かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

光州の旅[その4] - 5.18民主化運動の史跡めぐり②、そして光州名物オリタン

前回の更新から少し間が開いてしまいましたが、その間の9月30日から10月2日にかけて、大邱へ行ってまいりました。
大邱は見どころも多々ありますが、なんといっても最大の名物(だと私が思うの)は「大邱十味」に代表されるうんまい料理の数々。もちろん今回しっかりと堪能してまいりました。
現在進めている8月の旅レポが終わりましたら、この大邱の旅を紹介したいと思います。

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さてさてそれでは光州に戻って、前回の続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com

大仁市場を過ぎてまた少し歩き、いよいよやってきた錦南路(クムナムノ)。

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「錦南路一帯」( 금남로일대:史跡4号)。光州一の繁華街である忠壮路(충장로:チュンジャンノ)と隣接し人通りも多いこの道路は、戒厳軍による暴虐の現場やその後の市民たちによるデモの舞台となった道であり、その足の当たるところのすべてが5.18民主化運動の現場というべき場所です。そして1980年5月21日13時には、韓国国歌「愛国歌」(애국가)の流れる中を戒厳軍による一斉射撃がなされ、多数の死傷者が発生した場所でもあります。
518番バスは「国立アジア文化殿堂」(국립아시아문화전당)停留所下車。

錦南路一帯( 금남로일대:史跡4号)


写真の碑石のある建物は、かつては「カトリックセンター」と呼ばれ、5月18日午前に戒厳軍により学内から追われた数百名の全南大学校生が移動しデモを実行した場所でしたが、昨年(2015年)5月に改装され「光州広域市5・18民主化運動記録館」(광주광역시 5 · 18 민주화운동기록관)としてオープンしました。建物のうち1階から3階までが記録館となっており、1階から順に「抗争」「記録」そして「世界人権記録遺産」の順に構成されております。
ここもまた国立5.18民主墓地の「追慕館」と同様、実際に訪問してその目でご覧いただきたい場所なので詳しい紹介は避けますが、数ある展示物の中から特に印象に残ったものを数点紹介してまいります。

 

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光州駅広場で発見された2名の遺体をこの錦南路まで移送したリヤカー。実物ではないかもしれません。1階。

 

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前々回も紹介した、光州のトゥルブル(들불:野火)夜学のメンバーを中心に発行され、抗争期間中には陸の孤島となった光州で市民の新聞代わりとなった『闘士会報』(투사회보)の説明板と、いわゆる「ガリ版刷り」による製作風景の再現。説明板にはこの後訪問する「光州YWCA(旧跡)」と「緑豆書店(旧跡)」についての言及もありました。1階。

 

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5月21日13時過ぎに全南道庁前の錦南路にてなされた戒厳軍による市民への一斉射撃の直後、犠牲者や避難者たちの靴がアスファルトの路上に散乱する様子の再現。上がガラス張りになっており、歩いて渡れるようになっています。個人的に最も強く印象に残った展示物です。1階。

 

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1階には10日間の抗争期間中の出来事が壁面のパネルで時系列に紹介されていますが、その中でこちらは「5月21日」の部分。戒厳軍による集団発砲の死者が54名、これらを含む死傷者が500名あまりとあります。

 

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1980年6月2日付『全南毎日新聞』の検閲前と検閲後の紙面。検閲前の紙面には無数の赤入れがなされています。金準泰(김준태)詩人による詩のタイトル「아아, 光州여 우리나라의 十字架여!」(ああ、光州よ 我が国の十字架よ!)は後半がざっくり削られ、その下にある詩本文も半分以下に削られています。これらを並べることで、検閲という行為の罪深さが痛いほどよく理解できます。2階。

 

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記録館の窓口の方に聞かれ、日本から来た旨を伝えると、全166ページにも及ぶこのような本を頂戴しました。5.18民主化運動前夜から抗争期間中、そして現在に至るまでの出来事が精細に記載されています。訪問された方はぜひ手にしていただきたい一冊です。
光州広域市5・18民主化運動記録館」は入場無料、開館時間は9:00~18:00。毎週月曜日と元日、名節(旧正月・秋夕)は閉館です。ぜひ訪れてみてください。

光州広域市5・18民主化運動記録館(광주광역시 5 · 18 민주화운동기록관)

 

閉館ぎりぎりの18時まで記録館を観覧し、再び外へ。雨は依然として降り続けています。夕闇が迫っているので歩みを続けます。

 

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「光州MBC旧跡」(광주MBC옛터:史跡7号)。1980年の抗争当時、KBSと並ぶ2大放送局であったMBC文化放送)の系列局である「光州MBC」があった場所です。軍部の検閲のため戒厳軍の蛮行については一切触れず、政府発表ばかりを報道し続けた姿勢に激高した光州市民により1980年5月20日の夜に放火され、全焼しました。翌21日には別の場所にあるKBSの建物も放火されています。ここの碑石は「瑞元門の提灯」というアート作品と一体化していました。
518番バスは「全南女高」(전남여고)停留所下車。
光州MBC旧跡(광주MBC옛터:史跡7号)

 

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「緑豆書店旧跡」(녹두서점옛터:史跡8号)。維新体制下における民主青年学生たちの討論の場であり、1980年5月17日の深夜に全国の民主人士多数が予備検束された際には光州の青年学生たちが集結し垂れ幕や檄文を制作したところです。そして先にも紹介した、戒厳軍により封鎖された光州の街で市民の新聞代わりとなった『闘士会報』の発行に大きな役割を果たした場所でもあります。
518番バスは「全南女高」(전남여고)停留所下車。

緑豆書店旧跡(녹두서점옛터:史跡8号)

 

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「光州YWCA旧跡」(광주YWCA옛터:史跡6号)。光州における女性運動の拠点であり、抗争期間中は対策会議が頻繁に開催された場所です。5月27日早朝の戒厳軍による全南道庁への最後の攻勢ではここもターゲットになり、多くの犠牲者が発生しています。またこの近くには、団員のほぼ全員が民衆抗争に参加した劇団「トバギ」の当時の本拠地であり、現在も5.18民主化運動関連の演劇などを上演する「ミンドゥレ小劇場」(민들레소극장)もあります。
518番バスは「国立アジア文化殿堂」(국립아시아문화전당)停留所下車。

光州YWCA旧跡(광주YWCA옛터:史跡6号)

 

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ここまで来れば錦南路界隈の史跡の中でも残る「5.18民主広場」や「旧全羅南道庁」などは目と鼻の先ですが、雨足は依然強い中いよいよ暗くなってきたうえ、夕食の店の閉店時間が迫っていることもあり、この日(8月26日)の史跡めぐりはここで断念することとしました。雨に煙る旧全羅南道庁を横目に、最寄駅である「文化殿堂駅」(문화전당역)から地下鉄1号線に乗って、「農城駅」(농성역)へ移動します。

 

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お待ちかねの夕食は農城駅から徒歩数分、ある方に教えていただいた「マンミジョン」(맛미정)にて、光州の名物料理「オリタン」(오리탕)のパンマリ(半羽)を。25,000ウォン(約2,300円:当時)。「オリ」とは鴨のこと。写真3枚目の山盛りのニラとセリを少しずつ足しながら食べてゆきます。酢コチュジャンにトゥルケ(すりエゴマ)を混ぜたものをつけて食べるという、いままで見たことのないスタイル。そしてオリタンそのものも、いままで体験したことのない味。これは、うんまい!
実はこのパンマリを注文するにあたり、お店の方から「とても食べきれないから1人用の『トゥッペギ』(7,000ウォン)を注文するといいよ」と何度もすすめられたのですが、そうしたことは何度も経験しているのでここは迷わずパンマリをオーダー。しかしなかなかの量で、お酒が入ると底なしになってしまう(^_^;)私の胃袋でも満足するほどの分量でした。
この店については、私に教えてくださったビョンさんのブログでも詳しく紹介されています。ぜひご一読のほど。営業時間は11:00~21:00(NAVERなどでは21:30閉店となっていますが私が行った際には21:00閉店とのことでした)。

マンミジョン(맛미정)


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光州を含む全羅南道の地ソジュ「イプセジュ」(잎새주)。オリタンによく合います。

 

次回は光州の最終回。この日訪問できなかった錦南路周辺の「5.18民主化運動」史跡などについて紹介します。

 

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