かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

ソウルの旅[201709_06] - 早朝の鍾路散歩(その①)鮮やかな紫のカキ氷にソウル教育博物館、北村韓屋マウル

前回のエントリーの続きです。

 昨年(2017年)9月の江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)市などを巡る旅の3日目(2017年9月3日(日))です。

 

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春川駅から乗った列車「itx-青春」を「清凉里」(チョンニャンニ)駅で下車し、首都圏電鉄(地下鉄)1号線に乗り換えて「鍾路3街」(チョンノサムガ)駅へ。いい感じの酒場が無数にある大好きな街で、ここ最近のソウルでの宿泊は専らこの街となっています。
定宿となっている某ホテルに荷物を置き、お待ちかねの夕食へ。とはいえ昼に「加平チャラ島全国マッコリフェスティバル」会場で食べたジョン(전:チヂミ)3皿がまだお腹に残っていたので、軽めのものに。

 

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軽めの夕食といえば、思い当たる場所がありました。屋台群を横目に見つつ、大通りである鍾路を横断し、清渓川(チョンゲチョン)方面へと南下します。

 

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清渓川を渡り、やって来たのは乙支路3街(ウルチロサムガ)。地下鉄駅のある大通りから一本入ると、写真のような路上が露天席で埋め尽くされた空間が現れます。
こちらの場所は、無数の露天席でノガリ(노가리:スケトウダラの幼魚の干物)などをつまみにリーズナブルな価格で生ビールが飲める「ホーフ」(호프:HOF。日本でいうビヤホール)が数件立地している場所で、俗に「乙支路ノガリコルモク」(을지로 노가리 골목:コルモクとはここでは「横丁」の意)と呼ばれる場所です。
これらホーフの露天席、一時は市の規制により撤去を余儀なくされましたが、2015年にはソウル市の「未来遺産」に登録されたことで一転して解禁、再び路上が露天席で埋め尽くされるようになりました。

 

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これらホーフの中でも一番の目当てであった「乙支OBベオ」がこの日(日曜日)は定休日であったため、最も席数が多く当日も営業していた「満船(マンソン)HOF」の席に着きます。こちらもいいお店だと聞いています。

 

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当然、最初のおつまみは名物のノガリ。値段はなんと1枚1,000ウォン(約100円)。適当なサイズにちぎって、マヨネーズが盛られたヤンニョムジャン(つけダレ)につけて食べます。このヤンニョムジャン、実は猛烈に辛いのですがその中に独特のうまみがあって、食べだしたらもうノガリもビールも止まりません。あっという間に2枚目に突入。とはいえやはり日中のジョンは依然効いていたようで、2枚目を食べたあたりでお腹がいい感じにふくれてしまいました。

 

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こちらのお店「満船HOF」の営業時間は正午~午前0時、名節(旧正月・秋夕)休業。首都圏電鉄(地下鉄)3号線「乙支路3街」駅4番出口なら徒歩約1分(約70m)同1号線「鍾路3街」駅14番出口からでも徒歩約6分(約390m)で到達できます。ちなみに隣接する「乙支OBベオ」(을지OB베어)の営業時間は正午~午後11時、日曜定休。
この日のお会計は生ビール3杯とノガリ2枚、プチュ(白菜)キムチ1皿で16,000ウォン(約1,600円:当時)。十分満足できたのにこの値段とはなんだか申し訳なくなってきました。メニューを見るといろんな料理があるようですので、今度来たときはもっといっぱい食べます。

満船HOF(만선호프:ソウル特別市 中区 乙支路13キル 19 (乙支路3街 95-1))

 

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宿へ帰る前に、ホテル近くのいつもの24時間営業のお店「クテグチッ」(그때그집)へ。鍾路3街で飲んだ夜は、ほぼ必ずこちらのお店で締めの冷麺を食べています。
今回はムル(水)冷麺。うんまい。冷麺は別腹。
お腹もいっぱいになったところで、ゆっくりと休むのでした。

 

明けて、旅の4日目(2017年9月4日(月))。
最終日であるこの日はいつものように早起きし、まずは荷造りをしたうえで鍾路界隈の朝散歩に出かけます。

 

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ホテルからも近い、仁寺洞(インサドン)の街並み。
昼は観光客でにぎわうこの街も、午前7時台は人足もまばらで静かです。

 

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仁寺洞通りを抜けきったところにある「安国洞(アングットン)サゴリ」(サゴリは「交差点」の意)を東西に貫く大通り「栗谷路」(ユルゴンノ)。地下鉄3号線「安国」駅の近くです。

 

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安国洞サゴリ、栗谷路を渡った先にある小道「感古堂(カムゴダン)キル」。道沿いの塀がきれいで、好きな道です。

 

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感古堂キルを抜けた先には、以前に訪問したことのある「カフェ歩拏(ポラ)三清(サムチョン)本店」の看板が。「三清」とはこの一帯の地名「三清洞」(サムチョンドン)のことを指します。さすがにこの時間には営業していませんでしたが。

 

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感古堂キルから路地を入った場所にあるこちらのお店は2016年夏に訪問。その際に食べた看板メニューの「歩拏ピンス」は、忠清南道(チュンチョンナムド)・保寧(ポリョン)産の紫芋をソースに使用したピンス(빙수:韓国風力キ氷)で、インパクト大の紫色がそれはもう美しいこと美しいこと。ちなみに店名でもある「ポラ」(보라)とは韓国語でずばり「紫」の意(漢字表記の「歩拏」は当て字)。

 

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花弁に見立てた紫芋のチップが乗っている容器には、継ぎ足し用の紫芋ソースが。こういう心配りはうれしいですよね。特に紫芋のお花など、食べるのがもったいないほどです。まあ食べたけどな!
日本では見かけたことのないサツマイモ風味のカキ氷、うんまかったです。

 

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こちらのお店「カフェ歩拏三清本店」の営業時間は午前11時~午後10時、年中無休。首都圏電鉄(地下鉄)3号線「安国」駅1番出口から徒歩約7分(約460m)です。

カフェ歩拏三清本店(카페보라 삼청본점:ソウル特別市鍾路区 栗谷路3キル 75-3 (昭格洞 149-5)) [HP]

 

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カフェ歩拏の看板を通り過ぎた次の交差点を右に曲がると、こちらも以前(2015年)に訪問した「ソウル教育博物館」があります。
こちらの博物館の特徴は、韓国のほとんどの博物館の共通休館日である月曜日にも開館していること。

 

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かつての国民学校(現在の初等学校。日本でいう小学校)の教室の再現展示。ストーブの上には児童のアルマイト製の弁当箱も。

 

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子どもたちが通っていた文房具店(兼駄菓子屋)の再現展示もありました。

 

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朝鮮時代末期から現代へと至る韓国(朝鮮)での主に初等教育について紹介するこちらの博物館には、日帝強占期における日本語の教科書も展示されていました。写真は朝鮮総督府発行の『普通学校国語読本』。「日章旗」と題された見開き(写真2枚目)ひとつだけでも、植民地支配の残虐性をまざまざと見せつけられます。
「ソウル教育博物館」の開館時間は平日午前9時~午後6時、土日は午前9時~午後5時。公休日と第1・第3水曜日は休館です。入場無料。首都圏電鉄(地下鉄)3号線「安国」駅2番出口から徒歩約7分(約490m)です。ぜひともご訪問いただきたい場所です。
(※以上、展示品の写真は2015年8月時点のものです)

ソウル教育博物館(서울교육박물관:ソウル特別市 鍾路区 北村路5キル 48 (花洞 2))

 

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ソウル教育博物館からさらに北へ進むと、立派な韓屋(한옥:ハノク。韓国/朝鮮様式の住宅)住宅が立ち並ぶ、一般に「北村(プッチョン)韓屋マウル」と呼ばれる一帯です。入口には韓服のブティックも。

 

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北村という名は、鍾路や清渓川(チョンゲチョン)の北側の集落であったことから名づけられたといいます。かつて嘉会洞(カフェドン)31番地と呼ばれたこの一帯は、朝鮮初の不動産開発業者とされる鄭世権(정세권:チョン・セグォン、1888-1965)氏が1920年代に手掛けたもので、主に地主など富裕層向けの住宅地として造成されました。
この街に立ち並ぶ韓屋は、朝鮮時代以前から脈々と受け継がれてきた「伝統韓屋」の様式を継承しつつも、ガラスやタイル、トタンなど近代の新建材や規格化された木材などを効果的に用いていることから一般に「改良韓屋」と呼ばれています。
ちなみに鄭世権氏がこの北村韓屋マウルに先駆けて造成したのが、この年の5月に訪問した、庶民向けの小型韓屋改良韓屋の立ち並ぶ「益善洞(イクソンドン)韓屋マウル」(こちらのエントリーにて紹介)です。

 

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どこを切り取っても絵になる北村韓屋マウルですが、何といっても圧巻は、坂道を登りきった写真の地点から道を挟んで建つ韓屋を、そして鍾路やNソウルタワーなどソウル旧市街の街並みを見下ろしたこちらの風景でしょう。
日中は観光客がひっきりなしに訪れるこの坂道も、午前8時前後はまだ誰ひとりいません。

 

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こちらの「北村韓屋マウル」は、首都圏電鉄(地下鉄)3号線「安国」駅2番出口から徒歩約12分前後。住宅街なので入場料も休館日もなく24時間いつでも訪問可能ですが、それぞれの韓屋は現在も生活の場として使用されていますので、くれぐれも騒いだりすることのないようお願いいたします。

北村韓屋マウル(북촌한옥마을:ソウル特別市 鍾路区 嘉会洞 一帯。リンク先は先ほど紹介した坂道の上の撮影スポット)

 

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北村韓屋マウルを出て、再び安国駅方面へ。
朴槿恵前大統領の弾劾裁判で日本でも有名になった「憲法裁判所」の前を通過します。

 

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写真の蔦に覆われた建物は「空間(コンガン)社屋」といい、韓国を代表する建築家である金寿根(김수근:キム・スグン、1931-1986)氏が自身の事務所である空間社の社屋として設計、1971年に竣工した建物です。その後1977年の増築を経て、2014年からは美術館「アラリオミュージアム・イン・スペース」として使用されており、また同年には「ソウル旧空間社屋」として国家指定登録文化財第586号にも登録されています。

 

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金寿根氏はその設計に際し、隣接する昌徳宮(창덕궁:チャンドックン。1405年築の朝鮮王朝の古宮。世界文化遺産)や当時まだ周辺に残っていた韓屋との調和のため、それらの瓦屋根に似た感じの黒レンガを外壁の主材料とし、人工と自然との共生から蔦を這わせたとのことです。
内部もまた韓屋の構造の導入に加え、ヒューマンスケール(人の背丈)を基準とした部屋や土地の傾斜を残しつつ半層ずつ高めるスキップフロア方式の採用など特異な設計が盛り込まれており、韓国における現代建築の中でも特に代表的な作品として極めて高く評価されているとのことです。いずれ時間を見つけて、内部にも入ってみたいと思います。

ソウル旧空間社屋(アラリオミュージアム・イン・スぺ一ス)(서울 구 공간사옥(아라리오뮤지엄 인 스페이스):ソウル特別市鍾路区栗谷路83(苑西洞219)。国家指定登録文化財第586号)

 

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金寿根氏の作品には、有名どころでは「ソウルオリンピック主競技場」(1977年)や最盛期には全長約1kmにも及んだ長大建築「世運商街」(セウンサンガ、1968年)などがあり、1970年の大阪万博のパビリオンである韓国館も手がけています。しかしその一方で、建物自体が公権力による拷問に最適化した「旧南営洞対共分室」(現・警察庁人権保護センター。写真)の設計を手がけたという過去も併せ持っています。
同じソウル市内にある「旧南営洞対共分室」、そしてこの建物内で1987年に拷問の末殺害されたソウル大生の朴鍾哲(パク・チョンチョル)烈士については下記のエントリーにて紹介しています。あわせてご一読いただけますと幸いです。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

加平の旅[201709_05] - 韓国各地の地マッコリが無料試飲できる夢の祭典「加平チャラ島全国マッコリフェスティバル」

前回のエントリーの続きです。

昨年(2017年)9月の韓国・江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)市などを巡る旅の3日目(2017年9月3日(日))です。

 

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南春川(ナムチュンチョン)駅からは京春線(キョンチュンソン)の電車に乗車。いったん春川市を離れます。
到着したのは、春川市側から見て西側で隣接する、京畿道(キョンギド)加平(カピョン)郡加平邑(읍:ウプ。日本の「町」に相当する地方自治体)を代表する鉄道駅、「加平」駅。「itx-青春」の全列車が停車し、週末になると明智山(명지산:ミョンジサン)など近隣の山への登山客でにぎわう駅です。

 

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加平駅へやって来たのは今回(2017年9月)が2度目。前年(2016年8月)に加平郡名産のチャツ(잣:松の実)を使用した冷たい麺「チャッククス」(잣국수)の名店である同じ加平邑内の「明智シムトガーデン(명지쉼터가든)」へ行った際に利用して以来です。松の実の香りの効いたスープがうんまかったです(今回は時間の都合で行きませんでしたが)。

 

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加平駅を出て、途中までは京春線の高架橋沿いに歩きます。 

 

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加平駅から徒歩で約24分ほど歩くと、写真のような亀さんの像のある橋にたどり着きます。

 

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こちらはソウルを貫流するあの漢江(ハンガン)の上流、北漢江(プッカンガン)の中州のひとつ「チャラソム」(자라섬:以下「チャラ島」と表記します)へ渡るための橋「チャラ車道橋」です。チャラ(자라)とは韓国語で「スッポン」、ソム(섬)とは「島」の意であり、その島(中州)の形がスッポンに似ているとしてこの名が付いたとのこと(地図で見る限りはあんまし似てないですが……)。なので橋にもスッポンさんの像があるわけです。
ちなみに同じ北漢江の中州であり、チャラ島のすぐ南(下流側。写真の地図では向かって右側の範囲外)に位置するのが『冬のソナタ』のロケ地で有名な「南恰島」(남이섬:ナミソム)です。チャラ島は加平邑ですが、南恰島は北漢江の対岸である春川市に属しています。

 

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チャラ島と北漢江を越える京春線の橋梁をジョイフルトレインが通過。

 

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このチャラ島にはイベント会場にも用いられるキャンピング場があり、中でも毎年10月頃に当地で開催される「チャラ島国際ジャズフェスティバル」は、文化体育観光部(部は日本の省に相当)の選定する「文化観光祭り」の2017年度最優秀祭りのひとつに選ばれるなど特に知られています。
そのキャンピング場の手前には、またもやスッポンさんのオブジェが。実はこのオブジェ、写真2枚目の案内板の周囲に貼られているハングルやひらがな、漢字など複数言語の文字で組み上げられています。

 

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そしてこの日(2017年9月3日)、そのキャンピング場を舞台に開催されていたのが、今回の目的である「第3回加平チャラ島全国マッコリフェスティバル」(제3회 가평 자라섬 전국 막걸리 페스티벌)です。
全国各地の名物マッコリを無料で試飲でき、気に入ったものを購入、その場で味わうことまでできるというこの祭りの存在を知ったのは出発のわずか2日前。どうしても参加したくて、当初予定のスケジュールを出発間際で変更してまで訪問した次第です。

 

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全国各地のマッコリ醸造所のブーステントが並ぶ場内。各ブースではマッコリを中心としたお酒が展示され、そのほとんどが試飲提供されていました。
今回はほぼ全ブースの写真を撮ってまいりましたので、以下、それらブースを出展する醸造所とその展示製品を分かる範囲で列挙、紹介してまいります。

 

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地元・加平邑に本社を構え、私も大好きな「加平チャッ生マッコリ」(가평 잣 생막걸리)の宣伝バルーンが立つウリスル(우리술)のブースは特に目立ちます。早速買って飲みたいところですが、前夜も春川で飲んだばかりですし、今回は普段あまり見ない銘柄を優先したいので試飲だけでがまんします。

 

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ウリスルのブース。写真1枚目のボトルは左から順に「トクソヌン覆盆子(ポップンジャ)マッコリ(톡쏘는 복분자 막걸리:トクソヌンとは「ぴりっとした」、覆盆子とは「キイチゴ」の意)、「トクソヌン沙果(サグァ)マッコリ」(톡쏘는 사과 막걸리:沙果とは「リンゴ」の意)、「加平チャッ生マッコリ」(가평 잣 생막걸리)、「トクソヌンアルパームトンドン」(톡쏘는 알밤 동동:アルパームとは「粒栗」の意、トンドンとは「トンドン酒」を示す)。ちなみに「アルパームトンドン」は東京・大久保通りの韓国食材スーパー「チョンガーネ」でも扱われていました。
写真2枚目の缶は左上から右下に向かって「トクソヌンサルマッコリ」(톡쏘는 쌀 막걸리:サルとは「米」の意)、「加平チャッマッコリ」(가펑 잣 막걸리。こちらは生マッコリではない)、「ミス・リー柚子マッコリ」(미쓰리 유자 막걸리)、「済州柑橘マッコリ」(제주감귤 막걸리)。うち「ミス・リー柚子マッコリ」は一般的なマッコリ(アルコール度数6%前後)よりも度数控えめの3%です。
写真1枚目にあるように、こちらの会場では大半のマッコリが1本2,000ウォン(約210円:2018年2月現在)、2本だとおトクな3,000ウォンで販売されていました。

 

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あくまでマッコリが主役とはいえ、一部ブースではその他のお酒も展示され、同様に試飲することもできました。こちらは京畿道金浦(キムポ)市の醸造所、金浦クムサル濁酒(김포금쌀닥주)の「金浦特酒」(김포특주)。韓国の伝統酒のひとつであり、100日間かけて仕込むことから「百日酒」とも呼ばれます。

 

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同じく金浦クムサル濁酒の製品、写真1枚目左から順に「金浦薬酒」(김포약주)、生マッコリの「生」(생)、同じく「ソノ」(선호)。写真2枚目の向かって右側、アスパルテーム無添加をうたうソノは、緑のボトルが主流である生マッコリでは珍しい青のボトルが特徴的です。よく見るとラベルには日本語表記も。

 

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京畿道楊平(ヤンピョン)郡、砥平(チピョン)酒造場(지평주조장)の生マッコリ。青いラベルは原料中の楊平産の米(쌀:サル)と小麦(말:ミル)の比率が7:3の本格派「砥平生サルマッコリ」(지평 생 쌀막걸리)、オレンジのものは小麦と輸入米の比率が3:7のクラシックタイプ「砥平生イェンマッコリ」(지평 생 옛막걸리:イェンとは「昔」の意)。

 

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京畿道抱川(ポチョン)市、二東(イードン)酒造(이동주조)の生マッコリ。左から順に「二東生マッコリ」(이동 생막걸리)、「二東生サルマッコリ」(이동 생쌀막걸리)、「五穀(オゴッ)生マッコリ」(오곡 생막걸리)。二東酒造の製品は「にっこりマッコリ」のブランドで日本にも輸出されており、ご存じの方も多いことでしょう。個人的に最も付き合いの長いマッコリです。

 

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こちらも京畿道抱川市の醸造所、1932抱川一東(イルドン)マッコリ(1932포천일동막걸리)の生マッコリ「覃恩」(담은:タムン)。いわゆるプレミアムマッコリの部類に入るもので、価格は一般的なマッコリ(日本円で150円前後/750ml)の10倍くらいするようです。人工甘味料不使用。2016年度大韓民国ウリスル(ここでは「民俗酒」の意)品評会で生マッコリ部門の奨励賞を受賞。

 

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同じく1932抱川一束マッコリの「チャルマッコリ」(찰막걸리)。もち米(찹쌀:チャプサル)とうるち米、小麦を「黄金比」で配合し、炭酸を適度に抑えたマッコリだとのことです。

 

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江原道旌善(チョンソン)郡、旌善銘酒(정선명주)の「コンドゥレ生マッコリ」(곤드레생막걸리)と「メミル生マッコリ」(메밀생막걸리)。コンドゥレ(곤드레:チョウセンアザミの葉)とメミル(메밀:ソバ)はともに旌善郡の特産品です。コンドゥレマッコリは2016年春の旌善訪問の際に飲んだことがありますが、日本で販売されているJINROの生マッコリがこれに近い風味でした。 


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慶尚南道キョンサンナムド)南海(ナメ)郡、「タレンイファーム営農組合法人」(다랭이팜 영농조합법인)の「タレンイファーム生マッコリ」(다랭이팜 생막걸리)。人工甘味料無添加。タレンイとは日本でいう「棚田」(階段式の田んぼ)のことで、醸造所の所在地である同郡南面(ナムミョン)、通称「加川(カチョン)タレンイマウル」(가천 다랭이마을)にちなんで名付けられたようです。こちらはボトル3本入りのボックスのみの展示でした。

 

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忠清北道(チュンチョンブット)清州(チョンジュ)市、チョウンスル世宗(セジョン)(좋은술세종:チョウンスルとは「良いお酒」の意)。左から「牛島タンコン伝統酒」(우도땅콩전통주)、「アルパームマッコリ」(알밤막걸리)。済州(チェジュ)特別自治道にある牛島(우도:ウド)名産のタンコン(땅콩:落花生)を材料に用いたという牛島タンコン伝統酒は正直このとき飲んだ記憶がないのですが、調べてみたら液色からしておいしそうです。見かけたら買ってみようと思います。

 

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同じくチョウンスル世宗の蒸留式ソジュ(焼酎)、「イド」(이도)。2016年度大韓民国ウリスル品評会で蒸留式ソジュ部門の大賞を受賞したお酒だそうです。

 

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京畿道龍仁(ヨンイン)市、スルセム(술샘:「酒の泉」の意)の製品。手前左から順に、蒸留式ソジュ「ミル25」(미르25)、「ミル40」、「ミル54」。数字は言うまでもなくアルコール度数です。試飲はいずれもストレートで、ミル54などは喉が焼けそうな強さでした。奥の赤いお酒は「スルチハンウォンスンイ」(술 취한 원숭이:「酔っぱらった猿」の意)という製品で、こう見えても実はマッコリです。赤米と紅麹で仕込むためにこのような色となっているとのこと。おいしかったです。

 

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大田(テジョン)広域市、ウェレンビュー(웰앤뷰)の「ディトッマッコリ」(디톡막걸리:ディトッとは日本でいう「デトックス」の意)。キムチ乳酸菌を用いた製品だとのことです。

 

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忠清南道(チュンチョンナムド)の複数醸造所の生マッコリを扱っていたブース。左は牙山(アサン)市、屯浦(トゥンポ)醸造所(둔포양조장)の「王(ワン)マッコリ」(왕막걸리)。中央奥の黒いラベルは青陽(チョンヤン)郡、農業会社法人アリラン酒造(농업회사법인 아리랑주조)の「ユソンビョル」(유성별:「流れ星」の意)。そして右は公州(コンジュ)市、寺谷(サゴク)醸造園(사곡양조원)の「公州アルパームマッコリ」(공주알밤막걸리)。

 

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江原道華川(ファチョン)郡、華川酒家(화천주가)の「サンチョノマッコリ」(산천어 막걸리)。サンチョノとは同郡特産の淡水魚「ヤマメ」の意。国内外から毎年数多くの観光客が訪問、文化体育観光部の「文化観光祭り」でも最上級の「(韓国)代表祭り」に4年連続で選定された「氷の国華川ヤマメ祭り」(얼음나라 화천 산천어축제)の開催地らしいネーミングです。

 

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慶尚北道キョンサンブット)安東(アンドン)市、檜谷(フェゴク)醸造場(회곡양조장)。創業90年という伝統のある醸造所だとのことです。左のボトルは「安東檜谷ミルマッコリ」(안동 회곡 밀 막걸리)。ラベルが反対側を向いている中央のボトルは「安東檜谷生マッコリ」(안동 회곡 생 막걸리)だと思われます。

 

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緑のボトルの生マッコリで日本でもおなじみの酒類メーカー、麹醇堂(국순당:クッスンダン)のブースもありました。左のボトルは「古」と書いて「イェンナル」(옛날:「昔」の意)、右のボトルは「テバッ」(대박)。60年代の伝統マッコリの味を再現したという「イェンナル」はそのクリーム色の液色からも分かるようにコクがあっておいしかったので、この旅の最終日にKORAILソウル駅に隣接する「ロッテマート」で買って帰りました。両製品ともに全国各地のマートで容易に入手できます。
そして真ん中の缶は「マッコリカーノ」(막걸리카노)という製品で、なんと韓国の人が好むコーヒー「アメリカーノ」風味のマッコリ。これが思いのほか相性がよくて、おいしかったのです。麹醇堂さん、どうか「イェンナル」とあわせて日本でも販売をご検討のほど……。

  

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それらブースの中に、私も好きな「ソン・ミョンソプマッコリ」(송명섭 막걸리)を生産する、全羅北道(チョルラブット)井邑(チョンウプ)市の泰仁(テイン)醸造場(태인양조장)のブースが。そしてそこには、自ら醸すマッコリの名称にもなっている無形文化財保持者、ソン・ミョンソプ(송명섭)名人のお姿も。感激のあまり日本から来たことを伝えて握手を求めると、一緒に写真まで撮っていただいたうえ、なんと名人自らソン・ミョンソプマッコリまで1本無料でくださったという。マッコリフェスティバル会場での記念すべき1本目となりました。このご恩は今後あちこちの酒場で飲んで果たします。

 

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ソン・ミョンソプマッコリの最大の特徴は、甘みが全くないこと。知っていても最初に口にしたときはびっくりしました。なのでどんな料理にも合いますし飽きが来ずゆっくり味わうことがてきます。ソウルだとマート(大型スーパー)で見かけることはまずないですが、たとえば鍾路3街(チョンノサムガ)にある「へンボッカンチッ」(こちらのエントリーにて紹介)だと1本5,000ウォン(約530円:2018年2月現在)で飲むことができます。「おひとりさま」もOKなので強くおすすめの店です。 

 

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場内ではおつまみの料理も販売されており、私が選んだのはマッコリとの相性が抜群のジョン(전:チヂミ)×2。結構なボリュームです。

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続いて購入したのは、京畿道広州(クァンジュ)市の醸造所「大農バイオウリ山参」(대농비아오우리산삼)の「退村(テチョン)トマト生マッコリ」(퇴촌 토마토 생 막걸리)。トマト風味というのがあまりに珍しかったので購入してしまいました。同市内のトマト研究会と共同開発したというこちらのマッコリ、トマト成分が実に10%を占め、当然その液色もピンク色。仕込みの際にはトマトと米を一緒に蒸すことで、殺菌効果に加えリコピン成分の効能を2倍以上に増大する効果があるとのことです。いい具合にトマトの風味が効いておいしかったです。店頭で見かけたらまた買うと思います。
右に写っているのは3皿目のエホバクジョン(애호박전:ズッキーニのチヂミ)やヨングンジョン(연근전:レンコンのチヂミ)などの盛り合わせ。これがまたうんまいのです。
 

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大農バイオウリ山参のブース。左から順に「ホダム南漢山城生マッコリ」(호담 남한산성 생 막걸리)、「ホダム山養山参生マッコリ」(호담 산양산삼 생 막걸리)、私が買った「退村トマト生マッコリ」。 

 

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場内に展示されていた、全国の地域別のマッコリのボトル。写真1枚目から順に京畿道、江原道、忠清北道、そして忠清南道。ところでバナナマッコリやクリームチーズマッコリなど日本でも見かける麹醇堂のボトルが「江原道」にあるのは、韓牛(ハヌ)の産地としても知られる江原道横城(フェンソン)郡に本社を構えているからです。今回初めて知りました。

 

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引き続き全国の地域別のマッコリのボトル。写真1枚目から順に全羅北道全羅南道慶尚北道慶尚南道、そして済州特別自治道
これらの撮影のためラベルを正面に向けて整列させようとしたところ、ペットボトルの空き瓶なのでわずかな衝撃でも倒れてしまい、しかも他のボトルを巻きこんで一斉に倒れるので整列させるのもひと苦労でした。

 

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こちらの「加平チャラ島全国マッコリフェスティバル」、2017年(第3回)は9月1日(金)~3日(日)の3日間開催でした。開場時間は午前10時~午後10時で、他の方のブログを見る限りは昼よりも夜の来場者が多いようです(ステージイベントも夜間に集中)。本年・2018年(第4回)の開催日程はいまのところ未定ですが、「春川タッカルビマッククス祭り」と日程がかぶるようであればまた両方ともに参加したいと思います。
会場のチャラ島キャンピング場へは、KORAIL「加平」駅からであれば徒歩約28分(約1.84km)。路線バスはないようなので(途中まではあっても歩く距離の方が長い)、タクシーのご利用をおすすめします(3,000ウォンちょっとかかるようです)。
前述したように、加平駅には「itx-青春」の全列車が停車します(2018年2月現在)。ソウルの龍山(ヨンサン)駅からは約55分、清凉里(チョンニャンニ)駅からは約40分。ただし加平駅にコインロッカーはないので、日帰りであれば龍山駅コンコースなどのコインロッカーに荷物を預けてから行くことをおすすめします。
それと加平駅は利用客数の割に「itx-青春」の券売機が少ないため、数十人の行列が形成されることがあります。スケジュールが確定しているならば、あらかじめ往復の切符を確保してから行くことを強くおすすめします。

チャラ島キャンピング場(「加平チャラ島全国マッコリフェスティバル」会場)(자라섬캠핑장 (가평 자라섬 전국 막걸리 페스티벌 회장) :京畿道 加平郡 加平邑 達田里 山7。リンク先は会場手前の「チャラ車道橋」です)

  

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チャラ島にはタクシーがいなかったため、再び歩いて加平駅へ。幸いにして券売機が空いていたので、ちょうどやって来た下りの「itx-青春」で南春川駅へ戻ることに。ここぞとばかりに2階席を利用します。

 

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春川市外バスターミナルの荷物をピックアップした後、上りの「itx-青春」まで時間があったのでいったん春川駅へ。駅の外にはこの日が最終日の「春川マッククスタッカルビ祭り」のテントが見えますが、この日はさすがに寄る時間はありません。次回(2018年)、5年連続参加を誓いつつ春川を後にします。

 

それでは、次回のエントリーヘ続きます。

春川の旅[201709_04] - 400年前の孝行息子の伝説を記憶する壁画マウル、そして春川タッカルビの名店を一挙紹介

前回のエントリーの続きです。 

昨年(2017年)9月の韓国・江原道(カンウォンド)春川(チュンチュン)市などを巡る旅、明けて3日目(2017年9月3日(日))の朝です。

ホテルをチェックアウトして最初に向かったのは、KORAIL「南春川」(ナムチュンチョン)駅から徒歩約9分(約600m)の距離にある「春川市外バスターミナル」。「itx-青春(チョンチュン)」も停車する春川市内の2大鉄道駅、春川駅・南春川駅のいずれにもないコインロッカーに荷物を預けるためです。

 

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写真は春川市外バスターミナルにあるコインロッカー。キャリーバッグも入る大型サイズもあります。ただしこちらのコインロッカーは1,000ウォン札限定で、しかも周囲に両替機がないため、前もって同ターミナル内のコンビニで買い物をするなどして1,000ウォン札を用意しておく必要があります。

 

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春川市外バスターミナルの待合室の隣にある売店。何故かミリタリーグッズに特化しており、迷彩模様のバッグや軍の戦闘服とみられる衣服などが所狭しと陳列されています。その名も「軍人百貨店」(군인백화점)。日本の感覚だとバスターミナルの売店とは思えない品揃えですが、以前にも紹介したようにここ春川は南北分断の現場に近いこともあって韓国軍の一大拠点となっており、市外バスを利用する軍関係者の需要があるのでしょう。

 

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春川市外バスターミナルの前を走る大通り「春川路」(춘천로)沿いに北東へ向かいます。写真は春川市中心部を貫流する「孔之川」(コンジチョン)にかかる「孔之橋」から見た風景。

 

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春川市外バスターミナルから春川路沿いに北東へ向かって約19分(約1.38km)ほど歩き、出てくる「孝子上(ヒョジャサン)ギル」(写真1枚目)を右に折れて2分ほど歩くと、写真2枚目のような場所に到着します。
ここから始まる孝子洞(ヒョジャドン)の一帯は、通称「孝子マウル浪漫(ナンマン)コルモク」と呼ばれる壁画マウル(マウルは村、集落の意)と呼ばれ、道路や路地沿いの家の外壁や塀が壁画で彩られています。

 

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孝子マウル浪漫コルモクにある壁画の数々。個人的に大好きな壁画マウルです。

 

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こちらも孝子マウル浪漫コルモクにある壁画の数々。

 

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孝子マウル浪漫コルモク、スマーフ様と綱引きをする子どもたちの壁画。坂道の手すりを綱引きの綱に見立てた秀逸な作品です。女の子のセリフ「도와주세요~」とは「手伝って~」の意。

 

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この前日に訪れた「昭陽江処女像」の壁画もありました。それも私の好きな、衣岩湖の夕陽を背にした絵です。写真2枚目は前回も紹介した「昭陽江処女像」の実写。再現度高いです。

 

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地名にもなっている「孝子」とは「親孝行の子」の意で、韓国ではここ春川市孝子洞やソウル・鍾路区(チョンノグ)の孝子洞などあちこちに「孝子」の名の付いた地名があります。そして当地の孝子洞には、その名にちなんだ一人の孝行息子の伝説が語り継がれるとともに、その息子が母をおぶった姿の「孝子像」が建てられています。

 

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1554年生まれの男性、潘希彦(반희언:パン・ヒオン)。壬辰倭乱豊臣秀吉による2度の朝鮮侵略)で戦死した父の侍墓(シミョ:父母の墓のそばに小屋を建てて暮らすこと)から3年ぶりに実家へ帰ってきたら、年老いた母の病状が悪化していました。看病しても快方に向かわず途方に暮れていたある日、希彦の前に山の神が現れ、「大龍山(テリョンサン)へ行けば3人の死体がある。そのうち真ん中の死体の首を持ち帰り、それを煮込んで母に与えれば病気は治るであろう」と告げます。
そこで希彦が大龍山へ行くと、確かに3人の死体がありました。恐怖を感じながらも山の神に言われたままに行動したところ、母の病気はたちまち快癒。そして死体の首を煮込んだはずの釜の中を覗くと、そこにあったのは首ではなく高麗人参だった、というものです。

この物語には続きがあります。
その後、ある冬のこと。94歳になった母がどうしても季節外れの苺を食べたいというので、希彦は再び大龍山へ。山中をさまよった未にようやく苺を手に入れたものの、その帰り道には大吹雪に遭遇。疲労困憊し精魂尽き果てた希彦の目の前に、今度は虎が現れます。万事休すかと思いきや、その虎は希彦を背中に乗せるや矢のように走り、家まで送り届けると姿を消したというものです。
母はその後95歳で亡くなり、希彦は父のときと同じように3年間の侍墓についたといいます。
そして1608年、当時の王であった宣祖(선조:ソンジョ、1552-1608。第14代朝鮮国王)はこうした希彦の孝行を称え、「孝子門」を建立しました。この孝子門があった一帯が、その後「孝子洞」と呼ばれるようになったと伝えられています。

 

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孝子門は残っていませんが、孝子マウル浪漫コルモクの一角には希彦が母をおぶった姿の「孝子像」(先ほど紹介した写真)が建てられおり、像のそばには物語のあらすじを刻んだ石碑も。

 

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この「孝子マウル浪漫コルモク」へは、前述したようにKORAIL「南春川」駅からだと徒歩で約20分(約1.32km)ほどで到達できます。タクシーでもワンメーターの2,800ウォン(約280円)程度(2018年2月現在)。 

孝子マウル浪漫コルモク(효자마을낭만골목:江原道 春川市 孝子洞 541-6。左記住所およびリンク先は入口付近)

 

孝子マウル浪漫コルモクからはタクシーで南春川駅へ移動、次の目的地へと向かうのでした。

 

構成の都合上、今回のエントリーにおける2017年9月の春川市の旅レポはここで終わりとなりますが(次回エントリーへ続きます)、せっかくの春川市の旅レポですので、ここで私がこよなく愛する春川タッカルビ、そして過去に訪問した春川市内のタッカルビ店について紹介したいと思います。

 

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前回のエントリーでも紹介したように、春川タッカルビとは1960年代初頭、春川のとある飲食店が豚カルビ代わりの酒のおつまみとして、ヤンニョムに漬けた鶏肉の炭火焼きを出したものが始まりとされ、これこそが春川タッカルビの元祖と言われています。その後、1970年代には現在の主流である大きな鉄板で野菜など一緒に炒めるスタイルのものが登場、現在へと至ります。
タッカルビの命というべきヤンニョムソースは店によって異なり、意外と店ごとに個性があります。異材もまた店によって若干異なりますが、ほぼ共通しているのは主役の鶏肉(主にモモ肉)のほかキャベツと長ネギ、トック(떡:うるち米の餅)、そしてサツマイモ。店によってはこれにタマネギ、ケンニッ(깻입:エゴマの葉)などが入ったり入らなかったりします。

 

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一般にタッカルビ店のメニュー表には「1人分」の値段が書かれていますが、基本的にどの店も2人分以上でないと注文を受けてもらえません。値段は安い(2人分でも日本円で2,000円程度)割に量がそれなりにあるので、自信がない場合には残した分の「ポジャン」(포장:包装。ここでは「テイクアウト」の意)の可否を前もって尋ねてみるとよいでしょう。

 

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鉄板で炒めるタイプのタッカルビ店ではほぼ例外なく、お店の方がたまにテーブルを訪れては、火が通るまで具材をかき回してくださいます。「マシッケトゥセヨ」(맛있게 드세요:「召し上がってください」の意)の言葉が食べ始めの合図。そのまま食べても、付け合わせのサンチュなどでくるんでもおいしく召し上がれます。

 

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具材を粗方食べた後には締めとして、残ったヤンニョムソースに刻み海苔やごま油などを加えたご飯を混ぜて炒め、ポックンパ(볶음밥:焼き飯)にして食べることが一般的です。ウドンなとのサリ(사리:麺の総称)を混ぜて食べることもあり、こちらは締めだけでなく最初から混ぜて食べることもあります。また最近はチーズのトッピングを用意し、日本でもブーム真っただ中のチーズタッカルビを味わえる店も増えてきたようです。

春川市だけでおよそ400店以上あるというタッカルビ店は市内の随所に点在しており、中でも中心街の朝陽洞(チョヤンドン)にある「春川明洞タッカルビコルモク」は観光地としても広く知られています。またこれ以外にも同じく中心街の楽園洞(ナグォンドン)、市街地東部の後坪洞(フピョンドン)、市外バスターミナルの南側にある温衣洞(オニドン)、そして市の北東の郊外にある新北邑(シンブグッ)泉田里(チョンジョルリ)の通称「ウィッセムバッ」(윗샘밭:「上泉田」を固有語にしたもの)などの各地域が、タッカルビ店の集まる「タッカルビコルモク」(닭갈비 골목:コルモクとは「路地、横丁」の意)として知られています。

 

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なお、過去に本ブログにて何度か紹介したことのある「太白(テベク)タッカルビ」は、同じ江原道でも遠く離れた南部に位置するかつての産炭地、太白市(当時は三陟(サムチョク)郡)において1960年代に発生、独自に発達したスープベースの料理であり、春川タッカルビとは直接的な関係はありません(こちらも大好きな料理ですが)。

それでは、私が過去に訪問した春川市内のタッカルビ店とその特徴、市内の3大ターミナル「春川駅」「南春川駅」「春川市外バスターミナル」(以下「市外BT」と表記)からのアクセスを紹介してまいります。

 

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「1.5(イルジョモー)タッカルビ」。
2014年9月訪問。1989年創業、あるブログ記事によると、店名の「1.5」とは「1.5倍の満足度を差し上げるという意味」だとか。90年代、カレー粉を混ぜたヤンニョムソースでタッカルビ界に革命を起こした店として知られています。現在も人気店のひとつであり、3年半前の訪問当日も入店までしばらく待たされました。辛さ控えめで、いままで食べてきたタッカルビの中ではたぶん最も日本人向けの味だと思います。
タッカルビは1人分(300g)11,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午後11時(日曜は午後10時まで)、週末は予約不可。
●春川駅:タクシーで約11分(4,700ウォン前後)。行き先は「イルジョモータッカルビ」でまず通じると思います。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<9>番バス(約10~30分おき運行)に乗車、約26分で到着する「後坪3洞住民センター」(후평3동주민센터)バス停で下車、道路を渡って徒歩約2分(約120m)。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<7>番バス(約10~30分おき運行)に乗車、約25分で到着する「後坪3洞住民センター」(후평3동주민센터)バス停で下車、道路を渡って徒歩約2分(約120m)

1.5タッカルビ(1.5닭갈비:江原道 春川市 後坪路 77 (後坪洞 801-13))

 

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「クウミタッカルビ」。
2015年8月訪問。あるブログ記事によると「春川明洞タッカルビコルモク」でも最古の名店「ウミタッカルビ」の経営者の息子さんのお店だとか。クラシックタイプの春川タッカルビらしい、やや辛味の強い味。味で勝負するためエゴマなど香りの強い野菜はあえて使わないのがこちらのお店のポリシーだとのこと。
タッカルビは1人分(250g)11,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午前0時。
●春川駅:道路向かい側の「春川駅」(춘천역)バス停から<12>番バス(約30~40分おき運行)に乗車、約14分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<66>番バス(約15~20分おき運行)に乗車、約21分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<64-2>番パス(約10~30分おき運行)に乗車し、約21分で到着する「世京3次」(세겅3차)バス停で下車、すぐ。 

クウミタッカルビ(구우미닭갈비:江原道 春川市 朔州路116 (後坪洞 847-3))

 

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「ウソンタッカルビ」。
2016年8月訪問。南春川駅そば。後坪洞に本店を構える同名の店の支店で、あるブログ記事によると本家(後坪洞)の息子夫婦が運営する店だとのこと。過去に食べたことのない、ほのかにソーセージのような香りのするヤンニョムが特徴的でした。タッカルビの薬味にワサビが付いてきたのも初めての経験。
タッカルビは1人分(250g)10,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前11時~午後11時、名節(旧正月・秋夕)休業。
●春川駅:京春線電車で南春川駅へ移動(約6分)、徒歩約8分(約520m)
●南春川駅:徒歩約8分(約520m)
●市外BT:徒歩約14分(約930m)

ウソンタッカルビ(우성닭갈비:江原道 春川市 ウムットゥルキル 33 (退渓洞 1137-5))

 

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「元祖スップルタップルコギチッ」。
2015~17年の3年連続訪問。1961年創業、前回も紹介した、1960年代当時の春川タッカルビの原型とされるスップル(炭火)での網焼きタイプのお店です。いつも行列が形成されており、土曜の夜であれば50分ほど並ぶ必要があります(経験談)。独特のヤンニョムで味つけられた鶏肉が猛烈にうんまいです。
ピョオムヌン(骨なし)タッカルビは1人分(250g)10,000ウォン(基本2人分以上注文)。営業時間は午前10時30分~午後9時、名節(旧正月と秋夕)の前日と当日は休業。
●春川駅:徒歩約17分(約1.1km)、または駅前の道路向かい側の「春川駅」(춘천역)バス停から<150>番バス(約15~20分おき運行)に乗車し、約9分で到着する「中央市場/中央初校」(중앙시장/중앙초교)バス停で下車、徒歩約1分(約90m)。タクシーならワンメーターの2,800ウォン。
●南春川駅:駅寄りの「南春川駅」(남춘천역)バス停から<66><150>番バス(ともに約15~20分おき運行)に乗車、<66>番は約14分で到着する「明洞入口」(명동입구)バス停で下車、道路を渡って約2分(約120m)。<150>番は約15分で到着する「中央市場」(중앙시장)バス停で下車、道路を渡って約1分(約90m)。
●市外BT:道路向かい側の「市外バスターミナル」(시외버스터미널)バス停から<7><50><81>番バス(<7>は約15~30分おき、その他は約15~20分おき運行)に乗車し、約14~15分で到着する「明洞入口」(명동입구)バス停で下車、道路を渡って約2分(約120m)。

元祖スップルタップルコギチッ(원조숯불닭불고기:江原道 春川市 楽園ギル 28-4 (中央路2街 70))

 

それでは、次回のエントリーヘ続きます。

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