Twitter https://twitter.com/gashin_shoutan の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

本ブログ開設2周年を迎えて

こんにちは、ぽこぽこ(@gashin_shoutan)です。
本日は千夜誕の9月19日。ということは本ブログの2回目の誕生日でもあるわけです。無事に2周年を迎えられたのも、ひとえに拙ブログをお読みいただいているみなさまのおかげであると存じております。心から感謝申し上げます。

昨年の9月19日に更新したのは、同年5月21日の光州広域市の旅であるこちらのエントリー。そして本日更新したのは同年12月2日の全羅南道新安郡、紅島(ホンド)の旅であるこちらのエントリーです。実時間の1年経過に対し、エントリーはまだ7ヵ月しか進んでいないという。そのためとうとう9ヵ月遅れとなってしまいました。今後はできる限りこのギャップを埋めたいとは思いますが、それでも訪問地には深い思い入れがあるのでどうしても詳しく書きたがるあまり更新が遅くなりがちです。これからの1年はこのギャップを埋めるべく励みたいところです。

さて、今年(2018年)は次の各市郡を巡ってまいりました。

中でも日帝強占期の支配と収奪の象徴たる近代建築を巡った1月の群山の旅、昨年に続き多くの出会いに恵まれた5月の光州の旅、そして1948年の「済州4.3事件」の虐殺現場を巡った6月の済州の旅は強く印象に残っています。いずれ必ずや本ブログにて紹介したいと思います。
これからも本ブログでは、強く共感するある方の言葉を借りると「モヤモヤしない」韓旅の魅力を私なりの言葉でみなさまに伝えてゆきたいと存じています。そして本ブログが誰かにとって韓国訪問の契機となるようであれば、これ以上の喜びはありません。引き続きご愛顧いただけますと幸いに存じます。 

 

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2018年1月20日全羅南道群山市「京岩洞チョルキルマウル」にて撮影。 

  

宇治松千夜さんの誕生日と3期決定を祝って。
2018年9月19日 ぽこぽこ

新安の旅[201712_04] - 奇岩絶壁と人々の生活が共存する丸ごと天然記念物の島「紅島」を山と海から堪能する

 前回のエントリーの続きです。

昨年(2017年)12月の全羅南道(チョルラナムド)新安(シナン)郡などを巡る旅の2日目(2017年12月2日(土))です。 

 

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前泊した黒山島(フクサンド)から高速船(韓国では「快速船」と表記)に乗船して約30分、次の目的地の島が近づいてきました。

 

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そうして到着したのが、黒山島と並ぶ今回の旅もうひとつの目的地、紅島(홍도:ホンド)
紅島は西海海上に浮かぶ、面積6.47平方km、海岸線の長さ約19.7kmの小島で、黒山島と同じく全羅南道新安郡黒山面(フクサンミョン)に属しています。人口は500人弱。写真3枚目の案内図(上が北西)にもあるように真ん中よりやや南寄りがくびれた形をしているため、カイコの繭にたとえられることもあります。木浦港からの直線距離は約109.6km、黒山島からでも約26.2km離れており、黒山島以上の絶海の孤島です。黒山島同様に島全域が「多島海海上国立公園」に属しているほか、後述する奇岩絶壁の数々に加え固有種を含む豊かな生物層を持つことから、1965年には島そのものが天然記念物第170号「紅島天然保護区域」に指定されています。

 

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紅島の名は、砂岩とともにこの島の地質を構成する珪岩が紅褐色を帯びているうえ、日没時になると夕陽で島全体が赤く染まって見えることに由来するとされています。
紅島に人が居住し始めたのは約500年前とされています。その後は中国との交易における中間寄港地となり、向かい風の北西風を避け追い風の東南風を待った場所として「待風島(テプンド)」と呼ばれていました。一方で朝鮮時代中期(16世紀)の『新増東国輿地勝覧』や同後期(19世紀)『燃藜室記述』などでは「紅衣島(ホンイド)」と、また18世紀の『粛宗実録』では「紅魚島(ホンオド)」と表記されています。その後、日帝強占期には「梅嘉島」(メガド。日本語読みは不明)と呼ばれ、光復(日本の敗戦による開放)後には「紅島」となり今日へと至ります。

 

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紅島には大別して2つのマウル(村、集落の意)があります。ひとつは島がくびれた場所に位置する、旅客船ターミナルもある島最大の集落「紅島1区(イルグ)」で、またの名を「テバンミッ(대밭밑)」あるいは「竹項(죽항:チュッカン)」といいます。もうひとつは島の北西にある小さな集落「紅島2区(イーグ)」で、またの名を「ソッキミ(석기미)」あるいは「ソックム(석금)」といいます。
上の画像は、今回訪問した紅島1区の地図です。

 

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紅島沿岸旅客船ターミナル。高速船や遊覧船が発着する埠頭を含む1階部分を自由通路としたピロティ形式の大きな建物です。
まず困ったことに、このターミナルにはコインロッカーがありません。平地が少なく坂道の多いこの島でキャリーバッグを引きずっての観光はちょっと難があります。以前の高興(コフン)郡の旅のような派出所への荷物預けをしようにも、そもそも派出所らしきものが見当たりません。

 

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ターミナル1階の遊覧船チケット売場の方に荷物を預かってもらえないかどうか尋ねたところ、やはりNGとの答えが。ちょうどそのとき、売り場の方の友人と思しき一人の女性が登場。聞くと女性は近くのフェッチッ(刺身店)通りにあるお店のサジャンニム(直訳すると「社長様」。ここでは「店主」の意)だそうで、昼食を条件に荷物を預かってくださるとのこと。まさに渡りに船です。元々刺身は食べるつもりだったので、お願いすることにしました。

 

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身軽になったところで、まずは紅島1区の街に繰り出します。街とは言っても人口500人弱の小さな集落ではありますが、年間20万人以上が訪問し週末には総人口を上回る人々が宿泊するという観光客相手の第3次産業で生計が成り立つこの街は、人口の割には規模が大きく活気もあります。観光産業に大きく依存するのは、この島が岩盤質であるうえ平地面積もごくわずかなため、農産物がほとんど収穫できないという背景もあります。

 

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紅島1区の路地裏。

 

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旅客船ターミナルから島(紅島1区)側に向かって右側の斜面には、丘の上の展望台に向かって伸びる木製デッキの階段が。登ってみることにしました。このデッキの階段は紅島の最高峰であるキッテ峰(깃대봉:368m)山頂へ向かう登山道で、また紅島2区へと向かう唯一の陸路の一部でもあります。

 

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デッキの途中、海抜100mくらいの位置にある展望台から眺めた紅島1区。右(西側。写真1枚目)は紅島海水浴場。中央(2枚目)にある大きな運動場は黒山初等学校紅島分校(初等学校は日本の小学校に相当)の校庭。左(東側。3枚目)には旅客船ターミナルが見えます。
この島もまた、どこを切り取っても絵になります。

 

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デッキのある斜面一帯は紅島固有種の植物「紅島ウォンチュリ」(홍도원추리。学名:Hemerocallis hongdoensis)の群生地であり、7月から8月にかけては黄色い花が一帯を埋め尽くし、その姿はもう美しいことこの上ないそうです。ウォンチュリ(원추리)とは日本でいうワスレグサ(属の植物)のこと。調べてみましたが和名はまだないようです。

 

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先ほど展望台から見えた紅島1区の西岸、紅島海水浴場にも行ってみました。
ここは紅島唯一の海水浴場であり、砂浜ではなくモンドル(몽돌:「小石」の意)が敷き詰められた浜となっているため「モンドル海水浴場」「モンドル海辺」の異名で呼ばれることもあります。

 

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紅島海水浴場周辺には刺身店と思しきいくつかの飲食店舗が。すべて閉まっていましたが、これはただ単にシーズンオフだからのようです。

 

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海水浴場の中央に位置する桟橋から眺めた紅島1区方面。この桟橋からは紅島2区へ向かう渡船が発着しているとのこと。陸路もありますが自動車の通行はできず(そもそも紅島には乗用車がない)、しかも前述したようにキッテ峰越えの険しい山道がおよそ3.5kmも続くため、この渡船が2区へ行く事実上唯一の交通手段となっています。

 

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再び紅島1区の街へ。
その中で気になったのが写真の店舗。看板には「紅島マッコリ・ホンハッパジョン」とあります。ホンハッパジョンとはホンハッ(ムール貝)とパ(ネギ)入りのジョン(日本でいうチヂミ)のこと。
注目すべきは窓に並べられたドリンク類の缶やボトルのうち左端。手書きで「홍도막걸리(紅島マッコリ)」と書かれた謎のボトルが。他がすべて市販のラベルそのままなのに対し、これだけが唯一手書きという。しかもなんだか味わいのある字体です。「家醸酒(가양주:カヤンジュ)」などと呼ばれる自家製のマッコリなのでしょうか。興味津々です。店自体は営業中のようですが、この日はたまたま閉まっていたのが悔やまれます。
ちなみに窓の右下に大書きされた「멀미약」とは「モルミ薬(ヤク)」といい、乗り物酔いの薬のことです。旅客船ターミナルそばの売店でもあちこちで見かけました。本土からだと2時間10分の船旅でしかたどり着けない離島ならではの風景です。

 

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紅島1区の街並み。建物の屋根が赤褐色で、また水タンクが青色で統一されています。「Daum地図」の2012年時点の航空写真ではグレーのスレート屋根や緑色の防水ウレタン塗装の屋根が多くみられるのに対し、近年になって街づくりの一環から「紅島」のイメージカラーを含む色に統一したようです。

 

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そうしているうちに、もうひとつの楽しみである遊覧船の出発時刻が迫ってまいりました。
この遊覧船、紅島を構成する無数の奇岩絶壁の中でも選りすぐりというべき10の風景「紅島十景」をはじめとする「紅島33秘景」を船上から巡るという、まさしく紅島観光のクライマックス的存在です。

 

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「紅島十景」をはじめとする「紅島33秘景」(一部除く)を紅島全図にプロットしたもの。以下、本エントリーではこの地図を「上図」と呼びます。

 

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遊覧船は午後0時30分に旅客船ターミナルを出航。
韓国での遊覧船の旅は初めて。なんだかワクワクします。

 

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道僧岩(도승바위:トスンバウィ。バウィとは「岩」の意。上図①)。
紅島33秘景の中で最初に訪れたこちらの屹立する岩は、合掌した僧侶の姿をそのまま岩に打ち込んだようだとしてその名が付けられたそうです。
この道僧岩には、ひとつの悲しい伝説が込められています。
遠い昔、ある一人の心優しい漁師がいました。身寄りのない漁師にとって唯一の家族は1頭の飼い犬であり、それはもう我が子のごとく愛情を注いでいました。そんなある日、その漁師は漁の途中で嵐に遭い、帰らぬ人となります。主人の遭難を知らないその犬は何も口にせずに毎日浜に出て、主人を呼ぶかのように地平線へ向かって声がかすれるまで吠え続け、ついに力尽きてしまいます。折りしもその場所を通りがかった道僧が、主人を待ちわびたあげく哀れに死んでいった犬の魂を祈るために石で仏像を造り、それがこの道僧岩になったというものです。いまでも嵐の日には、主人を呼ぶ犬の鳴き声が聞こえるとか。

 

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南門(남문:ナンムン。上図①)。
紅島の南側に位置し、大きな穴の開いたその姿がまさしく紅島の「南門」のようだとしたその名が付いたこちらの岩は、韓国のテレビ局で一日の始まりと終わりに流れる国歌「愛国歌(エグッカ)」でかつて冒頭部の背景写真に用いられていたことから、紅島の数ある奇岩の中でも抜群の知名度を誇り、紅島十景でも筆頭の第1景に挙げられています。その穴は小型船舶が通過できるほど大きなもので、ここを通った人は無病息災に加え願いが成就し幸運を得られるといい、また漁船がここを通り過ぎれば豊漁が約束されるという言い伝えがあるとのことです。 

 

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道僧岩と南門が一望できるこのポイントは絶好の撮影スポットであり、遊覧船もしばらく留まります。この前日、黒山島のタクシー一周観光でご一緒した夫婦らしき男女も乗船しており、お互いに記念写真を撮りまくっていました。
余談ですが、こちらの男女や私を含め、前夜に「黒山ビーチホテル」に宿泊した3グループ10名全員が同じ高速船で紅島を訪れ、同じ遊覧船に乗船していたという。みんな考えることは同じです。

 

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たまたま撮影したこちらの洞窟は紅島33秘景ではないですが、他の方のブログで指摘されているのを見て、天井から木が逆さに生えていることを知りました。そのために「妖術洞窟」(요술동굴:ヨスルトングル。上図②)と呼ばれているそうです。

 

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こちらの海蝕洞窟も紅島33秘景ではありませんが、「鳳凰鳥洞窟」(봉황새동굴:ポンファンセトングル。上図③)と呼ばれています。

 

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シルグムニ窟(실금리굴:シルグムニグル。上図④)。
紅島十景のうち第2景に挙げられるこちらの海蝕洞窟は、かつてのこの島に流刑されたあるソンビ※が、雨風を避けられるのみならず目前には大海が広がり、そのうえ周囲には美しい草花が咲き誇るという広い洞窟を見つけ、一生涯ここで伽耶琴(カヤグム)を弾いて余生を楽しんだという言い伝えがあります。内部は200人以上が休憩できるほど広いそうで、実際に伽耶琴を奏でたならば美しい旋律が鳴り響いたことでしょう。名称の「シルグムニ」の意味はどうしても分かりませんでした(グムは「琴」を指すと思うのですが)
※ソンビ(선비):朝鮮時代に両班(ヤンバン)の血を引いた人で、学識が高く礼儀正しくて義理と原則を重んじる清廉かつ高潔な人物の総称

  

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刃岩(칼바위:カルバウィ。上図⑤)。
紅島33秘景のひとつ、写真中央やや左のまるで刃物のように尖ったこちらの岩は、あらゆる災厄と悪鬼から紅島を守るために島の守り神が立てたという言い伝えがあるそうです。別の角度から見ると「サントゥ」(상투:かつて朝鮮の既婚男性が結い上げた髷)に似ているとして「サントゥ岩」という名前で呼ばれることもあります。

 

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虹岩(무지개바위:ムジゲバウィ。上図⑥)。
紅島33秘景のひとつ。西海(黄海)の水平線を夕焼けが染めるときに五色の光がこの岩を照らすと、まるで天女が虹に乗ってきたようだとしてこの名がついたとされています。特に雨が降った翌日はより一層美しいとのこと。五色の光には新婚旅行を無事なものとする力があるとされ、さらに岩が五色の光に染まったときに祈ると百年偕老に加え子を授かるという伝説から、新婚旅行のカップルたちに人気の場所だそうです。

 

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こちらは紅島33秘景ではなく、また当日は気が付きませんでしたが、その形から北韓地図岩(북한지도바위:プッカンチドバウィ)と呼ばれているとのこと。北韓とは朝鮮民主主義人民共和国のこと。言われてみれば確かに似ています。

 

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燕岩(제비바위:チェビバウィ。上図⑥)。
紅島33秘景のひとつで、春になるとツバメが最初にこの岩に集まることから名付けられたといいます。写真の角度からだとそうでもないですが、少し違う角度から見ると岩そのものもツバメによく似ています。灯台がなかった時代には漁師たちにとって航路の標識代わりとなったとのこと。

 

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柱岩(기둥바위:キドゥンバウィ。上図⑦)。
紅島33秘景のひとつで、ギリシャ神殿の柱を彷彿とさせるこちらの岩は、紅島全体を支える柱だという言い伝えがあるそうです。柱状の岩の間の海蝕洞窟にはこの島の主の大蛇が住んでおり、むやみに入ってはならないとされています。

 

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蒸し餅岩(시루떡바위:シルトックバウィ。上図⑧)と、その沖合の酒煎子(ヤカン)岩(주전자바위 :チュションジャバウィ。上図⑨)。
ともに紅島33秘景のひとつで、蒸し餅岩はその形がシルトック(小豆と餅が層をなして重なり合う蒸し餅)を上に乗せたようだとして、また酒煎子岩はその形がヤカンそっくりだとして名付けられたものです。遠い昔に竜王が臣下たちのために山海の珍味を集め宴を開いたところ、そのとき用意したお酒入りの酒煎子と蒸し餅が石化してこれらの岩になった、という伝説があるそうです。

 

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先ほど訪問した紅島海水浴場の沖を通過します。

 

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大門岩(대문바위:テムンバウィ。上図⑩)。
紅島33秘景のひとつ。大門とは韓屋(ハノク)などの路地に面した門を指します。2つの岩の裂け目であるこの場所は、かつて清(中国)との貿易船が嵐に遭遇したときの避難場所だったそうで、不思議なことに船がここに入った後には嘘のように風がおさまり、次の日は無事に航行できたという言い伝えがあるそうです。

 

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こちらは先の大門岩の写真の左側を拡大したもの。中央、2つの岩が寄り添うように建つその形から「キス岩」(키스바위:キスバウィ)と呼ばれているそうです。

 

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万物相(만물상:マンムルサン。上図⑪)。
紅島十景のうち第5景に挙げられるこちらの岩壁は複雑な形をしており、見る人によって、さらには光の具合によって全く異なる形に見えることからこの名が付いたとされています。かつてこの岩一体は凶悪な海賊たちの根城であり、ある道士が彼らを改心させようと幾万もの風物を作ったところ、それを見た海賊たちは善良な人になったという伝説から、この万物相にはすべての悪を善良な心に変える不思議な力があるとされています。

 

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石花窟(석화굴:ソッカグル。上図⑫)。
紅島十景のうち第3景に挙げられるこちらの天然洞窟は、夕陽に照らされると洞窟内が五色絢欄に輝き、東洋最高の日没が見られるとされる場所です。日没時に遠くの漁船からこの洞窟を眺めると、その内部で太陽の光が反射する様子がまるで桃源郷の入口のようだという話から、コッ(꽃:花)洞窟という別名も持っています。

  

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紅島2区(ソッキミマウル)の全景。
紅島1区よりはずっと小さな街です。とはいえそこには人々の暮らしがあります。いつかこちらも訪問してみたいですね。

 

f:id:gashin_shoutan:20180913221441j:plain紅島2区近くの丘の上には、日帝強占期の1931年に建てられ今日も現役の「紅島灯台」(홍도등대:ホンドトゥンデ。上図⑬)があります。

 

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遊覧船は紅島2区からさらに北へ進みます。

 

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独立門岩(독립문바위:トンニンムンバウィ。上図⑭)
紅島十景のうち第8景に挙げられるこちらの岩は、その形がソウルにある独立門とそっくりであることから、1919年の「3.1運動」以降は専ら「独立門岩」と呼ばれているとのことです。紅島の北西部に位置し、また先ほど紹介した南門と対になる存在でもあることから「北門」(북문:プンムン)とも呼ばれています。

 

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こちらはソウル・西大門区(ソデムング)にある本物の「独立門」(史跡第32号)。角張った感じなど確かに似ています。なお独立門については本ブログのこちらのエントリーにて詳しく紹介しています。

 

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紅島の北端部を回り、東海岸側へ。

 

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悲しい岩礁(슬픈여:スルプニョ。上図⑮)。
紅島十景のうち第6景に挙げられるこちらの岩礁にもまた、悲しい言い伝えが残されています。
遠い昔、ある心優しい夫婦が7人の子どもと一緒に幸せに暮らしていました。ある年の名節旧正月と秋夕の総称)、祭祀の供物と子どもたちの新しい服を買うため本土へ出て行きます。昔のことですので、本土への往復だけでも何日がかりもの旅です。両親の帰りが待ち遠しい7人の子どもは山に登っては水平線を眺め、船が来るのを待っていました。そんなある日、ついに両親の乗った帆船が姿を現します。喜びに沸き立っていたところ、あろうことか突風により船は大波にさらわれ転覆してしまいます。これを見た7人は両親の名を叫びながら荒れる海に歩み入り、そのまま固まってしまったのがこれらの岩礁だというものです。いまでも岩礁が荒波をかぶると7人の哀れな魂が両親の名を呼んでいるようだとして、悲しい岩礁または「七人きょうだい岩」(일곱남매바위:イルゴンナンメバウィ)と呼ばれています。 

 

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遊覧船がこの「悲しい岩礁」近くに停船していたところ、突如1隻の漁船(先の写真の1枚目の奥に写っていた船)が衝突しそうな勢いで接近してきました。危ないなと思ったらその船は遊覧船に横付けし、甲板で活魚をさばいてその刺身とソジュを乗船客に売り始めます。聞くとこの海域名産のウロク(우럭:クロソイ)の刺身だとのこと。3万ウォン(約3,100円:当時)と結構高めですが、どうやら遊覧船の名物のようで、これがまた飛ぶように売れるのです。

 

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高めの値段とはいえ、こんな機会そうそうないので買ってみました(船上だったのでソジュは遠慮)。下ろしたてのウロク、身がぷりぷりしてうんまかったです。酢コチュジャンとカンジャン(韓国醤油)、ワサビの薬味セットもしっかり付いてきます。

 

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ホンオ(洪魚)窟(홍어굴:ホンオグル。上図⑯)。
紅島33秘景のひとつであるこちらの海蝕洞窟は、5トン級の小型船舶であれば10隻あまりも入れるほど広いそうで、かつて近海特産のホンオ(홍어:ガンギエイ)漁の船が強い北西の風に遭ったとき中に入って待避したことからこの名がついたそうです。

 

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ノジョク山(노적선:ノジョクサン。上図⑰)。
無人灯台が建つこちらの小島もまた紅島33秘景のひとつであり、遊覧船が巡る最後のスポットです。

 

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紅島遊覧船は1日2便(午前7時30分発・午後0時30分発)、所要時間は約2時間。午後の便であれば、木浦(モッポ)沿岸旅客船ターミナルを朝一番に発つ高速船(今回私が黒山島から乗った便)で訪問し、紅島発の木浦行き最終便(後述します)で帰る日帰りの旅でも十分利用できます。料金は大人25,000ウォン(約2,500円)。乗船に際してはパスポートなどの身分証明書の提示が必要です。紅島訪問に際しては強くご利用をおすすめするアクティビティです。

 

f:id:gashin_shoutan:20180913222143j:plain午後3時40分に紅島を発つ木浦行き高速船の最終便まではまだ時間があります。荷物回収とあわせて、サジャンニムと約束していた昼食をとることにします。

 

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旅客船が停泊する旅客船ターミナル下の埠頭と別の埠頭とを結ぶ通路には複数のフェッチッ(刺身店)が並び、観光客のお腹を満たすべく近海の海の幸を用意しています。

 

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こちらが荷物をお願いしたフェッチッ。他のお店と同じく店頭に並ぶ生け簀の中に、クンソ(군소:アメフラシ)さんの姿があることを見逃していませんでした。
前回の釜山の旅の際に影島(ヨンド)の蓬莱市場(ポンネシジャン)で干物が売られていたのを見て以来、ずっと気になっていたクンソ。それからわずか2週間ほどで巡って来た、しかも活き物を口にできるチャンスです。貝の刺身盛り合わせと一緒に注文。

 

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サジャンニムにより手際よく捌かれるクンソ。

 

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そしてやって来たクンソ。刺し盛りのアワビやナマコとは異なり、こちらは生ではなく茹でるのでかなり縮みます。人生初アメフラシ、身に予想外のうまみがあってうんまかったです。調べたところ、クンソはその身のつぶつぶの模様が黄金色に近いほどおいしいとか。くっきりとした黄金色の模様のある今回のクンソさんは大当たりだったのかもしれません。もちろん刺し盛りもおいしかったです。

この後、高速船に乗ろうと旅客船ターミナルへ向かっていたところ、不意に私を呼び止める声が。振り返ってみると、その主は私と同様にこの前日の黒山ビーチホテルに宿泊した7人の壮年男女のグループ。中には遊覧船上で少し会話した男性の姿も。遊覧船を楽しんだ後、別の刺身店で盛り上がっていたようです。勧められるままにソジュやチョゲタン(貝鍋)のおすそわけを頂戴しました。こういうノリは大好きです。ある方の「日本の人だからソジュよりビールがいいでしょ」という言葉がとても印象に残っています。バレバレですね……

 

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そして午後3時40分発の高速船に乗り、紅島を後にします。
天然記念物の島、紅島。奇岩絶壁と人々の暮らしが共存する島。さらば紅島、また来る日まで。

 

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南海高速(ナメコソク)の高速船「南海スター」。この前日に黒山島への往路に乗船した東洋高速(トンヤンコソク)フェリーの船とは異なり、こちらの窓は無色透明でした。
高速船の船内では、前日の黒山島一周観光で、またこの日の遊覧船でもご一緒した夫婦らしきお二人とまたまた再会。お二人はこの夜は木浦に泊るそうで、木浦でのお食事に誘われますが、私はこの日のうちにソウルへ戻る予定があったので惜しくも断念。お二人にはいろいろとお世話になりました。本当にありがとうございました。

 

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高速船は定刻通りに木浦沿岸旅客船ターミナルに到着。タクシーで木浦駅へ移動し、午後6時40分発のKTXに乗車、ソウルへと戻ります。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

新安の旅[201712_03] - 2年越しの念願のあの場所へ、そして島特産のホンオフェに舌鼓を打つ黒山島の夜

前回のエントリーの続きです。

昨年(2017年)12月の全羅南道(チョルラナムド)を巡る旅の1日目(2017年12月1日(金))、新安(シナン)郡の黒山島(フクサンド)訪問記の続きです。

午後6時。この日の宿である「黒山ビーチホテル」の夕食の時間です。
ホテル1階の食堂にはこの日の全宿泊客が集合。私のほかは島内一周観光でご一緒した夫婦らしき男女、そして50代前後とみられる男女7人ほどのグループ。ホテルの近くには飲食店がないので、みんな待ちかねていたのでしょう。

 

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運ばれてきた料理。美しい菱形に並べられます。
ここで初めて従業員と思しき方が登場しますが、私を港まで迎えに来て島内一周観光タクシーを手配してくださった男性も配膳を手伝います。やはりこの方がサジャンニム(直訳は「社長様」。ここでは「主人、オーナー」の意)なのでしょうか。

 

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料理は総じておいしかったのですが、中でも特によかったのは写真2枚目、近隣の多島海名産のウロク(우럭:クロソイ)と思しき焼き魚、そして3枚目のヘムルポックム(シーフードの炒め物)。
しかし、この日はこの後にも食事を予定していました。黒山島に来たからには、どうしても口にしたいあの特産品です。そのため焼き魚やヘムルポックムなどメインの料理は完食しつつも、パンチャン(おかず)については少しだけ残さざるを得ませんでした(すみません……)。

旅客船ターミナルがあるため飲食店が集中する曳里(イェリ。里は日本でいう「大字」に相当)までは徒歩で20分近くかかります。タクシーを呼んでもらうようお願いしたところ、なんとホテルの車に乗せて無料で連れて行ってくださることに。承諾したのも運転も、やはりあのサジャンニムらしき男性。ホテルと名のつく施設で一人の方がここまで何役もこなすのは初めての経験です。

 

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曳里に到着。すでにあたりは真っ暗です。
この日2度目の夕食の前に、黒山島に来たらどうしても行きたかった場所へ向かうため裏路地を進みます。

2015年11月、ある方のツイートに添えられた韓国のどこかの街角の写真がたまたま目に入りました。夕暮れどき、狭い裏路地を挟んだ2軒の酒場を撮ったその写真は、私の旅情をかき立てるのに十分すぎるほどでした。写っていた店の屋号などからそれが黒山島の曳里であると知って以来、どうしてもその場所を訪れたいとの願いは募る一方。

 

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それから2年、やっと念願かなってあの場所に立つことができました。
情感あふれる島の酒場のたたずまい、狭い裏路地の向こうにはどこか寂しげに灯る街灯、そして遠くには曳里港の海。夢にまで見たあの光景を目の当たりにし、しばし感慨にふけっていました。写真は同じ位置で私が撮影したもの。私が見たあの写真とは比較自体が申し訳ないほどつたない写真ではありますが、それでも私があの日感じた旅情がその断片でもみなさまに伝わることを願っています。

 

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電気が灯っていた両側のお店に入りたい思いもありましたが、今回はすでにチェック済みである別のお店へ向かいます。あの場所の2つの酒場の玄関が面する裏路地沿いにある「ソヒャンジョン」。距離は東側にわずか20mほどです。

 

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ソヒャンジョンのメニュー表。注文するのはもちろん、その名を全国に轟かせる黒山島特産のホンオ(홍어:ガンギエイ)の刺身、ホンオフェです。ホンオの旬は11月から4月までとされていますので、12月のこの日はまさに旬真っただ中。「싯가(時価)」とあるメニューを頼むのは28回目の渡韓にして初めて。確認すると45,000ウォン(約4,730円:当時)とのこと。

 

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やって来たホンオフェ。とてもいい色です。こちらのお店では、酢コチュジャンまたはゴマ油に塩を溶いたものにつけて食べます。
まずはひと口。ああ、うんまい。ホンオ特有のコク深さがたまりません。
軟骨魚類であるホンオは血液中に尿素を含むため、時間が経てば経つほど身が発酵し、それに伴う加水分解により発生するアンモニアの強烈な臭いを放つことになります。ホンオを口にした経験がなくとも、「ホンオフェ」という名前とその臭いをワンセットでご存じの方は少なくないことでしょう。しかしこちらのホンオフェ、アンモニア臭はあるとはいえ、過去にマート(大型スーパー)で購入したものに比べるとずっと控えめです。それもそのはず、輸入品はもとより国内産ホンオでも「陸地」(ユクチ。韓国では「本土」をこう呼ぶ)で食べるものに比べると、ホンオの水揚げ地である黒山島は食卓に供されるまでの経過時間がはるかに短いため、発酵もさほど進んでいないというわけです。これが本場・黒山島でのホンオフェの特徴とされています。
加えて黒山島近海のホンオには、その表皮に生息するある種のバクテリアが他地域産のものよりも多く、それらが発酵を促進するため、他地域産にはない黒山島ホンオ特有の味があるのだそうです。

 

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ホンオフェとくれば、お酒はもちろん相性抜群のマッコリ。アルカリ性アンモニアとマッコリに含まれる有機酸との中和作用により、お腹にやさしい組み合わせだとされています。こちらのお店で出て来たのは、全羅南道木浦(モッポ)市に本社を構える「宝海(ポへ)醸造」の「純喜(スニ)マッコリ(순희막걸리)」。こうした酒場では珍しく、生ではない熱処理されたマッコリです。要冷蔵の生マッコリは離島だと輸送上の問題があるのかもしれません。

 

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私の正面、店奥側の座卓では若い男性のグループがサムギョプサルを焼いていました。彼らと親しげに話していた、やはり若い男性店員さんの友達だと思われます。その店員さんが気を利かせて、サムギョプサルを少しだけ分けてくださいました。
ホンオに豚肉といえば、やるべきことは決まっています。パンチャン(おかず)のキムチをあわせて、ぱくり。
なにこれ、超うんまい。
ホンオフェと豚肉、そしてキムチを重ねて食べるものを韓国では「三合(삼합:サマッ)」と呼び、ホンオの最もぜいたくな食べ方のひとつとされています。三合に用いる食材は、正式には「スユク(수육)」とも呼ばれる茄で豚に「ムクンジ(묵은지)」とも呼ばれる酸っぱい熟成キムチですが、焼いたサムギョプサルに普通のキムチでもそのうまさは十分すぎるほど感じられます。この組み合わせを考えた人、一体何者なのでしょうか。尊敬に値します。
ちなみに、ホンオ(漢字で「洪魚」とも書く)と相性抜群の濁酒(탁주:タクチュ。マッコリなどの濁り酒)を飲みつつこの三合を食べることを、その頭文字を取って「洪濁(홍탁:ホンタク)」といいます。

 

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こちらのお店「ソヒャンジョン」の営業時間は不明です(確認してきませんでした……すみません)。黒山港旅客船ターミナルからは徒歩約6分(約480m)で到達できます。おいしい料理に加えホスピタリティの高さ、次回の黒山島訪問時にもまた寄りたいと思うお店です。

ソヒャンジョン(소향정:全羅南道 新安部 黒山面 曳里2キル 70 (曳里 194-20))

 

そうしてホンオフェを食べている間、下手っぴな韓国語で店員さんたちと歓談していると、なんと店員さんの車でホテルまで送っていただけることに。結局、この夜の曳里への移動は往復ともご厚意に甘える格好となりました。
韓国の地方旅ではときどき、このような不意の親切に遭遇することがあります。それを期待してはいけないと思いつつも、ついつい甘えてしまうのが正直なところです。私も今後もし日本を訪れた旅行者との出会いがあったならば、韓国からの旅行者に限らず、同じように温かく接しなければと強く思います。

 

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部屋に戻り、ベランダから眺めた夜の曳里港。空にはぽっかりお月様。

 

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明けて旅の2日目、2017年12月2日(土)の朝です。この日も黒山島はいい天気。

 

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黒山ビーチホテルの朝食は、写真のチョンボッチュッ(アワビ粥)。飲食店ならば15,000ウォン(約1,500円)前後はするメニューです。これがまたうんまい。しかも、おかわり自由という。他の宿泊客の方々に配慮しつつ、2回もおかわりしてしまいました。付け合わせのパンチャンはまたも美しい配列。

チェックアウト。受付はもちろんあのサジャンニムです。ホテルの送迎バスで他の宿泊客と一緒に旅客船ターミナルまで送ってくださるとのことでしたが、朝の黒山島散策を兼ねて一度くらいは曳里まで歩いてみたかったので今回は遠慮し、徒歩でホテルを発ちます。
サジャンニムはじめ黒山ビーチホテルのみなさま、大変お世話になりました。おかげで充実した旅となりました。

 

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ホテルのある鎮里(チルリ)から旅客船ターミナルのある曳里まで、キャリーバッグを引きつつ海岸沿いを歩きます。

 

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写真はその途中、漁船の帰りを待ちわびる漁港の人々。絵になります。

 

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黒山港旅客船ターミナルに到着。とはいえまだ1時間ほど余裕があるので、早朝の曳里の街を散策します。

 

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旅客船ターミナルがある曳里は島最大の漁港がある港町であり、また島の玄関でもあるため多くの飲食店や民宿が軒を連ねています。飲食店は特産のホンオをはじめ近海の海の幸を扱う店が大半で、ほとんどの屋号が「○○수산(水産)」となっています。店先にはそれら海産物たちの生け簀が。黒山島に限らず韓国あちこちの市場などでよく見る光景です。

 

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干物にするために吊るされた魚。一見してホンオかと思いましたが、どうやらアグ(アンコウ)のようです。

 

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昨夜も訪問したあの場所へ。日中はこんな感じです。

 

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昨夜ホンオフェを食べた「ソヒャンジョン」がある曳里の裏路地。

 

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曳里の裏路地。人はなぜ裏路地に惹かれるのか。

 

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旅客船ターミナルの近くには、私のような観光客目当てとみられる露店がいくつか出ていました。
せっかく黒山島へ来たのですから、ひとつくらいはホンオの土産物を買って帰りたいところです。まあ自分用だけどな!

 

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購入したのは写真の干しホンオ(パッケージの電話番号は隠しています)。おいしかったです。軟骨のコリコリした食感がまたたまりません。ジップロックで二重に包んでも同じバッグの布製品に移るほどには臭いが強いのが玉にキズですが。

 

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黒山港旅客船ターミナルのそばには、旅客機の形のバルーンが置かれていました。「空港建設で雄飛する黒山島」と書かれています。
黒山島では現在、2020年の開港を目指して「黒山空港」が建設中です。滑走路の長さは1,200m弱と短いためプロペラ機しか発着できませんが、それでも完成後にはソウル・金浦空港から1時間以内で結ばれるようになるとのこと。木浦港から1時間50分、ソウル駅からだとKTX乗車時間&乗船時間だけでも計4時間半を要する現状と比べると劇的な時間短縮となります。写真2枚目は本年(2018年)6月に金浦空港にて撮影した宣伝パネル。

 

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f:id:gashin_shoutan:20180807225457j:plainそろそろ乗船時間。黒山港旅客船ターミナルに戻ります。
写真2枚目はターミナル内にあった「海洋安全体験館」というスペース。同様のスペースは木浦港沿岸旅客船ターミナルにも、黒山島の次に訪問した島の旅客船ターミナルにもありました。韓国ではこのようなスペースを通じ、海難事故への啓発を行なっています。
こうした啓発活動は以前からあったとは思いますが、やはり2014年4月16日のセウォル号沈没事故が少なからぬ影響を与えているのでしょう。あの当時「いかに韓国がダメか」に終始した日本メディアの報道とその消費者たちとのスタンスの違いが如実に示されています。洞爺丸や紫雲丸の沈没事故などで海難事故の悲惨さとその対策の難しさを幾度となく体験しているはずなのですが、対象が韓国だとこうまで認知が歪むという現実。

 

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木浦港発のこの日最初の高速船が黒山港にやって来ました。正面から見ると双胴船であることがよく分かります。黒山港を午前9時50分に発つこの船で、次の目的地の島へと向かいます。
本音を言えばもう少しじっくりと黒山島内を見物したかったのですが、スケジュールの都合に加え、海が荒れやすい冬期は欠航のリスクも高まるため、乗船できるときに乗っておかなければなりません。
さらば黒山島。いつか必ず再訪することを誓い、島を後にします。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

 

【おまけ】
以下、私の経験をもとに、黒山島の旅のTips的なものを簡単に紹介いたします。お役に立てるようであれば幸いです。

 

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●黒山島へのアクセスについて
黒山島へのアクセス手段は全羅南道木浦市KTX湖南線(ホナムソン)の終点「木浦」駅からタクシーで約5分の距離にある「木浦沿岸旅客船ターミナル」発の高速船に限られています。
木浦と黒山島とを結ぶ高速船は1日4往復。うち2往復は黒山島のさらに西に浮かぶ天然記念物の島・紅島(ホンド)発着であり、1往復は黒山島発着、そしてもう1往復は黒山島のはるか南西沖、韓国最南西端の島でもある可居島(カゴド)発着の便です(以上、2018年8月現在)。運行会社は「東洋高速フェリー」(동양고속훼리:トンヤクコソクフェリー。以下「東洋高速」といいます)と「南海高速」(남해고속:ナメコソク)の2社であり、奇数日と偶数日とで各便交互に入れ替わります。
写真1枚目は前回も紹介した木浦沿岸旅客船ターミナルのチケットカウンター。人が並んでいる向かって左側はこの日私が利用した東洋高速の窓口で、南海高速の窓口(写真中央の「15:30」と表記がある場所)とは別になっています。写真2枚目は前述の黒山港旅客船ターミナル。こちらは手前側が南海高速、向こう側が東洋高速とチケットカウンター自体が分かれているのでので要注意です。
なお高速船は悪天候に弱いため、海が荒れた場合には欠航となります。黒山島が位置する西海(黄海)の外海はただでさえ海が荒いうえ、特に海が荒れやすい高い冬には欠航率も高まるようです。不意の欠航に伴う旅程変更を考慮し、余裕を持たせたスケジュールでのご訪問を強くおすすめいたします。
黒山島を含む西海南部海域の天気・波高予報は、韓国気象庁のこちらのページで確認できます。

 

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●黒山島行き高速船の予約方法について
今回の旅で乗船した高速船全3便のうち、前回エントリーの冒頭にて紹介した木浦発黒山島行きの便は、韓国海運組合の提供する無料アプリ『가보고싶은섬』(カボゴシップンソム:「行ってみたい島」の意)を通じて予約購入しました。画像左上はアプリの初期表示画面、続いて右上は目的地の選択画面、そして下段は木浦発黒山島行きの便の一覧画面です(いずれも日本語表記は説明のため挿入したものです)。「等級」の欄が船室の1階と2階とで分かれていますが、黒山島行きについては通常は同料金です。このアプリ上では黒山島が「大黒山島」(대흑산도:テフクサンド)と表記されており、「ㅎ」ではなく「ㄷ」の項目にあるので注意が必要です。
このアプリの利点は、韓国の「信用力ード」(신용카드:シニョンカードゥ。一般名詞としては「クレジットカード」の意ですが、狭義では韓国国内で発行されたカードに限定されます)でなくとも支払いに使用できること。この障壁のため、いままで何度泣かされてきたことか。
反面、このアプリは日本(韓国国外)ではダウンロード不可という難点があります(前述のリンク先へ直接飛んでも不可)。そのため私は前回の釜山訪問中に入手しました。韓国の島旅をご検討の方は、別の韓旅の際に前もってのダウンロードをおすすめします。
それと、妙なことに2017年12月の運航分は南海高速の便が表示されず、同月2日(旅の2日目)に乗船を予定していた同社の2便については前日の木浦入りまで予約ができませんでした。ちなみに本エントリー更新直前の2018年8月20日時点で同年10月の運行分を検索したところ、今度は逆に東洋高速の便が表示されない現象が発生したものの、8月28日時点では正常に表示されるようになりました。このアプリではタイミングによりたまにこうしたことがあるようですが、一方の会社が運休するわけではないのでその点はご安心願います。 

 

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●黒山島の公共交通について
今回の旅では利用しませんでしたが、黒山島内には路線バスが運行されています。
いずれの路線も、起点は黒山港旅客船ターミナルから近い「曳里(예리:イェリ)」バス停(写真1枚目)。黒山ビーチホテルなどがある「鎮里(질리:チルリ)」方面へ向かう「서면방면(西面方面)」と、島東岸の「沙里(사리:サリ)」方面へ向かい島を時計回りに一周する「동면방면(東面方面)」の2系統に大別され、前者については「鎮里」の次の「邑洞(읍동:ウプトン)」止まりの便と、さらに島西岸の「比里(비리:ピリ)」方面へ向かい島を反時計回りに一周する便の2種類があります。島を一周する便は西面・東面とも1日4便で、それぞれ最終便は夏期と冬期とで時刻が若干異なります。2枚目の図は前回も紹介した黒山島の地図(バス停を緑色で示しています)、そして3枚目の写真は「曳里」バス停の時刻表(2017年12月時点:日本語表記を一部補足)。

 

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●黒山島の島内観光について
前述したように黒山島内の路線バスは便数が限られているため、島内の観光には前回エントリーにて紹介したタクシー貸切での島内一周観光をおすすめいたします。
私が利用したときの所要時間は約1時間半で、料金は1人あたり15,000ウォン(約1,580円:2017年12月当時)。3人で利用したので単純計算だと計45,000ウォンとなりますが、これが各業者均一の1台あたり料金かどうかは分かりません。どこかのサイトで1台60,000ウォン(約6,000円:2018年8月現在)という情報を目にしたこともありますので、まずは金額を確認のうえご利用いただくことをおすすめいたします。

 

f:id:gashin_shoutan:20180807222147j:plain●黒山島の宿泊について
黒山島には前述した島唯一のホテル「黒山ビーチホテル」(写真)のほか、いくつかの民宿が営業していますが、私が調べた限り大手ホテル予約サイトではいずれも検索結果に表示されませんでした。
設備もきれいで料理もおいしく、なにより前述したようにサジャンニムらしき男性が親切でしたので、個人的には黒山ビーチホテルのご利用をおすすめいたします。ネット予約はなく電話受付オンリーですが、私のつたない韓国語でもご理解いただけたうえ、宿泊料も現地払い(前金不要)ですのでさほどハードルは高くないと思います。私が利用したときは1人1部屋、1泊2食付きで84,000ウォン(約8,820円:2017年12月当時)でした。繁忙期には若干高くなるようです。

黒山ビーチホテル(흑산비치호텔:全羅南道 新安部 黒山面 黒山一周路 180-19 (鎮里 31-1) 電話予約:061-246-0090) [HP]

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