かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

釜山の旅[その7] - 避難民の辛苦を物語る「40階段」と「文化館」、そしてチュックミ焼き&ユブジョンゴル

前回のエントリーの続きです。

 

gashin-shoutan.hatenablog.com

「ヒンヨウル文化マウル」バス停から乗車した82番バスで、地下鉄(都市鉄道)1号線の「凡一」(ポミル)駅に到着。そこから徒歩、この日(2月12日)の前日の夜に訪問したばかりのKorail京釜線跨線橋、通称「クルムタリ」(구름다리:雲の橋)方面へ。

 

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それというのも、この日の昼食目当てだった釜山名物テジクッパの人気店「ハルメクッパ」がクルムタリを越えた向こう側にあるためでしたが、店先には「定休日」との張り紙が。残念ながらこの日(日曜日)は定休日だそうで。下調べが足りませんでした。
一刻も時間が惜しいので、リベンジを誓いつつも踵を返します。

 

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続いて、隣の「中央」(チュンアン)駅へ。
同駅の13番出口を出て最初の角を左に曲がると、突き当たりに奇妙ならせん階段が。
その形状からか「ソラ(소라:サザエ)階段」と名付けられたこちらの階段は、現在地から10mほど高いところを走る道路、そして次の目的地への近道でもあります。

 

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上にたどり着くまでおよそ4回転半。目が回りそうです。酔った人向けでしょうか、途中からは普通の階段も併設されています。

 

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そして「ソラ階段」を登りきった場所にあるこちらの建物の5階に入っているのが、次の目的地「40階段文化館」です。
実はこちら、昨年(2016年)1月の釜山訪問の際にも立ち寄ったのですが、そのときは館内改装に伴う半年もの長期休館中でした。1年あまりを経た今回の再訪で、ようやく入館がかなったわけです。

 

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この「40階段文化館」は、朝鮮時代末期の釜山港開港から日帝強占期、光復(日本の敗戦による解放)と大韓民国の建国、そして朝鮮戦争を経て現代へと至るまでの釜山の歴史、中でも特に朝鮮戦争期に全国から殺到した避難民たちの生活に焦点を当てた展示館であり、すぐ近くにある選難民の辛苦を象徴する場所「40階段」にちなんで名付けられたものです。
こちらもまた、受付の女性が日本語を少し話せる方で、いくつかの展示品の案内をしてくださいました。

 

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朝鮮戦争期の青空学校(小学校)の写真と、その様子を精巧に再現したジオラマ

 

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「求職」の文字を首にぶら下げている、避難民と思しき男性。この前日(2月11日)に「臨時首都記念館」で見た再現人形(こちらのエントリーにて紹介)のモデルと思われます。

 

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朝鮮戦争期の代表的な食事のサンプル。奥の列の一番左側は「クルクリチュッ」(꿀꿀이죽:豚(の餌)の粥の意)と呼ばれる、米軍の残飯を煮込んだ料理で、避難民たちの過酷な貧困状況を端的に示したものであるといえます。

 

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これら以外にも数々の展示品がありますが、できれば実際に足を運んでいただきたい場所ですので、詳しい紹介はこの辺にとどめます。
「40階段文化館」へのアクセスは、地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅13番出口より徒歩約5分。若干遠回りとなりますが、同駅11番出口を出て「40階段文化観光テーマ通り」および「40階段」(いずれも後述)経由でも行くことができます。
開館時間は平日(火~金)9:00~18:00、土日10:00~17:00。毎週月曜日、公休日は休館。

40階段文化館(40계단문화관:釜山広域市 中区 東光ギル 49 (東光洞5街 44-3))

 

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40階段文化館の建物を出て右(南)方向へ1分ほど歩くと、下の道へ降りる幅の広い階段が左手に現れます。
この階段こそが、まさに「40階段」です。

 

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こちらの階段は、1950年6月25日の勃発から休戦まで3年あまり続いた朝鮮戦争当時、全国各地から戦火を逃れここ釜山へやってきた無数の避難民たちが上り下りした階段であり、前述したようにここ釜山における避難民たちの辛苦を象徴する代表的なスポットとなっています。

 

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こちらは先ほどの「40階段文化館」に展示されていた、朝鮮戦争当時の「40階段」の写真と、その一部をミニチュアで再現したもの。現在の40階段とは若干異なる位置にあったようです。

 

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階段の途中には、アコーディオンを弾く男性の像が。
ここに来ていつも驚かされるのは、踊り場でもない階段の途中に面して理髪店などの店舗の入口があること。日本ではまず見たことがありません。

 

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40階段から1号線「中央」駅方面へと向かう街路には、「40階段文化観光テーマ通り」という名前がつけられています。
こちらの街路は、朝鮮戦争期の避難民たちの哀歓と郷愁が漂う「40階段」とその周辺を1950~60年代当時の雰囲気に再現し、思い出を回想できるようにすることを目的として、2004年に整備されたものです。
街路のところどころに、朝鮮戦争当時から休戦後の人々の暮らしを象徴する像が建てられています。

 

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40階段を降りたところの前(中央駅側)にある、ポン菓子作りの男性と出来上がりを待ちわびる子どもたちの像。

 

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幼子に乳を与える母らしき女性の像。

 

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水を運ぶ少女。重そうです。主に避難民が暮らしたタルトンネ(달동네:斜面などに形成された低所得層の集落)では水道が整備されておらず、ごく普通の光景でした。

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仕事の疲れか、箱のようなものに座り、背負子にもたれかかる男性たち。

この前々日(2月10日)に訪問した草梁(チョリャン)駅そばの「平和の少女像」(こちらのエントリーにて紹介)をはじめ、こうした等身大のリアルな像を用いて過去の悲劇や苦難を記憶する取り組みは、韓国が数十歩進んでいるように感じます。学ぶべきものは無数にあります。

 

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「40階段文化観光テーマ通り」の起点であることを示す造形物。ここから徒歩1分もかからない場所に、地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅11番出口があります。
40階段文化観光テーマ通り)(40계단문화관광테마거리:釜山広域市 中区 40階段ギル 一帯)

 

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さすがにおなかがすいてきたので、そろそろ腹ごしらえの時間です.
今回は「40階段文化観光テーマ通り」から徒歩6分程度の距離にある「トゥンボチッ」へ。
こちらはチュックミ(주꾸미:イイダコ)料理がメインのお店で、今回の旅の直前に投稿されたある方のブログを見て、訪問の候補に入れていたものです。

 

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こちらの店先では、網に挟み込んだチュックミを炭火で丁寧に焼いています。あたりには香ばしい匂いが充満。よだれがほとばしり出ます。

 

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入店。注文したのはもちろん、先ほど店先で焼かれていた「チュックミグイ」(쭈꾸미구이:チュックミ焼き)、12,000ウォン(約1,200円)。

 

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そして出てきたチュックミグイ。チュックミそれ自体のうまみに炭火特有の香ばしさ、そしてパンチのある辛さの特製ヤンニョムが渾然一体となっています。うんまい。ビールにめちゃくちゃ合います。辛さで額に汗が流れますが止められません。次の食事を考慮して1人分だけ頼んだものの、あまりのおいしさにもう1人分を追加。
2枚目の写真でチュックミグイのお皿の左に写っているクリームシチューみたいなものは、チュックミグイを頼むとついてくるコンビジ(콩비지:おからスープ)で、これがまたまたうんまいのです。初めて食べましたがこんなにおいしいとは正直思っていませんでした。

 

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付け合わせの小さな白菜の葉にチュックミさんをちょこんと乗っけて。この食べ方もうんまいです。
こちらのお店にはその人気でチュックミグイと肩を並べるという、自家製トゥブ(두부:豆腐)がメインの「トゥブ定食」(두부정식)も。こちらはなんと3,000ウォン(約300円)という激安メニュー。いつか食べてみたいものです。

「トゥンボチッ」の営業時間は11:00~22:30、毎月第4日曜日休業。地下鉄(都市鉄道)1号線「中央」駅3番出口からだと徒歩約3分。大通りの「中央大路」(중앙대로:チュンアンデロ)に沿って「南浦」(ナムポ)駅方面へ進み、2番目の角を右折、続いてすぐの角を左に曲がって50mくらい進むと右手に現れます。

トゥンボチッ(뚱보집:釜山広域市 中区 中央大路41番ギル 3 (中央洞1街 21-3))

 

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飛行機の時間が迫りますが、どうしても行きたい場所がまだあるので、歩みを進めます。
中区最大の繁華街である「光復洞ファッション通り」(광복동 패션거리)を、続いて一昨日にも訪れた「国際市場」(국제시장)を突っ切ります。途中には映画『国際市場で逢いましょう』の主人公、ドクスの店のモデルとなった「コップニネ」(꽃분이네:「コップンの店」の意)も。開いている姿は初めて見ました。

 

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そしてやって来たのは、こちらも一昨日に訪問した「富平カントン市場」(부평깡통시장)。ここでは今回、2つの目的が。
まずひとつは、市場内のお店「ハルメユブジョンゴル」にて、この日2度目となる昼食のため。

 

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こちらの看板メニューの「ユブジョンゴル」は、タンミョン(당면:韓国春雨)を包んだユブ(유부:油揚げ)を、西日本風のおでんスープで煮込んだもの。上に乗った釜山名物のオムク(어묵:魚肉の練り物)を食べ進めるとユブが現れます。これまたうんまかったです。久々に韓国で「懐かしい」味に出会いました。価格も5,000ウォン(約500円)とお手ごろ。
こちらのお店「ハルメユブジョンゴル」の営業時間は10:00~20:00、年中無休です。
ハルメユブジョンゴル(할매유부전골:釜山広域市 中区 富平3ギル 29 (富平洞1街 15-20))

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そしてもうひとつは、市場のうち東西方向のアーケード通りの両サイドに並ぶ、釜山名物のオムク専門店でのお土産購入のため。

 

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互いにしのぎを削る20軒あまりものオムク店の中から、今回は「桓公(ファンゴン)オムク」を選択。こちらのお店を紹介した某サイトの「調味料を入れずにオムクを煮込んでも真っ白なスープが出るほど濃い味」という一文に惹かれたためです。

 

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さまざまな風味、形のオムクが20個以上も入って、1袋10,000ウォン(約1,000円)と超お買い得。今回の釜山土産となりました。

 

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こちらの写真は帰国後、日本のおでんスープを投入し、自宅で実際に煮込んでみたものです。ただでさえ量が多いうえ、オムクは茹でると膨張することを忘れていたので見た目えらいことになっていますが、これでもまだ全部ではありません。
評判通り、旨みの中にコクの感じられる味で、うんまかったです。味もそれぞれ少しずつ異なるので食べ飽きることもありませんでした。
桓公(ファンゴン)オムク(환공어묵:釜山広域市 中区 中区路43番ギル 25 (富平洞2街 14-1) 富平カントン市場3B-20号)

 

オムクを購入したところで、タイムアップ。
時間がないので富平カントン市場からはタクシーで沙上(ササン)へ移動、荷物を回収して軽電鉄で金海国際空港へ。

 

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金海国際空港の楽しみといえば、何といっても手荷物検査場の先にあるソルビンでしょう。今回食べたのは写真の「フギムジャ(黒ゴマ)ソルビン」。摺った黒ゴマの風味が鼻腔をくすぐります。半円形に盛られたあんこを除いては甘さ控えめで、別添の練乳を適宜継ぎ足して食べます。
そして、一昨日に釜山へ来たときと同じエアプサンで帰国の途に着くのでした。

 

2017年2月の釜山の旅は、今回で終了となります。お読みいただきありがとうございました。
次回からは、2017年4月の仁川・ソウルの旅を紹介いたします。

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