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Twitter https://twitter.com/gashin_shoutan の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

釜山の旅[その5] - 年に1度の小正月行事と神々しい舞踊、あの陸橋脇の酒場で食べるティッコギ

前回のエントリーの続きです。

gashin-shoutan.hatenablog.com


前回にも触れましたが、この日(2017年2月11日)は旧暦の「テボルム(대보름:小正月。旧暦1月15日。旧暦で1年最初の満月の日)にあたり、この日韓国ではこれにちなんだ民俗行事が全国津々浦々で開催されます。
これらの行事の中で特に人気が高いのが、松などの薪を積み上げた「タルチッ」(달집)の中に願い事や厄除けなどの紙などを入れ、これを盛大に燃やすことで新年を祈願する「タルチッテウギ」달집태우기:タルチッ焼き)です。
そしてその中でも特に大規模なもののひとつが、釜山・海雲台(ヘウンデ)区の海雲台海水浴場にて毎年小正月の当日にのみ開催される「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제)のタルチッテウギです。高さ5mにも及ぶ巨大なタルチッが火柱を上げる姿は相当な迫力があるとのこと。偶然にもそんな日にここ釜山に居合わせた以上、これを見逃さない手はありません。
夕暮れが迫る中、アンチャンマウル(ホレンイマウル)を出て海雲台へと向かいます。

マウルバスで再び「ポムネゴル」駅へ戻って地下鉄(都市鉄道) 1号線に乗車、「西面」(ソミョン)駅で海雲台方面へ向かう同2号線に乗り換えて、終点のひとつ手前「中洞」(チュンドン)駅で下車。
ここから砂浜までは遠いので、早歩きで向かいます。

 

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黄昏どきの街、遠くに見える海。こういう風景、なんだかたまらないですよね。

 

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途中にあった、Korail(韓国鉄道公社)のかつての東海南部線(동해남부선:トンヘナムブソン)の線路跡。
釜山市内の「釜田」(プジョン)駅から蔚山(ウルサン)市の「太和江」(テファガン)駅方面へと向かう東海南部線(現:東海線)の新線切替に伴い廃止となった区間の線路跡を、そのまま観光地として保存したもの。いつかゆっくり歩いてみたいものです。

 

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そしてやっと海岸、事前に調べたタルチッのあるべき場所に到着。しかしタルチッテウギのものと思しき炎と黒煙は、はるか遠くに。どうやら調べた場所が間違っていたようです。
砂浜沿いの道をまたしても早歩き。

 

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ようやく到着したタルチッの場所は、実は先ほど下車した「中洞」駅のひとつ手前の「海雲台」駅が最寄りで、しかも以前に来たことのある水族館「シーライフ釜山アクアリウム」そばの海岸だということが分かりました。つまりほぼ1駅分歩いたわけです。
そんなわけでようやく、タルチッの近くまでたどりつきました。

 

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燃え盛る紅蓮の炎。1ケタ台の気温を忘れさせるほどの熱気が伝わってきます。当然ながら一定の距離以上は近づけません。風向きによっては火の粉が舞い落ちてくるというやや怖い状況下での観覧となりました。

 

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空を見上げると、小さな、しかしタルチッテウギの火の粉にしては大きすぎる光点がいくつも舞っています。これは火の粉でもUFOでもなく「風燈」(풍등:プンドゥン)と呼ばれるバルーンで、熱気球と同じ原理で浮かび上がっているものです。

 

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タルチッテウギの隣には、民俗行事らしく韓国の民謡が歌われる特設ステージが。その前では韓服姿の女性たちによる舞踊が繰り広げられています
それら民謡の中でも特に興味をひかれたのが「カンガンスルレ」(강강술래)。古くから韓国の南西海岸沿いの一帯において、主に中秋やこの日のような小正月など満月の夜に行なわれてきた歌と踊りのノリ(놀이:遊び、遊戯)であり、韓国の国家無形文化財第8号、そしてユネスコの人類無形文化遺産にも登載されています。
歌い手の女性による名調子の中、30人あまりもの韓服姿の女性たちが互いに手を取り大きな円を描きつつ踊る姿はまさに壮観。次第に速くなってゆくテンポに心揺さぶられます。ずっと眺めて、ずっと聴いていたい。

そうしている間にいよいよ辺りは闇に包まれ、ただタルチッテウギの炎だけが天を焦がします。
ステージでの歌と舞踊も名残惜しいですが、食事の予定もあるので、後ろ髪を引かれる思いで海雲台海水浴場を後にします。
今回は見ることがかないませんでしたが、この「海雲台タルマジ温泉祭り」では前述の「タルチッテウギ」のほか、お祭り隊が海雲台の街をパレードする「キルノリ」(길놀이)、そして海雲台沖で漁を終えた漁船がカモメの群れの中を五六島(오륙도:オリュット)沖を通り海雲台へ帰ってくる様子を再現した、釜山ならではというべき「五六帰帆(オリュッキボム)再現」(오륙귀범재현)などのイベントが開催されているとのことです。
次のテボルム(小正月)は2018年3月2日(金)、その次は2019年2月19日(火)。この日に釜山を訪問される方は、年にたった1日だけのこのお祭りに参加してみるのも楽しいでしょう。

「海雲台タルマジ温泉祭り」(해운대 달맞이 온천축제:釜山広域市 海雲台区 海雲台海水浴場一帯。リンク先は「タルチッテウギ」の大体の場所)

 

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海雲台の街中には、昨年(2016年)秋から続く「海雲台ラコ光祭り」(해운대라꼬빛축제)の一環であちこちにLEDの電飾が。

 

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これら「海雲台ラコ光祭り」の電飾の中でも特に大きなものがこちら。これ1本でクリスマスも正月もソルラル(旧正月)も祝える便利なオブジェです。入ることのできる内側からの眺めがすごい。

 

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海雲台市場」(해운대시장:ヘウンデシジャン) 。海産物を扱うお店のほか、ヘムルタン(해물탕:海鮮鍋)やコムジャンオグイ(곰장어구이, 꼼장어구이:ヌタウナギ焼き)など港町釜山らしい海鮮料理の店が軒を連ねます。その終端近くにあった「イルムナン機張(キジャン)サンコムジャンオ」(이름난 기장 산 곰장어)というお店では、イルムナン(「有名な」の意)の名に恥じないほどの行列が形成されていました。いつか訪れてみたいです。

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海雲台駅前から海水浴場へ向かって伸びる大通り沿いでひときわ目立つ巨大オムク(어묵:魚肉の練り物。主にオデン種として利用)のオブジェの建物は、1963年創業の老舗「古来思」(고래사:コレサ)海雲台店です。海雲台のランドマークと言うべき存在かも知れません。古来思の店舗の中でもこの店限定という、魚肉でできた細麺を鰹ダシで煮込んだ名物「オウドン」(어우동)は食べてみたい一品です。

 

海雲台」駅から地下鉄(都市鉄道) 2号線に乗車し、再び「西面」駅で乗り換え、今度は「凡一」(ポミル)駅で下車します。

 

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同駅7番出口を出て徒歩3~4分の距離にあるKorail京釜線跨線橋、通称「クルムタリ」(구름다리:雲の橋)。ここ釜山を舞台に描き大ヒットした2001年の映画『친구』(邦題『友へ チング』)の撮影地のひとつとなった場所で、あるポイントから跨線橋の階段を見ると、映画の中心人物4名を含む名シーンを描いた絵が浮かび上がってきます。

 

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そしてこの日の夕食は、このクルムタリの凡一駅側のたもとにあるティッコギ(뒷고기)のお店、その名もずばり「クルムタリ」へ。
このティッコギ、本来は釜山市と隣接する慶尚南道キョンサンナムド)金海(キメ)市発祥の料理ですが、ここ釜山にも伝播し、いまでは釜山の名物料理のひとつに数えられるまでとなっています。
一般に「ティッコギ」とは特定の部位ではない豚の切り落とし肉のことであり、枝肉から精肉を切り出す際に余った、骨の周りなどの端肉の総称を指します。直訳すると「ティッ」(뒷:後ろ、裏)「コギ」(고기:肉)という意味で、豚肉の部位の中でもあまりにもおいしいことから解体業者が流通させず自分たち(裏方)だけで食べたため、あるいはサムギョプサルなどのような名のある部位でこそないもののあまりにおいしいので貧しい人のためにかき集めて売ったため、などその由来には諸説あるようです。

 

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おいしいだけでなく、以上の理由からリーズナブルなのもティッコギの特長。こちらのお店では1人分が4,000ウォン(約400円)。そんなわけで5人分を注文。お店の主人であるアジメ(アジュンマの釜山方言)に驚かれますが、これはいつものことなので、食べられますよとアピール。
ところで写真は同店のメニュー表なのですが、上から2番目の「김치찌개」(キムチチゲ)のやや強引?な修正に注目。韓国は他の国と同様に飲食物の原材料が値上がりの一途にあるため、料理の価格の値上げに際し写真のようにとりあえず油性マジックなどで修正したメニュー表をあちこちで見かけます。こういうの、好きなんです。揶揄的な意味でなく。日本だとたちまち心ない人からクレームが付けられそうなこうした表現が許容されているところに、社会の成熟性を感じずにはいられません。

 

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お待ちかねのティッコギ登場。過去に食べたお店の肉がいかにも切り落としらしいコロコロした形状であったのに対し、こちらは薄くスライスされています。

 

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驚いたことに、なんとアジメが1枚1枚、かいがいしくお肉を焼いてくださります。
そしていよいよ実食。うんまい。歯ごたえはあるけれど硬いというほどではなく、ほどよい感じ。サンチュなどでくるんで食べていましたが、想像以上に量があったので途中からは肉オンリーに切り替えて、ようやく完食。おなかいっぱい。
あと、写真にはないですが、ここのテンジャンチゲは超うんまかったです。いままで食べてきた中でベストと言ってもよいほど。
こちらの「クルムタリ」、営業時間は13:00~23:00。たまに通過する列車の音をBGMに、韓国の酒場の雰囲気に浸りつつ、ティッコギも味わえるお店です。

クルムタリ(구름다리:釜山広域市 釜山鎮区 凡一路125番ギル 29-61(凡川洞62-149))

 

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お店を出た後、クルムタリを渡って、界隈を少し歩いてみました。
渡った先にある道路橋の歩道には、映画『친구』のメインキャストであるチャン・ドンゴンさんとユ・オソンさんの手形&足形の展示物も置かれています。
どの写真にも看板が写っている「サンソンオルムマッコリ」(산성얼음막걸리)は、酒場らしい店構えにおいしい料理、しかも破格の安さということで、鄭銀淑さんの著書『韓国ほろよい横丁 こだわりグルメ旅』などでも紹介されているお店です。次回の釜山行きの際には必ずや訪問したいと思います。

そして沙上のホテルへ戻り、この日の旅は終了。最終日となる明日のために英気を養うのでした。


【おまけ】
ホテルへ帰った後、歩いて15分ちょっとの距離にあるマート(日本でいう大型スーパー)「ホームプラス西釜山店」へ。こちらは24時まで営業しており、隣接する「emart沙上店」(23時閉店)よりも使い勝手がよいので。
目的は、日本へ持って帰るべき「金井山城マッコリ」(금정산성막걸리)購入のため。ここ釜山の地マッコリであり、民俗酒第1号としても知られるこちらのマッコリ、濃厚な味で大好きなのです。

 

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ただでさえ横倒しにすると未開封でも漏れ出してしまう生マッコリ。航空機内での破裂を恐れて持ち帰りを躊躇されている方も少なくないと思いますが、 私はいつも備え付けの梱包用テープ(韓国のマートにはほぼ必ずあります)で写真のようにボトルのキャップをぐるぐる巻きにし、さらにレジ袋などで最低2重以上にくるみ密閉したうえで持ち帰るようにしています。これでもわずかに漏れ出しはしますが、いまのところボトルが破裂したことも、バッグの中の荷物を濡らしたこともありません。

ホームプラスの営業時間や店休日は店によって異なりますが、こちらの西釜山店は9:00~24:00。店休日は毎月第2・第4日曜日ですが、この日はホームプラスのみならずemartやロッテマートなど釜山市内のほぼすべてのマートが一斉休業しますのでご注意のほど。
ホームプラス西釜山店(홈플러스 서부산점:釜山広域市 沙上区 広場路 7(掛法洞529-1))

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