写真は順に麗水市内方面の路線一覧と時刻表、順天市内方面の路線一覧と時刻表。バス路線番号は3で始まるものが麗水市内バス、9で始まるものが順天市内バスです。順天市内方面へ行く3路線のうち<330>番(麗水)と<960>番(順天)は麗水市内方面へ行く便も停まるため、乗車時には確認いただくことをおすすめいたします。

 

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そして待ち時間よりも短い30分ほどで、順天駅前に到着。順天訪問は本年(2019年)2月以来、半年ぶりです。
今回の宿泊地は順天最大の在来市場、アレッチャンそばの定宿となっているホテル。アレッチャンまで直行する<96>番・<960>番順天市内バスとは異なり、<330>番麗水市内バスは順天駅前が終点ですので下車して乗り換えます。

 

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荷物をホテルに置き、夕陽に染まる順天市内へくり出します。余談ですが、この日の順天の日没はちょうど午後7時。この時点で時刻はまだ午後6時55分前後でした。もしKTXを利用していたならば、いまごろはまだ全羅北道の南原(ナムォン)駅を発って少しくらい。おそらくこの順天の夕焼けを見ることはかなわなかったわけです。あれだけ長くバスを待たされてもなお空路には強みがあります。
次の日には、徒歩での長距離移動が控えています。いい天気になりますように。

 

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かつての「順天府邑城」(スンチョンブ・ウプソン。こちらのエントリーにて紹介)の南端側を東西に流れる「玉川(オクチョン)」。浅く緩やかな流れのため、整備された川岸ともども順天市民にとっての憩いの場になっています。川面の上にはたくさんの電飾が。

 

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まずやって来たのは、その玉川と並行する商店街、中央市場(チュンアン・シジャン)。

 

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食料品店が並ぶこの商店街の玉川(南)側には東西に長い市場建物があり、その東端にこの日の夕食目当ての店「クッスニネパッチッ(끝순이네밥집)」があります。
こちらは訪問に先立ち、順天市内で雰囲気のよさそうな酒場を検索していた中でたまたま見つけたものですが、看板と名刺以外には写真がなかったため、本当に営業しているかどうか実際に訪れるまで気が気ではありませんでした。

 

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市場の片隅、仕切りのない一角がお店のエリア。市場はすでに電気が消えていますが、お店の周囲だけは点灯しています。客席には3組の来客が。いずれも50代前後の男性で、うち2名のグループを除けば一人ずつ。おひとりさまの先客がいると入りやすさが増しますね。

 

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酒類の冷蔵庫。マッコリだけでも6種類もあります。後述する「61号ミョンテジョン」もそうでしたが、順天の酒場はマッコリの品ぞろえが豊富なイメージがあります。

 

f:id:gashin_shoutan:20190917234619j:plainお酒はもちろんマッコリ。銘柄はおまかせしたところ、写真の淡い紫色のマッコリが出てきました。ラベルには「킹스베리 아로니아 막걸리(キングスベリー・アロニアマッコリ)」とあります。飲んでみると甘酸っぱくておいしい。もちろん順天の地マッコリです。
アロニアとは北米原産のバラ科の果樹で、キングスベリー(あるいはチョークベリー)はその果実を指します。ブルーベリーの約4倍ものアントシアニンなど有効成分が多数含まれ、中世ヨーロッパの王族が好んで食べたことから「キングスベリー」の名がついたとされています。日本ではなじみのない果物ですが韓国では割とメジャーな存在のようで、検索するとさまざまな加工食品が出てきます。

 

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こちらのお店は後述するように単品料理もありますが、とりあえずお酒を頼むと写真のおつまみセットが出てきます。おいしかったです。

 

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マッコリ2本目に突入。今度は自分で選んだフンマヌル(흑마늘:黒ニンニク)マッコリ。こちらは順天からも近い高興(コフン)郡の地マッコリです。

 

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看板兼用のメニュー表の下には紙に手書きされた単品メニューが。いちばん左、5,000ウォン(約450円)のトゥブ(두부:豆腐)を注文します。韓国のトゥブは日本の木綿豆腐のような食感で、写真のようなそのまま、あるいは焼いたものがマッコリのおつまみとしてよく出されます。安定のおいしさ。
そしてお会計。なんと11,000ウォン(約1,000円)。前述したようにトゥブが5,000ウォンですので、マッコリ2本とおつまみセットは計6,000ウォン。文字通りの「せんべろ」です。次のお店のことを考慮して飲食量を控えたとはいえ、あまりにも安すぎる。ありがたい以上に申し訳ないくらいの思いです。

こちらのお店のサジャンニム(「社長」「店主」の意)の女性。別のお客さんとも活発に会話をされるうえ、ラジオで懐メロが流れると踊り出してしまう気さくな感じの方でした。入店後、下手っぴな韓国語のため日本人であるとばれてしまった後も変わらず温かく接してくださったという。店内の写真を撮りまくっていたとき「どうして写真を撮るの」と尋ねられた際にも、SNSなどで紹介するためだと答えると快く協力してくださったサジャンニム、本当にありがとうございました。次に順天を訪れたときにも必ずやまた訪問し、もっともっといっぱい注文します。

 

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こちらのお店「クッスニネパッチッ」の営業時間は不明ですが(確認しませんでした。すみません)、少なくとも私が滞在した午後8時時点ではまだ営業していました。
Korail「順天」駅からだと駅前の「順天駅(순천역)」バス停より<1><13><14><15><16><18><30><31><32><33><34><35><51><52<53><66><71><94><95><96><97><98><111><960>のいずれかの市内バスに乗車、約10分(6つめ)で到着する「中央市場(중앙시장)」で下車、徒歩約3分(約180m)順天総合バスターミナルからだと徒歩約4分(約230m)の「バスターミナル(버스터미널)」バス停より前述のいずれかの市内バスに乗車、約5分(3つめ)で到着する「中央市場(중앙시장)」で下車.以下同じ
中央市場の建物にはいくつかの入口がありますが、いちばん東側(バス通りから見て奥側)の入口に写真の看板が立てられているので、すぐお分かりいただけるかと思います。

クッスニネパッチッ(끝순이네밥집:全羅南道 順天市 中央市場キル 18 (南内洞 119-1))

 

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クッスニネパッチッを出るとすっかり夜の雰囲気に。まばゆい電飾の玉川。


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しかし今夜の行動はまだ続きます。再び市内バスに乗り、今度はホテル近くのアレッチャンへ。以前にこちらのエントリーでも紹介した市場内の名店、「61号(ユクシビロ)ミョンテジョン」にてこの夜2度目の夕食を味わうためです。
こちらのお店が元祖だという順天湾の干潟名産のチルルッケ(찔룩게:ヤマトオサガニ。学名:Macrophthalmus japonicus)を揚げたチルルッケティギム、屋号にもなっているミョンテジョン(명태전:スケトウダラのチヂミ)をはじめとするジョン(日本でいうチヂミ)の数々、そして何種類ものマッコリ。過去1年間で3回の順天市訪問の度に訪れてきたこちらのお店、その味を想像しただけで目じりが下がってしまいます。
お店があるのは市場内の屋根付き広場。ここは毎週金・土曜日限定で開催される夜市場(ヤシジャン)の会場でもありますが、この日(8月29日)は木曜日。常設店もほとんどが店じまいし、ひっそりとしています。

 

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そんな中でも午後9時までは営業しているはずの61号ミョンテジョン、しかしまだ閉店時間前なのにお店の明かりが灯っていません。胸騒ぎを抑えつつお店に近づくと、店先には「膝の手術後に元気な姿でまたお目にかかります」と書かれた1枚の張り紙が(電話番号の記載箇所のみ加工しています)。どうやらご主人の手術のために臨時休業しているご様子です。
私にとってはそれ自体が順天訪問の目的のひとつと言っても過言ではない61号ミョンテジョン。名物のチルルッケティギムや各種ジョンを当面食べられないのは残念ですが、まずはご主人の健康が最優先です。膝が完治し、営業を再開されたときには必ずやまた再訪いたします。

こちらのお店「61号ミョンテジョン」のすごさについては、下記エントリーの前半にて紹介いたしております。ご興味のある方はあわせてお読みいただけますと幸いです。

 

お腹の具合はもう少し物足りない感じですが、翌日は朝が早いことに加え、前述したように長距離を歩く予定があります。この日の一人飲みはおとなしくここまでにして、ホテルへと戻るのでした。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

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