かつてのTwitterアカウント(削除済み)の別館です。
主に旅での出来事につき、ツイートでは語り切れなかったことを書いたりしたいと思います。

統営の旅[201812_04] - 欲知島(ヨクチド)訪問②猫の島で名物のサバ刺身とサツマイモマッコリを堪能する

前回のエントリーの続きです。

一昨年(2018年) 11~12月の慶尚南道キョンサンナムド)統営(トンヨン)市、欲知島(욕지도:ヨクチド)などを巡る旅の2日目、2018年12月1日(土)です。

 

 

欲知港一帯

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前回エントリーにて紹介した「近代漁村発祥地座富良ゲ」のある自富(チャブ)マウル(マウルは「村、集落」の意)から、欲知港やこの日の宿「ミジンジャン旅館」のある東村(トンチョン)マウルに戻り、今度は山側に向かって歩きます。

 

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到着したのは、慶尚南道記念物第27号に指定されている「統営欲知島貝塚」(통영욕지도패총:トンヨン・ヨクチド・ペチョン)です。
写真の場所を含め欲知島内、および上老大島(サンノテド)に点在する貝塚では、中石器時代から新石器時代にかけての石器など遺物が多数出土したほか、ある貝塚で発見された2体の人骨のうち1体からは長らく潜水活動をしていたことを示す外耳道外骨腫、いわゆるサーファーズイヤーの痕跡が確認されたとのことです(人骨発見地が写真の場所かどうかは不明)
貝塚ということで大量に積まれた貝殻の山を想像していましたが、私が見た限り案内板付近にそうしたものは見当たりませんでした。すでに全量回収されてしまったか、あるいは広範に渡り散らばっているのかもしれません。

 

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貝塚のある一帯の集落は済岩(チェアム)マウルといい、峠の麓にある集落の地名であった済谷(チェゴク)と、裏山の形が座った馬の姿に似ており、しかも頭にあたる部分が岩になっていたことに由来するマルバウ(「馬の岩」の意)という地名を漢字に転じた馬岩(マアム)の頭文字を取った地名だとのことです。

 

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この済岩マウル一帯は、島の名産であり、韓国ではブランド化しているサツマイモ「欲知島コグマ」(コグマは「サツマイモ」の意)の主産地のひとつだそうで、ビニールハウスには「고구마 팝니다(サツマイモ売ります)」の看板が。道沿いには欲知島コグマの案内板もありました。

 

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今回は訪問しませんでしたが、この道の先には、島の最高峰である天王山(천왕산:チョナンサン、392m)の頂上があります。
この天王山、少し前までは天皇山(천황산:チョナンサン)と呼ばれていました。読んで字のごとく日本の天皇に由来するものであり、近年になって本来の天王山の名を取り戻したものです。
前回紹介した自富マウルもそうでしたが、韓国ではこのように地名を通じて日本の植民地支配の爪あとを垣間見ることが多々あります。また欲知島の天王山以外にも、たとえば本年(2020年)に旧名の芍薬島(チャギャクト)から改名された仁川広域市東区(トング)の勿淄島(ムルチド)のように、日帝強占期に付けられた地名が近年になって韓国語固有の名称を取り戻したケースもあります。
地名の収奪ともいうべきこれら日本式地名への変更を含め、日帝強占期に日本人がしてきた支配を考えると当然のことですし、その名前を変えるかどうかは韓国の人が決めるべきことです。日本人の立場でありながらこうした動きを嘆いたり批判したりすることは、植民地主義目線での韓国文化の消費の表われであり、厳に慎むべきことだと私は思います。

 

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東村マウル、昼に私がフェリーから降り立った欲知島フェリー船着場に戻ります。
欲知港に2つあるフェリー船着場のうち東側に位置するこちらの埠頭から発着する、写真の路線バスに乗車するためです。
このバス路線は欲知島の海沿いの道路(欲知一周路)を一周し、およそ50分で東村マウルに戻ってくるもので、観光客が多い時期には運転手さんが観光ガイドをしたり、一部観光スポットでは撮影のため一時停止したりすることもあるそうです(今回は私以外に観光客がいなかったからかガイドなどはありませんでしたが)

 

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16時30分に東側のフェリー船着場を出発し、最初に停まったのは欲知港西側のフェリー船着場そばのバス停。
ここでしはらく停車し、まもなく到着するフェリーの利用客を待ってから出発します。

 

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バスはまず、一部路線の終点でもある冶浦(ヤポ)マウル方面へ向かい、そこから元来た道を引き返し、途中で曲がって島を時計回りに一周する道路に入ります。ここから終点まではずっと左に海を見ることになるため、時計回りの便をご利用の際には左側の席を強くおすすめします。

 

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バスは島の西岸にある、柳洞(ユドン)マウルという集落にさしかかります。
この柳洞マウルの特徴は、海上にたくさんの輪っかのようなものが浮かんでいること。これらは日本でいう網いけす養殖場の施設(網いけす)であり、主に島名産のコドゥンオ(サバ)やチョンゲンイ(アジ)の養殖がなされているそうです。また、最近ではチャムダランオ(クロマグロ)の養殖も始められているとのこと。一般にこうした網いけすは四角形ですが、柳洞マウルのそれは内部で魚が回遊しやすいように円形をしているのが特色です。

 

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こじんまりとした徳洞(トクトン) 海水浴場。コンパクトさがかえってよい雰囲気です。

 

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多島海に沈みゆく夕陽。きれいな夕焼けです。明日も天気になりますように。

 

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東村マウルの少し手前、木果(モックァ)マウルを通過。右端に半分写っているのが木果バス停です。
このあたりまで来ると、海に浮かぶ養殖場は四角形に戻ります。魚種が違うのでしょう。

 

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欲知島一周バス路線図
そして終点の東村マウルの船着場に到着。島一周およそ50分もの旅なのに、料金はたったの1,000ウォン(約100円:2020年12月現在)。ただしT-moneyなどの交通カードは使えません(2018年当時)。途中にあるバス停で乗り降りすることもできますが(料金は均一)、一周バスは一日6便しかなく、時間帯によっては2時間以上も間が空くため要注意です。
前述したように、東村マウルから発着する路線バスは欲知島を一周する6便(時計回りとその逆の便がある)のほか、冶浦マウル止まりのものが5便あり、これらは冶浦マウルから折り返しで東村マウル行きとなり戻って来るもののようです。
写真2枚目は私の訪問(2018年12月)当時、バスのフロントガラスに貼られていた一周バスの東村マウル発時刻表です(1~2便は反時計回り、その他は時計回り)。2020年時点では少し変更となっているようですが、正確な情報は得ることができませんでした。なお、フェリーが遅れた場合にはその到着まで待ったり、反対に早く着いた場合には時刻表よりも早く出発することもあるようですので、注意が必要です。
ちなみに、2019年12月に開業した「統営欲知ソムモノレール」の麓側のりばのそばには「昏谷(혼곡:ホンゴク)」というバス停があるそうですが、欲知港東側のフェリー船着場(大一海運・慶南海運)から徒歩約22分(約1.5km)同西側のフェリー船着場(嶺東海運)から徒歩約17分(約1.1km)で到達できるため、日に6便しかない一周バスを待つよりは歩いて行った方が早そうです。

 

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まだ明るいので、もう少し街歩きをすることにします。
写真は欲知港近くの公園にあった「祝生誕」のイルミネーション。クリスマスはもうすぐです。

 

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同じ公園にあった、2人の漁師の像。

 

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東西にあるフェリー船着場のちょうど中間地点にあたるこの一帯には、飲食店などの商業施設が集中しています。中でも漢陽食堂(ハニャン・シクタン)という中華料理店は、あるタレントさんがお店のチャンポンを紹介したことがきっかけで、離島にもかかわらず週末には行列が形成されるとか。

 

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路地に面する店舗や民家の壁面には、現在の10倍以上もの人口を擁し、前進漁業基地として賑わっていた当時のものとみられる往年の欲知島の写真が飾られていました。

 

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初めて来たのに懐かしい、胸がきゅっとなる街並みを歩きます。

 

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一部には壁画で彩られた建物も。私の大好きな、黄昏どきの壁画マウルの風景です。

 

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ところで、欲知島では実にたくさんの猫さんと遭遇しました。写真だけだとそれほどでもないようですが、すばしっこいから撮れなかっただけで、実際には滞在中10匹くらいは遭遇したでしょうか。過去に訪問してきた韓国の一地域で、これほど多くの猫さんを見たことはありません。これらは1970~80年代にネズミ駆除のため多数導入されたものの子孫で、あまりの数の多さからTV番組でも度々紹介されたことにより、欲知島は「猫の島」としても知られているようです。

 

さて、いよいよ夕闇が迫ってまいりました。お待ちかねの夕食の時間です。
そこでまずは、欲知港から徒歩で約20分ほどの場所にある「欲知島地中海(チジュンヘ)ペンション」へと向かいます。
予約しているわけでもないペンションに一体何の用があるのかといいますと、こちらのペンションのオリジナルであり、欲知島名産のコグマ(サツマイモ)ともち米で仕込んだ「コグマトンドン酒」(고구마동동주:サツマイモの濁酒)を入手するためです。人工甘味料ゼロのほどよい甘み、しかも熟成したものはワインのような風味が楽しめると聞き、どうしても味わってみたくなったという次第です。

 

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暗くなり始めた欲知港一帯を後にして、欲知一周路を徒歩で東方向へ向かいます。

 

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セマウル運動のマークの刻まれたこちらの石碑(これを「マウル標識石」という)には「仏谷(プルゴク)マウル」とあります。かつてある村人が当地にて仏像を発掘したことに由来する地名、プチョコル(「仏様の谷」の意)が漢字に転じたものだそうです。
ちなみに仏谷マウルを過ぎたあたりの海岸沿いには韓国海軍の基地があり、対岸の自富マウルからは停泊中の軍艦もよく見えました。撮影禁止ですので写真はありません。

 

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仏谷マウルの教会、そして先ほど利用した赤い欲知島バスの車庫。

 

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途中の三叉路にあった「海軍アパート」(すごい名前だ)や島内観光スポットなどの案内板。先ほどバスでも通った場所です。ここをまっすぐ進むと、欲知島地中海ペンションや一部路線バスの終点である冶浦マウル方面へ向かい行き止まりとなる道、また右に曲がると観光名所の岩礁「サミョ島」やいくつかの集落を経て島を一周し、再び欲知港へと戻って来る道です。ちなみにこの三叉路、直進・右折・後退(元来た道)のいずれも「欲知一周路」です。

 

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バス通りは海岸方面に大回りしているので、ショートカットのため路地に入ります。私の好きな韓国の離島の裏路地、それも情感漂う夕暮れの姿です。

 

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再びバス通りへ。天然石を用いた写真のマウル標識石には「立石(イプソク)マウル」とあります。北東側に大きな岩が立っていたこと由来する地名、ソンドルベギ(「立った石のあるところ」の意)が漢字に転じたものだそうです。

 

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立石マウル、漁船の停泊する海岸べりの道路(欲知一周路)を進みます。左上の山の斜面で光を放っている建物が欲知島地中海ペンションです。

 

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欲知一周路から分かれてペンションへ向かう坂道。この坂がとんでもない急斜面で、息を切らしてひーひー言いながら登るしかありませんでした。

 

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そうしてやっと到着した欲知島地中海ペンション。立派な建物です。敷地内にはプールまで(冬なので空でしたが)
しかし従業員の方に聞いたところ、なんと今年の分のコグマトンドン酒は終わってしまったとのこと。
なんでもコグマトンドン酒のシーズンは毎年4月からだそうで、例年10月頃までには完売してしまうそうです。ショック。甘かったのはコグマトンドン酒ではなく私の下調べでした……

 

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トンドン酒は空振りでしたが、せっかくがんばって登ってきたので、記念にペンションの庭から欲知港や欲知一周路の夜景を撮影。すばらしい眺望です。
欲知島地中海ペンションは安い部屋でも1万円以上するようですが、この景色が堪能できてしかもシーズンにはコグマトンドン酒が味わえるのであれば、利用してみたいとも思います。なおコグマトンドン酒は1本1万ウォン(約1,000円:2020年12月現在)。宿泊客でなくともカフェで味わったり持ち帰ったりすることもできます。このほか、やはりオリジナルだというコグマアイスクリームも気になるところです。

欲知島地中海ペンション(욕지도 지중해펜션:慶尚南道 統営市 欲知面 官庁キル63 (東港里 259-1)) [HP]

 

目当てのコグマトンドン酒をゲットできず、これからまた手ぶらで20分あまり歩いて欲知港へ戻らなければなりません。
しかし、私はあまり気落ちしてはいませんでした。なぜならば、オリジナルのコグママッコリを扱う店がまだ他にもあるとの情報をつかんでいたからです。この日の夕食の場と目していたそのお店に向かうため、再び欲知港方面へと歩いてゆきます。
今度は欲知港を通過し、所要時間30分ほどで日中にも訪れた「近代漁村発祥地座富浪ゲ」のある自富マウルに到着。

 

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前回エントリーでも紹介した「欲知島ハルメバリスタ」のすぐそばに、目当てのお店「ポンイ布張馬車(ポジャンマチャ)」があります。布張馬車、あるいは略語の布車(ポチャ)とは日本でいう「屋台」のことですが、屋台でなくとも飲食店の屋号に用いているケースが多々あります。
期待に胸を膨らませつつご主人に話を聞いたところ、現在はコグママッコリを来客には出していないとのこと。造ってこそいるようですが、どうやら自家用としてのみ消費しているのでしょう。そうした状況で無理にお願いすることはできません。今回も空振りに終わってしまうのでしょうか。
意気消沈していた私の表情を察したのか、続けてご主人が言うには欲知港近くに別のコグママッコリの醸造所があり、そこで買ったものを店に持ち込んでもよいとのこと。
今度は確実性の高い情報です。ご主人に感謝しつつ、再訪することを告げいったんお店を後にします。

 

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そして三たび訪れた欲知港。写真のお店が醸造所だという「ホスアビ」(「かかし」の意)です。
実はこちらのお店でもコグママッコリを造っていることはチェック済みであり、コグママッコリの壁画のあるお店の写真は夕方の街歩きの際に撮っておいたものです。ただ料理が欲知島特産というわけではなかったので、島特産の海産物を扱うポンイ布張馬車よりは優先度を下げていたところです。
ご主人に話を聞くと、コグママッコリは販売中とのこと。自分へのお土産用を含め、1リットルのボトル3本を購入することに。3軒目にしてやっと巡り合うことができました。

 

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ご主人により冷蔵タンクから直接汲み取られるコグママッコリ。前々回のエントリーにて紹介した蓮花島(ヨナド)の「チャンモニム酒幕(ジュマク)」もそうでしたが、この光景がまた好きなのです。

こちらのお店「ホスアビ」はその後、同じ路地の港寄りに移転し、「ホスアビ食堂」および「欲知島醸造場」の看板を掲げて2020年現在も営業中のようです。営業時間は不明ですが、私が訪問した当時は土曜日の午後7時台も営業していました。現在地は欲知港東側のフェリー船着場(大一海運・慶南海運)から徒歩約5分(約310m)同西側のフェリー船着場(嶺東海運)から徒歩約2分(約160m)で到達できます。
コグママッコリはテイクアウトでき、ペットボトル1本5,000ウォン(写真の2018年当時も同価格でしたが2020年現在ではボトルの形状が大きく異なっており、容量は当時の1リットルから減ったかもしれません)。要冷蔵ですが後述するようにおいしかったので、保冷剤を添えてでもぜひお持ち帰りいただきたい味です。

ホスアビ食堂(欲知島醸造場)(허수아비식당(욕지도양조장)):慶尚南道 統営市 欲知面 西村アレッキル 110-5  (東港里 824-21))

 

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道すがらにある宿の冷蔵庫にコグママッコリ2本を置き、残る1本を携えて再びポンイ布張馬車へ。そういえばこの日から12月。すでに日のとっぷり暮れた外は寒さを増しつつあります。同店には締め切られた屋内の席(写真左側)もありますが、それでもあえて情感漂う屋外テーブル(屋根付き。写真奥側)に席を取ります。
ポンイ布張馬車のメイン食材は欲知島名産の養殖コドゥンオ(サバ)をはじめとする海産物の数々。もちろん、名物のコドゥンオフェ(サバ刺し)を注文します。
回遊魚であるサバ専用の円筒形の水槽から取り出した2尾のサバは、傷まないよう直ちに血抜きをします。さすが手際がよいです。

 

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その間、まずはコグママッコリの味見から。ビールコップしかなかったのが唯一惜しいですが、マッコリの味には関係ありません。
少しクセのある匂いはあるものの、しっかり付いたサツマイモの甘みと香り。うんまい。買って正解でした。

 

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そしてやって来た2尾分のコドゥンオフェ。皮の青みがかった銀色が、血合いの赤褐色や身の薄ピンク色とのコントラストとあいまって、あまりにも美しい。見とれてしまいます。焼き、あるいは煮物のサバはこれまで数えきれないほど口にしてきましたが、思えばサバを生で食べるのは初めて。
ぱくり。脂が乗ってめちゃくちゃうんまいです。煮物でさえその脂の風味が強烈なサバ、刺身で食べたらどれほどだろうと想像していましたが、その想像をはるかに超えるおいしさです。

 

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みなさまもご承知のように、サバは数ある寄生虫の中でも人体に及ぼす害が大きいアニサキスがその身に取り付いているケースが多いため、日本ではほとんどの地域で生食は禁忌とされています。ではどうして欲知島のサバは生食できるのかというと、豊後水道など九州産のサバと同様、寄生するアニサキスの種が異なるため人体に害が及びにくいことが理由のようです。
同じく欲知島名産のサツマイモで造ったコグママッコリとともに味わうコドゥンオフェ。幸せな欲知島の夜が流れます。ちょっと無理してでも一泊に変更して、本当によかった。

 

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2尾だけでは物足りず、コドゥンオフェをもう1尾分と、さらにモンゲフェ(マボヤ刺し)を追加。
モンゲフェは前夜に統営市内のタチで初めて食べてから、そのうまさにすっかりハマってしまいました。

 

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気が付くと、私の座っていた椅子の後ろにまた猫さんが。欲知島に入ってから何匹目でしょうか。私のコドゥンオフェを虎視眈々と狙っています。

 

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こちらのお店「ポンイ布張馬車」の営業時間は確認しませんでしたが(すみません)、私が訪問した午後8時時点では営業していました。欲知港東側のフェリー船着場(大一海運・慶南海運)から徒歩約6分(約430m)同西側のフェリー船着場(嶺東海運)から徒歩約12分(約860m)で到達できます。写真は日中に撮ったお店の全景です。

ポンイ布張馬車(봉이포장마차:慶尚南道 統営市欲知面 自富浦キル38-16 (東港里 574-34))

 

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夜の欲知島ハルメバリスタ

 

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ポンイ布張馬車を出て、旅館のある東村マウルへ戻ります。
この自富マウルと東村マウルの間の欲知一周路を歩くのは今日で6回目(3往復)です。

 

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夜の欲知港。
撮影した9時過ぎの時点ではすでに閉店していましたが、欲知港一帯には刺身などの海産物を出してくれる屋台がいくつか点在しています。

 

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前回のエントリーでも書いたように、この日の欲知島訪問は当初計画だと日帰りだったものを、港の様子を見て衝動的に一泊に変更したものです。そのため下着などは一切持ってきていませんでした。
そんな問題を解決してくれたのが、旅館の近くにある写真のスーパー「トップマート」。大手コンビニのないこの島で、お酒を含む食品はもちろん下着などの衣料や日用雑貨の扱いがあるうえ営業時間は午後10時まで。おかげでたいへん重宝しました。

 

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この日の宿、ミジンジャン旅館の部屋の窓から眺めた深夜の欲知港。この眺めだけでも、こちらの旅館を選んでよかったと思います。

 

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そして夜が明けた旅の3日目、2018年12月2日(日)の朝。
この日は午前中から統営市の原都心(ウォンドシム。旧来の市街地)を街歩きをし、午後には別の目的地へと向かうため、朝一番の船で欲知島を発つ計画です。

 

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早朝の欲知港。すでにフェリーがその口を開けています。
後述するように、欲知島からは前日に私が蓮花島へ行く際に乗船した統営港旅客船ターミナルへ行くフェリー(大一海運)のほか、同市の弥勒島(ミルクト)の西岸にある三徳(サムドク)港へ行くフェリー(慶南海運、嶺東海運)が発着しています。三徳港は統営の原都心から少し離れているのですが、朝一番の三徳港行きに乗ればバスの時間を考慮しても統営港行きの初便より早く原都心に到達できるため、こちらを利用します。
加えて冬の海は荒れやすく、黒山島(フクサンド)のような外海ほどではないとはいえ、欲知島のような沿岸航路であっても休航となるリスクが高まります。なので、船には乗れるときに乗っておかなければなりません。

 

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そして午前7時30分、三徳港行きの慶南海運フェリー「統営ヌリ」号は欲知港を出航します。
さらば欲知島。再訪を誓いつつ島を後にするのでした。

それでは、次回のエントリーへ続きます。

 

                                      

【付記】欲知島へのアクセスについて

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今回と前回のエントリーで紹介した慶尚南道キョンサンナムド)統営(トンヨン)市の欲知島(ヨクチド)、および前々回のエントリーで紹介した同市の蓮花島(ヨナド)は本土から遠く離れた離島であり、フェリーでしか渡ることができません。
欲知島へ行くフェリーは4つの会社が運営しており、統営市内の3つの港(統営港・三徳 (サムドク))港・中和 (チュンファ)港)から発着しています。
うち弥勒島(ミルクト)西岸にある三徳港へは、統営港旅客船ターミナルの最寄りである「西湖市場(서호시장)」バス停から市内バスに乗って最短約27分(約7.1km)で到達できます。

 

大一海運時刻表
●統営港旅客船ターミナル⇔蓮花島⇔欲知島(大一海運(テイル・ヘウン)

・中心部(原都心)の統営港から発着する唯一の路線
・すべての便が蓮花島に寄港する
・4路線で唯一、一部の便が牛島(ウド)にも寄港する
・欲知港は東側の船着場から発着

嶺東海運時刻表
●三徳港旅客船ターミナル⇔欲知島(嶺東海運(ヨンドン・ヘウン)

・最も便数が多い(一日7便)
・全便が直行便なので最も所要時間が短い(約50分)
・欲知港は西側の船着場から発着

慶南海運時刻表

●三徳港旅客船ターミナル⇔蓮花島⇔欲知島(慶南海運(キョンナム・ヘウン)

・一部の便を除き蓮花島に寄港する
・欲知港は東側の船着場から発着

欲知海運時刻表

●中和港旅客船ターミナル→蓮花島⇔欲知島(欲知海運(ヨクチ・ヘウン)

・2019年夏に就航した新路線
・1往復のみ蓮花島に寄港する
・欲知港は西側の船着場から発着

 

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なお、欲知港に東西2つあるフェリー船着場については便宜的に「東」「西」と表記しているものであり、そうした正式名称はないようですのでご注意願います(たぶん地元の方や運航会社にそう言っても伝わらない)。また、西側の欲知海運のターミナル(チケット売り場)は嶺東海運のもの(写真1枚目)と別の建物の可能性があります(船着場は少し離れているようです)。東側の大一海運と慶南海運のターミナル(写真2枚目)および船着場(写真3枚目)は共通です。

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