Twitter https://twitter.com/gashin_shoutan の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

大邱の旅[201706_05] - 大邱が生んだ偉大な歌手を再描写する「金光石タシクリギギル」、そして「北城路練炭プルコギ」

前回のエントリーの続きです。

韓国・大邱(テグ)広域市を巡る旅、2日目(2017年6月10日(土))です。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130438j:plain
大邱十味のひとつ「ヌルングクス」の名店「桐谷ハルメソンカルグクス」を出て、近くの「桐谷ネゴリ」(동곡네거리)バス停へ。大邱広域市の西側に隣接する星州(ソンジュ)郡からはるばるやって来た農漁村<250>番バスに乗車し、都市鉄道(地下鉄)2号線「テシル」(대실)駅へ。漢字で書けそうですが表記できない駅名です。写真はテシル駅付近の街並み。前回のエントリーでも紹介した2号線の終点「汶陽」(ムニャン)駅と同じ大邱広域市達城(タルソン)郡多斯邑(タサウプ)内ですが、こちらはかなり都会的な感じです。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130450j:plain
30分ほど乗車した後、同線の「慶大病院」(キョンデビョンウォン)駅にて下車。駅の構内には、次の目的地を示す壁画が。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130530j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130538j:plain
同駅3番出口を出て、大邱を東西に貫通する大通り「達句伐大路」(タルクボルデロ。「達句伐」とは新羅時代の大邱の名称)沿いに東へ向かって7分ほど歩くと、写真のギターを弾く男性の像が右手に現れます。
こちらの人物は、かつて韓国で一世を風靡した大邱出身のシンガーソングライター、金光石(김광석:キム・グァンソク、1964-1996)さん。代表曲のひとつ「二等兵の手紙」(이등병의 편지)と「宛てのない手紙」(부치지 않은 편지)は、日本でも公開された2000年の映画『JSA』(原題『공동경비구역 JSA』:共同警備区域 JSA)でそれぞれ挿入歌・エンディングテーマに用いられましたので、その歌声をご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130545j:plain
この像から始まる南北約350mの川沿いの小道は、「金光石タシクリギギル」(김광석다시그리기길:「金光石再描写の道」の意)、あるいは「金光石ギル」(김광석길:「金光石の道」の意)などと呼ばれています。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130624j:plain
金光石さんは1964年1月22日、大邱広域市(当時は慶尚北道大邱市)中区大鳳洞(テボンドン)の在来市場「防川市場」(방천시장:パンチョンシジャン)にあった電業社一家の末子として生まれました。1984年、グループ「歌を探す人々」(노래를 찾는 사람들。通称「ノチャッサ」)の一員として歌手デビュー。その後はグループ「動物園」(동물원:トンムロン)を経て、1989年にソロデビューを果たします。それから1995年にかけて発表した6枚のソロアルバム、そして通算1,000回を上回る小劇場でのライブ活動を通じて、韓国を代表する大衆歌手、90年代における韓国モダンフォークの後継者としての地位を不動のものとしました。
そうした人気絶頂の中の1996年1月6日、何の前触れもなく突然、わずか32年弱の人生を自ら終えた金光石さん。老若男女を問わず広く愛されたその人柄と歌の世界を偲んで、出生地である大鳳洞・防川市場のそばを流れる新川(シンチョン)沿いの道をその肖像の壁画で彩り、両端には像を建て、数々のヒットナンバーを流すことでここ大邱が生んだ偉大なフォークシンガーの生涯を「タシクリギ」(再描写)しようとしたのが、こちらの小道「金光石タシクリギギル」です。
現役当時のファンはもちろん、生前の活躍を知らない若い世代もこの小道を数多く訪問するようになり、それら観光客目当てのカフェなども多数立地して、現在では大邱を代表する観光スポットのひとつとなっています。

私にとって「金光石タシクリギギル」の訪問は、前回・2016年秋に続き2度目。しかし、そのときと大きく違うのは、私自身もまた金光石さんの歌を聴くようになったこと。なので前回以上に強い思い入れがあります。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131045j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131053j:plain
金光石タシクリギギルの壁面には、代表曲のひとつ「二等兵の手紙」を題材にした演劇や、ビデオコンサートと思しきポスターの数々が。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130704j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130642j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130650j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130711j:plain
金光石タシクリギギルを彩る壁画の数々。
(壁画の写真に限り、2016年10月に撮影したものを含みます。)

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130742j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130719j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130811j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130822j:plainこれらの壁画は、11組の作家たちが思い思いのテーマ・構図で金光石さんを描いたものです。この道を訪れた人々は、そのひとつひとつに見入っていました。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130833j:plain
大型バイクにまたがる金光石さんの壁画。40歳になったら、バイクに乗って世界一周の旅をするのが夢だったといいます。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130916j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103130926j:plain
これら壁画の中でも、個人的にいちばん好きなのがこちらの「ソギネ布車」(석이네 포차:「布車」とは屋台の意)。屋台の主人になった金光石さん。壁画の前には屋台を模した木製のテーブルと椅子が設けられており、誰でも座って記念写真を撮ることができます。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103130942j:plain
壁画を見て涙が出てきたのは初めての経験でした。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131022j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131029j:plain
南北に伸びる金光石タシクリギギルの南端にある、ギターを抱えて立つ金光石さんの像。北端(達句伐大路側)の座ってギターを弾く像と同様に、多くの方が像に寄り添っては記念写真を撮っていました。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131118j:plain
金光石タシクリギギルの途中には野外音楽堂があり、この日も男性シンガーがギターの弾き語りで金光石さんのナンバーを歌っていました。とてもいい感じで、少しうっとりしてしまいます。休憩を兼ねてしばらく観覧。

「金光石タシクリギギル」へは、都市鉄道(地下鉄)2号線「慶大病院」駅3番出口を出て「達句伐大路」沿いに東へ進み、徒歩約7分(約450m)でギターを弾く像のある入口に到達できます。

金光石タシクリギギル(김광석다시그리기길:大邱広域市 中区 達句伐大路450ギル ー帯)

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131159j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131217j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131233j:plain
前述したように、金光石タシクリギギルのすぐ隣には、金光石さんも生まれ育った在来市場「防川市場」が広がっています。1945年の光復(日本の敗戦による解放)後、日本や旧満州中国東北部)などから帰ってきた人々が糊口をしのぐために始めた商売に端を発し、その後6.25(朝鮮戦争)期の避難民の流入により拡大したというこちらの市場は、そばを流れる新川の防築(堤)沿いに発展したことから「防川」の名が付いたとされます。
写真1枚目の市場入口、同2枚目の地図からも分かるように、現在では隣接する「金光石タシクリギギル」と一体化した街づくりがなされています。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131321j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131256j:plain
飲食店が並ぶ市場の一角を歩いていると、ところどころからギター片手に金光石さんのナンバーを弾き語る歌声が。他地域の在来市場の大半がそうであるように、ここ防川市場もまた衰退の一途にあるとのことでしたが、満席だったり行列が形成された飲食店もいくつか見かけました。「金光石タシクリギギル」との相乗効果で息を吹き返しつつあるのかもしれません。

 

すっかり日も落ちた中、夜の大邱の街を歩いてみたくなり、寄り道をしながら大邱駅そばのホテルヘ帰ることに(後で計算したら3kmくらい歩いていました)。
いったんホテルへ戻り、近くのマート(大型スーパー)で買い物をした後、再び外出。時計はすでに午後11時を回っています。ずいぶん遅くなりましたが、お待ちかねのディナーの時間です。

  

f:id:gashin_shoutan:20180103131448j:plain
やって来たのはまたまた北城路(プクソンノ)。今回の旅で3度目の訪問です。今回はこの道を通り抜けた先にある、名物の「北城路練炭プルコギ」の店が密集する場所が目的地です。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131456j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131507j:plain
そしてやって来た、通称「北城路練炭プルコギ通り」。午前0時近いというのに照明が煌々と点り、まるで不夜城のようです。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131522j:plain
それらのお店の中から、今回は事前に調べてきた「テヌンチッ」へ。仮設テントみたいな店内は、午前0時近いにもかかわらず来客でにぎわっています。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131727j:plain
豚肉を用いた名物の練炭プルコギは、5,000ウォン(約500円:当時)の「小」から20,000ウォン(約2,000円)の「特大」まで4サイズ。「大」を注文しようとしたところ「一人では無理なので中にしなさい」とのこと。いつもなら大丈夫アピールをしつつ「大」を強行して注文するところですが、今回は「中」10,000ウォンを注文(というのも実は昼過ぎから夕方にかけて食べた2食がまだお腹に残っていたので……)。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131620j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131630j:plain
そしてやってきた主役の練炭プルコギ。見るからにうまそうです。しかもなかなかの量。
ぱくり。見た目通りにうんまい。豚肉とほどよい甘さのヤンニヨム、そして炭焼き特有の香ばしさが絶妙なハーモニーを奏でています。
練炭プルコギの背後に写っているコーラは、パンチャン(おかず)のカンジャン(醤油)漬けタマネギなどと同じく、練炭プルコギに必ず付いて来るおまけだそうです。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131639j:plain
なんと、こちらのウドンも練炭プルコギのおまけ。大邱練炭プルコギ屋さんにはつきものの存在のようです。おいしかったです。
練炭プルコギが結構な量であるうえ、ウドンまで付いてきたので「中」でも満足な食べ応えとなりました。今回ばかりは店員さんの言うことを聞いて正解だったと思います。次回はもっとお腹が空いているときに来店して「大」以上にチャレンジしたいものです。

こちらのお店「テヌンチッ」の営業時間は午後5時~午前4時、不定期休とのこと。都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅4番出口からは徒歩約15分(約980m)同(モノレール)3号線「達城公園」駅4番出口からは徒歩約8分(約510m)で到達できます。

テヌンチッ(태능집:大邱広域市 中区 達城路22ギル 88 (寿昌洞 95-1))

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131749j:plain
韓国有数の工具店の街、北城路。なんと24時間営業のエ具店もありました。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131911j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103131834j:plain
帰り道に通った大邱駅の構内。ムグンファ号しか止まりませんが、大邱駅は眠りません。

そしてホテルへ戻り、明けて最終日となる3日目・6月11日(日)。
1日1便のティーウェイ航空成田行きは大邱国際空港を午前11時ちょうどに発つため、最終日は観光スポットを巡る時間はありません。なのでこの日の予定は朝食と土産物の購入のみ。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103131954j:plain
ホテルを出てまず向かったのは、都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅。この駅のすぐそばを通る大通り「国債報償路」(クッチェボサンノ)沿いに、大邱十味の筆頭格「タロクッパ」を招う24時間営業の店がいくつかあるからです。前回の旅ではそれらの中でも元祖とされる「クギルタロクッパ」(こちらのエントリーにて紹介)に入りましたが、今回はその少し西側、ある方におすすめいただいた「校洞(キョドン)タロ食堂」へ。店の前では福岡の豚骨ラーメン店のような食欲をそそる匂いが漂います(タロクッパは牛骨スープですが)。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103132000j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103132009j:plain
注文したのはもちろん看板メニューのタロクッパ、7,000ウォン(約700円:当時)。最初からスープに白米が投入された一般的なクッパとは異なり、スープと白米が「タロ」(따로:「別々」の意)で出てくるのでこの名前が付いたとされます。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103132017j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103132025j:plain
やって来たタロクッパ
その名の通り白米は別に盛られています。牛骨ダシのガツンとしたコクのあるスープがうんまい。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103132032j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103132050j:plain
左横にある赤黒いかたまりは、タロクッパにつきものの「ソンジ」(선지:牛の血を固めたもの)。前回のクギルタロクッパではスープに入った状態で出てきましたが、こちらのお店では別の皿に盛られて出てきました。適宜削ってタロクッパに投入したりそのまま食べたりします。スプーンを入れるときの「パリパリ」とした独特の触感がたまりません。
お店の壁にはソンジの栄養分と効能について書かれたパネルもありました。カルシウム含有量は牛肉の3倍近く、鉄分は6倍以上とのこと。

こちらのお店「校洞タロ食堂」は24時間営業。都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅4番出口からは徒歩約4分(約240m)です。

校洞タロ食堂(교동따로식당:大邱広域市 中区 国際報償路 56 (前洞 27-11))

 

f:id:gashin_shoutan:20180103132112j:plain
校洞タロ食堂を出て、今回の旅最後の目的地となるパン屋さん「サムソンパンチッ本店」へ。
1957年創業、日本では「サムソンベーカリー」の名で紹介されることもあるこちらのパン屋さんは、名物の「トンオククスパン」(통옥수수빵:トンオククスとは「丸ごとコーン」の意)で特に知られる名店で、「一度しか食べたことのない者はいない」(一度食べたら誰もが必ずリピートする)と言われるほどやみつきになるという味から「麻薬パン」(마약빵)の異名を持っています。

 

f:id:gashin_shoutan:20180103132129j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103132220j:plain

f:id:gashin_shoutan:20180103132224j:plain
写真2~3枚目は日本に持ち帰ったトンオククスパン。1枚目の写真にもあるように、つぶつぶコーンがぎっしりと詰まった、ほどよい甘さのコーンペーストが猛烈にうんまいのです。まさしく麻薬パン。トンオククスパンは1個1,600ウォン(約160円:当時)。今回は調子こいて7個も買って帰ってしまいました(ちなみに8個以上の購入だと箱に詰めてもらえるようです)。

こちらのお店「サムソンパンチッ本店」の営業時間は午前8時30分~午後9時、名節(旧正月・秋夕)休み。都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅1番出口からは徒歩約3分(約180m)です。ちなみにソウル・東大門(トンデムン)の「現代シティアウトレットモール東大門店」こちらのエントリーにて紹介)の地下2階など全国各地に支店があり、麻薬パンはこれら支店でも購入できるとのことです。 

サムソンパンチッ本店(삼송빵집 본점:大邱広域市 中区 中央大路 395 (東城路3街 7-6)) [HP]

f:id:gashin_shoutan:20180103132506j:plain
そして写真の「郭病院ゴンノ」(곽병원건너)バス停から<급행(急行)1>バスに乗車、大邱国際空港へ移動し、帰国の途に着いたのでした。


2017年6月の大邱の旅は、今回で終了となります。お読みいただきありがとうございました。
次回からは、2017年9月の大田(テジョン)・春川(チュンチョン)・加平(カピョン)・ソウルの旅をお送りします。

 

【おまけ】
大邱の都市鉄道(地下鉄)の駅にはあちこちにコインロッカーが設置されていました。一挙紹介しますので、参考になるようであれば幸いです。  

f:id:gashin_shoutan:20180106204536j:plain
都市鉄道(地下鉄)1号線「大邱」駅。

 

f:id:gashin_shoutan:20180106204549j:plain
都市鉄道(地下鉄)2号線「パンコゲ」駅。

 

f:id:gashin_shoutan:20180106204605j:plain
都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅。

 

f:id:gashin_shoutan:20180106204617j:plain
都市鉄道(地下鉄)2号線「半月堂」駅。

 

f:id:gashin_shoutan:20180106204642j:plain
都市鉄道(地下鉄)2号線「慶大病院」駅。

 

f:id:gashin_shoutan:20180106204831j:plain
こちらは都市鉄道ではないですが、KORAIL「大邱」駅。さすがに充実しています。

今年もありがとうございました。

こんばんは、ぽこぽこ(@gashin_shoutan)です。

本年(2017年)も残すところあと1時間。本年も拙ブログをお読みいただき、ありがとうございました。
2017年中は、幸いにして全9回の渡韓の機会に恵まれることができました。それらのうち現時点で執筆途中の大邱(テグ)広域市の旅は5回目で、次回更新予定の大邱の最終回に加え、まだあと4回分もの旅レポを残したままでの越年となりそうです。
ひとつひとつの訪問地を掘り下げて書いてしまうので、どうしても遅筆となってしまいがちです。すみません……

とはいえ、それぞれの訪問地ではうんまい料理に加え、楽しかったり勉強になったり、そして史実と向き合ったりなどみなさまにお伝えすべき体験をしてきたつもりですので、時間をかけてでも必ずや拙ブログにて報告できればと思います。どうか気長にお待ちいただけますと幸いに存じます。

そんなわけで拙ブログでは来たる2018年も引き続き、韓国の旅の魅力をお伝えできればと思っています。そして私のつたない旅レポや写真でも、いつか誰かにとっての韓旅の参考となるようであれば、これ以上の喜びはありません。

それでは、2018年がみなさまにとって輝かしい1年となりますように。

 

f:id:gashin_shoutan:20171231222709j:plain2017年10月29日、全羅南道宝城郡筏橋邑「金範佑の家」にて撮影。

大邱の旅[201706_04] - 近代建築巡り、そしてノンメギメウンタン&ヌルングクスで念願の「大邱十味」制覇

前回のエントリーの続きです。

韓国・大邱(テグ)広域市を巡る旅、2日目(2017年6月10日(土))です。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211232947j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211232952j:plain
ヒウム日本軍「慰安婦」歴史館を出て、同歴史館と慶尚監営(キョンサンガミョン)公園との中間地点に位置する「大邱近代歴史館」に寄ってみました。
その名の通り、近代以降の大邱の歩みを紹介するこちらの施設は日帝強占期である1932年に建てられた旧朝鮮殖産銀行大邱支店の建物で、光復(日本の敗戦による解放)後は韓国産業銀行大邱支店を経て、2011年より現在の大邱近代歴史館として運営されています。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233025j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233004j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233212j:plain
近代西洋建築によく見られる高い天井からは大きなシャンデリアが。かつての銀行らしく、大金庫もありました。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233039j:plain
1930年代の大邱をCGで再現、この大邱近代歴史館(朝鮮殖産銀行大邱支店)を含め近代建築の立ち並ぶ当時の市内をバスで巡る映像展示。部屋もバスの車内を模しています。いちばん印象に残った展示物でした。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233146j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233255j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233510j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233450j:plain
大邱近代歴史館の2階では「학교종이 땡·땡·땡」(「学校の鐘キンコンカン」の意)と題し、初等学校(日本の小学校に相当)とその前身である国民学校で用いられた教科書などの教材を展示する特別企画を開催中でした。こういう企画は好きでついつい見入ってしまいます。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233350j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233339j:plain
学用品の数々。白黒の迷彩模様の服は「教練服」(교련복:キョリョンボク)といい、主に1970~80年代、高等学校での「教練」(大学生・高校生を対象とした軍事教育の授業)の際に生徒たちが着用していた衣服で、その世代にとってはある種の郷愁を感じるアイテムのようです。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233651j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233700j:plain
フロア内にはこうした企画展示の定番、懐かしの教室の再現展示も。日本でも温暖な地域で育った身としては、アルマイト製の弁当箱がいくつも乗った教室中央のストーブが新鮮です。

こちらの施設「大邱近代歴史館」、開館時間は午前9時~午後7時(11~3月は午後6時)、入場は開館時刻の30分前まで。毎週月曜日(公休日の場合はその翌日)、元日・ソルラル(旧正月)・秋夕(チュソク。旧8月15日)の各当日は閉館です。入場無料。
都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」(チュンアンノ)駅4番出口から西へ向かって徒歩約5分(約330m)の場所にあります。前回のエントリーで紹介した「慶尚監営公園」を過ぎてすぐなので分かりやすいです。
なお、今回紹介した特別展示「학교종이 땡·땡·땡」はすでに終了しておりますのでご注意のほど。

大邱近代歴史館(대구근대역사관:大邱広域市 中区 慶尚監営ギル 67 (布政洞 33)。大邱広域市有形文化財第49号) [HP]

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233714j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233730j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233743j:plain
大邱近代歴史館からは北へ針路をとり、前夜にも訪れた北城路(プクソンノ)へ。日帝強占期に建てられた日本家屋や、同時期築と思しき西洋建築があちこちに残っていることが、日中に訪れるとより一層分かります。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233755j:plain
やって来たのは、これまた前夜に訪れた「北城路工具博物館」。見ての通り日本家屋をリノベーションし、博物館として再活用している施設です。なぜ「工具」の博物館なのかというと、かつての大邱邑城(ウプソン)を破壊して造られたこの北城路は日本の商人によりほぼ独占されていた街路で、光復(日本の敗戦による解放)により空家となった店舗に工具や機械を扱う店が入居したことに加え、朝鮮戦争(6.25)以降には米軍の廃工具を扱う店が西寄りの達城(タルソン)公園付近に多数出現したこともあって、いまではこの一帯が国内最大級の工具商店街となったためです。近年では東城路(トンソンノ)寄りの東側がおしゃれなリノベカフェの並ぶ街に変貌しつつある一方で、西寄りには工具店がまだまだたくさん営業しています。

さてこちらの「北城路工具博物館」、開館時間は午前10時~午後6時(冬季は午後5時)、休館日は日曜と公休日とのこと。なので今回の訪問タイミング(土曜日の午後2時)であれば開いているはずなのに、なぜかこの日は施錠されていました。めげずにいつかリベンジしたいと思います。

北城路工具博物館(북성로공구박물관:大邱広域市 中区 太平路28ギル 24 (太平路2街 19))

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233845j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233906j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233948j:plain
北城路から少し南へ下り、やって来たのは「ジンコルモク」という名の路地。
「ジン」(진)とは「長い」を意味するギン(긴)の慶尚(キョンサン)方言、「コルモク」(골목)とは「路地、通り」の意なので直訳すると「長い路地」となりますが、実際の全長は100mあまりと短い道です。
かつては「達城徐氏」と呼ばれる裕福な一族が暮らしていた地域で、その後この通り沿いに建てられた近代建築が現在も残ることから、かつての宣教師の旧宅が残る「青蘿の丘」(청라언덕:チョンナオンドク)などと並んで近代大邱を象徴する街とされており、「中央路」駅寄りの入口には「근대路의여행」(近代路の旅行)と書かれた案内板もあります。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234000j:plain
壁面を飾るジンコルモクの地図。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211233917j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233929j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211233937j:plain
「鄭(チョン)小児科医院」。1937年に建てられた大邱最初の西洋式住宅で、ジンコルモクを象徴する存在となっています。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234057j:plain
ジンコルモクの途中にある「ジンコルモク食堂」。いい酒場だそうです。いつか行ってみたいですね。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234044j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211234031j:plain
ジンコルモクの片隅には、大邱生まれの書画家である徐丙五(서병오:ソ・ビョンオ、1862-1935。号は石斎(석재:ソクチェ)。写真1枚目の壁画の中央右の男性)氏を記念する空間が設けられていました。ここ大邱で嶠南(キョナム)書画研究会を発足させ、朝鮮美術展覧会の書道部門の審査員も務めた人物です。

先ほど紹介したジンコルモクの案内板のある入口へは、都市鉄道(地下鉄)1号線「中央路」駅1番出口から徒歩約2分(約150m)ほどで到達できます。

ジンコルモク(진골목:大邱広域市 中区 ジンコルモッキル 一帯。リンク先は「鄭小児科医院」の位置)

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234111j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235120j:plain
ジンコルモクの南端から近い都市鉄道(地下鉄)2号線「半月堂」(パノルダン)駅から電車に乗って40分、到着したのは大邱広域市達城(タルソン)郡多斯邑(タサウプ)、2号線の西側の終点「汶陽」(ムニャン)駅。初の達城郡入りです。市の中に郡が含まれるというのは日本では考えられないことですが、韓国の地方自治体制度では広域市の中に郡が属することがあり、大邱の達城郡以外にも釜山の機張(キジャン)郡や仁川の江華(カンファ)郡・甕津(オンジン)郡などの例があります。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234125j:plain
こちらの駅の特徴は、ホームドアの代わりにワイヤーを用いた昇降式ホーム柵が設けられていること。かつては光州(クァンジュ)広域市の都市鉄道(地下鉄)1号線「鹿洞」(ノクトン)駅にも設置されていましたが、現在では韓国で唯一だそうです。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234650j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211234619j:plain
汶陽駅へやって来たのは、大邱十味のひとつに数えられるメニューであり、この駅の近くに複数の専門店が立地する「ノンメギメウンタン」(논메기매운탕)を味わうため。
「ノンメギメウンタン」とは、直訳すると「水田ナマズの辛い鍋」の意。一般にメウンタンとは海鮮を辛いスープで煮込んだ鍋料理のことですが、海鮮の代わりにここ多斯邑名産のメギ(메기:ナマズ)を用い、昆布と大根をベースにニンニク、唐辛子粉をたっぷり入れたスープで煮込んだ達城郡オリジナルの料理を指します。
私のようなノンメギメウンタン目当ての来訪者を迎えようと、汶陽駅前にはそれら飲食店の送迎用のバンが何台も。目的の店らしき屋号をつけた車もいましたが、駅からも遠くないことですし、散歩がてら歩いてゆくことに。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234752j:plain
道すがら、250万都市とは思えないのどかな田園風景が広がります。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211234839j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211234931j:plain
そうして15分ほど歩くと、今回の目的のお店「サンジョンノンメギメウンタン」に到着。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235052j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235141j:plain
入店。いつもなら「中」を頼むところですが、今回はこの直後にも食事が控えているので、ぐっとこらえて「小」22,000ウォン(約2,200円:当時)を注文。とはいえ出てきた「小」もなかなかの量です。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235148j:plain
主役のナマズさんは3尾。お店の方が見事な手際で身と骨を分けてくださいます。その他の具はプチュ(ニラ)、タンミョンなど。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235217j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235203j:plain
そしてお待ちかねの実食。身は淡白だけど旨みがあります。たぶんあるであろう淡水魚ならではの風味も、ほどよい辛さとコクのあるスープがいい具合に抑えています。うんまい。白米も付いてくるので、適宜スープに入れて食べます。
今回はしませんでしたが、スープにスジェビ(すいとん)を入れて食べるとまた格別とのことです。

こちらのお店「サンジョンノンメギメウンタン」の営業時間は午前9時~午後9時、名節(旧正月・秋夕)休業。前述したように都市鉄道(地下鉄)2号線「汶陽」駅から徒歩で15分ほどですが、こちらのお店もまた同駅からの送迎用バンを用意しているようです。

サンジョンノンメギメウンタン(산정논메기매운탕:大邱広域市 達城郡 多斯邑 達句伐大路109ギル 142-13 (釜谷里 308-1))

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235231j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235245j:plain
サンジョンノンメギメウンタンの駐車場。ノンメギメウンタンを作る愛らしいナマズのコックさんの壁画が。だけど湯気の立ちのぼる鍋から飛び上がっているのもまたお仲間のナマズさん。涙なしには見られません……


再び歩いて汶陽駅へ戻り、同じ達城郡内にある次の目的地へ向かうため、駅前からバスに乗車。次の目的地もまた大邱十味の名店であり、私にとっては大邱十味の残る一品を味わうための訪問です。飲食店、それも鍋料理の直後のはしごは過酷なものがありますが、大邱の中心部から達城郡への所要時間を考慮すると、今回ここまで遠征して来た機会を逃すことはできません。

事前に調べた目的地方面行きのバスに乗ったつもりが、実は反対方向行きだったというトラブルに見舞われつつも、どうにか目的地近くの「桐谷初等学校アプ」(アプは「前」の意)バス停に到着。ここは達城郡河浜面(ハビンミョン)といい、汶陽駅から見ると大邱の中心部からさらに遠ざかる方角に位置します。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235311j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235327j:plain

f:id:gashin_shoutan:20171211235423j:plain
そしてやって来たのがこちらのお店「桐谷(トンゴク)ハルメソンカルグクス」。
1950年創業、現在は4代目というこちらのお店の名物「ソングクス」は、名前こそ異なりますが、大邱十味のひとつに数えられる「ヌルングクス」(누른국수)です。

ヌルングクスとは、小麦粉に大豆の粉をわずかに混ぜたククス(麺)と、濃い目に取ったミョルチ(カタクチイワシ)ダシのスープを組み合わせた慶尚道式のカルグクスのことです。その名の由来としては大豆粉により「黄色みを帯びた」(韓国語で「누른」(ヌルン))麺だから、あるいは麺の生地を麺棒で薄く「伸ばした」(こちらも韓国語で「누른」(ヌルン))から、など諸説あるようです。
内陸の盆地に位置する大邱はその暑く湿気の少ない気候が麺の生産における自然乾燥に最適とされ、かつては主要製麺メーカーの工場が多数立地していました。そうした背景もあってか、ここ大邱での小麦粉と麺類の消費量は現在でも全国トップクラスだとのことです。
このようにとりわけ麺類にかけては舌の肥えた大邱の人々が、ランチタイムになると市内からわざわざ数十分かけて食べに行くというこちらお店の名物ソングクスを、どうしても大邱十味の締めくくりとして味わってみたかったのです。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235409j:plain
お店の玄関の手前にある離れの厨房には、お湯が煮立った巨大な釜が。
「ソングクス」(손국수)とは直訳すると「手の麺」の意で、つまり手打ち麺のこと。その名の通り店内で職人が手打ちした麺はこちらの大釜で茹でられ、スープと合わさってテーブルに運ばれます。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235355j:plain
10分ほど待って、やって来たソングクス(ヌルングクス)。たまらず、ずるずる。
ミョルチと刻み海苔の風味が渾然一体となったスープは、日本では口にしたことのない味。麺はコシが強いわけではないですが柔らかすぎでもなく、適度な歯ごたえです。うんまい。
意外なことに、日本のうどんのような熱々ではありません。どうやら茹で上がった後、食べるのに適した温度まで待って出されるようです(とはいえ麺がのびているわけではないのでご安心のほど)。そういえば前回(2016年秋)の大邱訪問の際に食べたチャンチククス(잔치국수:韓国式の温かいそうめん)もややぬるめのスープで驚いたことがあります。汁に入った麺は熱々で食べるのが一般的な日本の感覚だとちょっとびっくりしますが、スープと麺の味をより深く味わうには適した食べ方だといえるでしょう。

 

f:id:gashin_shoutan:20171211235340j:plain
こちらのお店「桐谷ハルメソンカルグクス」の営業時間は午前10時~午後9時、毎月第1日曜日は定休日です。都市鉄道(地下鉄)2号線「汶陽」駅から<성서(城西)2>バスに乗って約14分の「桐谷初等学校アプ」(동곡초등학교앞)バス停にて下車、徒歩約3分(約190m)です。

桐谷ハルメソンカルグクス(동곡할매손칼국수:大邱広域市 達城郡 河浜面 達句伐大路55ギル 97-5 (桐谷里 125-8))

 

こちらのお店のヌルングクスで、ついに大邱十味の全10品目を制覇。ちょっとした達成感の中、食都・大邱の真髄にほんのわずかだけ近づけたような気がしています。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

(c) 2016-2018 ぽこぽこ( @gashin_shoutan )本ブログの無断転載を禁止します。